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128 ヒシガツマ防衛戦〜尾塊狼②

「うぅ…死ぬ…」


エフテルは腹を抑えながら、アルカの下敷きになっている。

アルカは意識を失っているようだ。


「すまん」


俺は片腕をエフテルとアルカの間に滑り込ませ、アルカをエフテルの上から動かす。


「師匠…苦しいよ…」

「エフテル、ちょっと待てるな?まずアルカの状況を確かめる」

「アルカ…!?」

「無理して動こうとするな、今から診る!」


起き上がろうとするエフテルを制しつつ、アルカの呼吸を確認する。急に起き上がっても良いように、額を押さえつつ、口元に耳を寄せる。

息は…してる。

地面がやわらかいので、頭を強く打ったりしていることもないだろう。


「アルカは大丈夫だ。問題はお前だ」


意識のないアルカを念のため揺らさないように岩陰に引きずり込み、次にエフテルも運び込む。


「苦しいか?」

「うん…ちょっと落ち着いてきたけど…」

「息は普通にできる?」

「それも大丈夫…」

「ちょっと触るぞ」


防具の留め金を外し、インナーの上に手を滑らせる。


「変態」

「余裕だなおい」


押してみて、激痛もないとなれば、骨は無事だろう。

少し休めば、戦線復帰できる。


「少し休めば2人ともすぐに動けるようになるから、ちょっと休んでな」

「うん…」


問題は、その少しの時間をあの2人で稼げるかどうかだ。

2人に砂潜みが寄ってこないよう、岩の上に2人を寝かせ、目の届く位置にしつつ、現在の戦況を見守る。


「はええ…」

「間抜けな声を上げている暇はありませんわよ。油断したら連れていかれますわ」


コウチとカーリは背中合わせで固まっている。

先ほどのような空振りは相手の攻撃機会となるので、コウチは槌をやや上段に構えて、集中している。

カーリは相変わらず回転刃を縦に構え、接近を拒んでいた。

膠着状態だ。

コウチとカーリでは尾塊狼に追いすがることはできないし、尾塊狼側も、逆に硬い防具と回転刃に守られた2人を襲うこともできずにいる。

しかしこの膠着状態は長くは続かない。

最初はぐるぐると2人の周りを回っていた尾塊狼だったが、


「ziaou!」


とひと鳴きする。

すると、砂潜み達が集まってきた。


「カーリ、コウチ、砂潜みにも注意しろ!」

「マジかよ!」


俺の呼びかけで周囲に目をやったコウチが悲鳴を上げた。

少しずつ砂潜みが2人を中心に輪を狭めてきている。

砂潜みに対処しようとすれば、その隙は尾塊狼からは見逃せないチャンスとなる。

また、砂潜みの空気砲により、カーリとコウチの背中合わせの状態が解除されてしまうのも各個撃破されてしまう危険がある。


「どうする、お嬢…」

「今考えていますわ。もう少し睨みを利かせて時間を稼いでください」

「んな無茶な…」


と、言いつつも牙を剥いて砂潜みたちを威嚇するコウチ。少しだけ輪が狭まる速度が落ちた気がする。

だが、1匹の砂潜みが2人の武器の射程距離外から空気砲を放った。


「うおッ…!」


受けたのはコウチ。やや後ずさり、カーリの背中にぶつかって、防具同士がぶつかる金属音が響いた。


「コウチ今、耐えましたの!?」

「お、おお。気合でなんとか」

「気合でなんとかなるものではありませんけど、流石コウチ。使えますわね!」


小柄とはいえ、防具を着た人間を軽々と吹き飛ばす空気砲を受けて、やや後ずさるのみで済んだコウチ。武器も防具も重いとはいえ、踏ん張ることができたのは本人の筋力によるものだ。

