130 ヒシガツマ防衛戦〜不安
「襲撃、これで終わりかなあ?」
コウチが呟く。
「今のところは落ち着いているようですが、終息したかどうかは分かりませんわね。そもそも原因も分かりませんし…」
カーリは考えている。
「こういう、村が獣に狙われることってあんまないの?」
実は都会生まれ都会育ちのエフテルが俺の背中から訊ねる。つか喋れるなら歩けないか?別に足は何もなってないよな?
「稀に偶然起こることはありますけど、それだって精々10匹が集まるかどうかというところでしょうね」
そもそも種族が違う獣たちが群れになることは共生関係でもない限りありえない。
魔物に関してはコマンダーやレイダーのような魔物の指揮官的存在がいるので一概には言えないが、獣に限れば、やはりありえない。
それこそカーリが言うように、偶然襲撃が重なって、ということはあるが、こんなに大規模な襲撃はほぼない。
「あとあれか、水源を村にしたとかそういうのあるよな」
「すごく抽象的で伝わりにくいですけども、そういう理由であれば、あり得ますわね」
俺は頷く。
コウチが言いたい話として極端な例を出すと、この砂漠で唯一の湖があるところに村を作れば、今までそこに水を飲みに来ていた獣が村にやってくるという話だ。
「だがまあ、ヒシガツマ村ができてからそんなに日が浅いわけでもないしな」
アオマキ村より先に出来上がったみたいな話を始めてシタコ村長に会ったときにしていたような。
もしそういう資源的な理由であれば、今更急に、何故?ということになる。
「結局原因は分からないね」
アルカが話を締める。
結局結論はでない。
「師匠の…あ、いや、なんでもない」
背中のエフテルが何かを言いかけて、慌てて取り消す。
何を言いたいのか分かったので、気にしなくても良いという意味も込め、少し笑いながら返事をする。
「俺の村のときは、そうだなあ。危険度6が複数迫るっていうそれこそありえない状況だったよな」
危険度6なんてそうそうお目にかかれるものではないし、もし1匹でもやってくれば村は滅びる。
そのあとのことが衝撃的過ぎて、理由なんて当時も今も考えたことはなかった。
「例えば、例の獣から逃げてきた、とか」
カーリが少し言葉を選びながら言う。
例の獣とは、無論、俺の腕を奪った危険度7に指定された新種の獣のこと。
「なるほど、危険度6を複数体相手取れるような師匠たちがやられる相手なら、当然逃げるよな」
「逃げていた、か…」
実際、4匹の危険度6の獣のうち、最終的に村まで到達できたのは1匹のみ。例の獣に他の3匹は狩られてしまったのかもしれない。
「まあ、今回は違うだろ。もし同じだとしたらどんな強敵が待ち構えているんだ」
今回観測されている獣で最も危険度が高いのは危険度5の獣たち。
単純に考えれば、危険度6の獣がこのヒシガツマ村に迫っている、という仮説になるが、
「そもそも危険度6の獣が来たとて、危険度5以下の獣たちが一斉に逃げていくこともない」
危険度6の獣は自然界においては最早災害なのだ。通り過ぎるのをジッと息をひそめて待つしかない。手を出さなければ、必要以上の被害は出ない。
自分の住処を守るために立ち向かうのは人間くらいだ。
「じゃあ、その例の獣が来ているとか?」
「エフテル」
「いてっ!なんで急に落とすのさ!」
「縁起でもないことを言うな」
砂の上に落とされたエフテルは尻を擦りながら立ち上がり、歩き始める。
なんだ、やっぱり歩けるんじゃないか。
全く、縁起でもない、不謹慎だ。
そう思った。しかし、どうだろう。
魔物が急にいなくなったヒシガツマ村。同じく魔物がいなくなったアオマキ村の森には奴と同種の透明な竜がいた。
じゃあ、やっぱりこのヒシガツマ村にも?
「まさか」
俺はアルカの頭をやや乱暴に撫で、話を終わらせる。
ヒシガツマ村の防壁が見えてきている。
無事に戻れてよかったという安堵の心と、ヒシガツマ村に向かうときに感じた嫌な予感が少しだけ、顔を覗かせていた。
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