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131 ヒシガツマ防衛戦〜帰還

ヒシガツマ村の前には相変わらず村人たちと狩人たちが獣に備えていた。

しかし数は昼間よりも少ないし、昼間にいた船員かつ坑夫の男もいない。

先遣隊からの情報で、襲撃が落ち着いてきていることが分かり、少し警戒レベルを下げたのだろう。


「疲れたな…早く休みたい」


へとへとのコウチの背中がカーリに叩かれる。


「シャキッとしなさいな。疲れているのはあなただけではありませんのよ。狩人のわたくしたちの情けない姿は、村人を不安にすると理解しなさい」

「そだな…っし、あと少し頑張るか!」


最も理想的な狩人になるのはカーリかな。高貴な思想が専属狩人にピッタリだ。惜しむらくは、恐らくいつかは家に戻されることだな。


「ただいまー!ただいまー!」


知らない人に対して、元気に挨拶しながら村に入っていくエフテルもすごい。まるで自分の村かのような我が物顔だが、愛嬌があるので受け入れられやすいんだろうな。

見張りの村人が開けてくれた門から、村に入る。

一旦シタコ村長に報告かな…と考えていた俺の思考は、横から突っ込んできたものの衝撃により吹き飛んだ。


「なんだ!?」


咄嗟に受け身を取り、顔を上げると、そこには色々な意味で酷い顔のロンタウがいた。


「師匠がロンタウ姐さんの胸に吹き飛ばされた!」


コウチの実況により、何が起こったかを理解することができた。


「指導役…もうそろそろ夜が明けるか?」

「お、おう。そうだな」

「お前ら、夜には帰ってくるって言ったよな…?」

「言ったが、状況が変わってな。先遣隊の人たちから聞かなかったか?」


俺がそう言った瞬間、再び正面から強い衝撃が襲ってくる。柔らかく、大きいモノがドムっと俺に衝突した。


「理解はしている。しかし、心配もした」


ロンタウの顔がさらに険しくなっていく。

そこで、ハルゥの言っていたことを思い出した。


「…もしかして、怒ってるのか?」

「もしかしなくても怒ってるんだよ!」


ええー…。

一体俺達が何をしたというのだ。合理的な行動しかとっていないはずだ。

そうか、ロンタウは不眠不休で村を守っていたんだ。きっと疲れてるんだ。それでイライラしているんだな。


「よしよし、ロンタウ、ひどい顔だぞ、少し休んだ方がいい」

「誰のせいで休めなかったと思ってるんだ!酷い顔?だから見せたくなかったというのに、お前はー!」

「待て、武器に手をかけるな!人に狩猟武器を向けるのは犯罪だ!」

「ま、殺されても仕方ないね」


そんなエフテルの気楽な声が聞こえた。


「仕方がなかったことだとはいえ、ものにはもっと言いようというものがありますわよね」


やれやれというようなカーリ。


「師匠を殺す…?」


こちらも応戦すると言わんばかりに細剣に手をかけるアルカ。


「誰かー!助けてくれー!シタコ村長ー!死人が出ます!誰かー!」


コウチが必死に助けを求める声が明け方の村中に響いた。

女性狩人の考えていることはいまいちわからない。俺は騒ぎから意識を逃がし、これ以上面倒くさくなるのも嫌なので、黙って目を閉じた…。

その後、騒ぎを聞きつけた(というかコウチが助けを呼んだ)先遣隊にいた串焼き屋の狩人が仲裁に入り、ひとまず休息を取ることになった。

前の祭りのときにも使われた中央広場には臨時の休憩所などが設置されており、俺達もそこで休むこととなった。


「なんか、嫌な感じだね」


エフテルが言う。


「まあ、良くはないわな」


俺達はこの中央広場には楽しい思い出しかない。様々な出店が出ていたり、村人から感謝の気持ちを渡されたり、あとはアルカと指輪を買ったり。

それが今は所狭しとテントが並び、見る影もない。


「あー、疲れた!もう休んでいいんだよな!?」


あてがわれたテントに入って、すぐにコウチは重い防具を脱ぎ、横になった。


「ふぅ…いつもとは違った疲労感はありますわね」


カーリもガチャガチャと思い防具を脱ぎ、丁寧に並べて、行儀よく座る。


「よし、寝よう!」


エフテルがアルカと自分の分の寝床を壁際に寄せて、宣言する。

結局同じテントで休めるくらいには仲間のこと信頼できたのだろう。トラウマを克服しつつあるようだ。


「皆は休んでてくれ。俺はちょっと、アルカの細剣を修理に出すのと、ロンタウと話をしてくる」

「私も行く」


俺が立ち上がると俺に追随するようにアルカも立ち上がるが、手で制す。


「あー、いや今回は俺一人で行くよ。もしお願いできるなら、細剣の修理に行けるか?」


流石に俺でも分かる。

ここでアルカを連れて行ったら火に油だ。


「んじゃお姉ちゃんと鍛冶屋にいこっか!」


エフテルが飛び起き、アルカの腕を引く。アルカは抵抗していたが、エフテルに何か囁かれ、大人しく細剣を持ってテントから出ていった。


「お師匠様もやっと乙女心が分かるようになりましたのね」

「って、散々お前らが言うから少し意識してみただけだよ。別にロンタウとはそんな関係ではないというのに」


ひそひそとカーリとコウチがこちらを見ながらあからさまに話し始める。


「告白までされたのに眼中にないと…筋金入りですわね…」

「恋人は仕事ってわけだな。我が師ながら、寂しい男だ…」

「ロンタウさんだけでなく、色んな女性が泣きますわね」

「罪な男…」

「全部聞こえてるんだよ!というか聞かせてるだろ!」


キャーとあからさまな悲鳴を上げてカーリとコウチもテントから逃げていった。

疲れたとか言ってたわりにまだまだ元気じゃないか。

結局俺以外誰もいなくなったテントから、俺も外に出る。

もう外は明るい。

ここからでも見えるロンタウの家を眺めると、朝日が目に痛かった。


「…行くか」


やや気が重いが、報告は必要だろう。ロンタウはこのヒシガツマ村の専属狩人なのだから。

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