なんと、俺が思ったよりコウチのウエカ村長化は進んでいたというのか。


「コウチ、わたくしとピッタリ背中を合わせなさい。あなたを支えにすれば砂潜みの空気砲は怖くありませんわ」

「おお!」


ガチン!と防具同士がぶつかる音がしたのと、砂潜みたちが本格的に空気砲を撃ち始めたのはほぼ同時だった。


「うおおおおおおおお!!!!」


コウチは槌の柄を砂漠に突き刺し、中腰になって空気砲を耐え続ける。カーリに当たった空気砲によりカーリが吹き飛んでも、コウチに当たって態勢を崩さずに済む。


「おお、すごいぞコウチ!」

「うおおおおおおおお!!」


じっくりとチャンスを伺う尾塊狼に対し、自らの武器である空気砲に耐え続けるコウチに砂潜みたちが怯み始める。


「コウチくん、ナイス」


砂潜みの1匹が針に貫かれ絶命した。

その後、的確な針の雨が砂潜みたちに降り注ぎ、カーリとコウチを包囲していたほとんどの砂潜みたちが息絶える。


「エフテルさん!」

「エフテル!」


コウチとカーリが歓喜の声を上げる。

もちろん針を放ったのはエフテルだ。

カシュっという音を響かせ、己の左腕に装着されている射出機にカートリッジを装填する。


「お返ししてやる!」


尾塊狼に向けて狙いを定めようとした瞬間、尾塊狼は足元の砂を巻き上げ、姿をくらます。


「あーもう無理!限界!」


目標を見失ったエフテルは自分を抱くようにしながら、地面に倒れ込んだ。


「まだ痛むか?」

「痛くないと思ったけど、針投げまくったらまた痛くなった!」

「そうか、お疲れ様」


俺が優しく声をかけると、エフテルは親指を立ててから蹲った。よっぽど痛いらしい。

だが、無理してまで砂潜みを倒した功績は大きい。


「ziaou!ziaou!」


尾塊狼は必死に応援を呼ぶが、もう来ない。

砂潜みも尾塊狼と同様に狡猾な狩りをする賢い獣だ。逆に言えば、みすみす殺されるような命令には従わないだけの知能がある。


「ziaaaaaaaaa!」


膠着状態に焦れていた尾塊狼の我慢も限界のようだ。

カーリに向かって飛び掛かる。


「あら、良いのですか?」


カーリは嗜虐的な笑みを浮かべ、待ってましたと言わんばかりに回転刃を突き出した。

噛みつこうとした眼前に突き出された刃物。

ただの刃物であれば、少し顔を逸らせば回避可能。

しかしカーリの武器は回転刃。触れただけで切り刻む近代の武器だ。


「ziaa、aaaaaa!!」


尾塊狼の頬を掠めた刃は、彼の予想を裏切り顔の側面を大きく傷つけた。飛び掛かったはずが、空中で態勢を崩し、カーリとコウチを飛び越えた先で転倒する。


「コウチ!」

「任せろ!」


コウチは素早くカートリッジを装填、倒れ込んだ尾塊狼に向かって必殺の一撃を降り下ろす。


「がッ」


勝負の幕切れが訪れるその直前、コウチの体は横っ飛びに吹き飛んだ。


「砂潜みッ!?」


コウチに空気砲を浴びせた砂潜みは、満足したようにひと鳴きして、砂漠の闇に消えていった。

無論、その隙に尾塊狼は立ち上がる。


「zia…!」


咄嗟に構えるカーリと、すぐさま起き上がるコウチ。

尾塊狼は、2人を一瞥し、走り出す。

その方向には誰もいない。つまりは逃走だ。


「逃がさない、逃がすわけがない!」


その行動にいち早く反応したのは、エフテルの隣で意識を失っていたはずのアルカだった。

ドンッという炸裂音とともに加速したアルカは、一気にに尾塊狼の目の前に躍り出る。


「アルカさん!」

「ジアジアうるさいから起きちゃった」

「ziaaaaaaa!」


しかし尾塊狼は既に戦意喪失している。

狡猾で素早いこの獣は、己の肉体の弱さを知っている。だからこそ、顔に傷をつけられた恐怖が忘れられない。

すぐに反転して、走り出す。


「お姉ちゃんを傷つけるのもダメだし、そっちに行くのもダメ。絶対狩るよ、カリシィルお嬢様」


カーリに視線を送ったアルカは全力で走り、尾塊狼に追いすがる。人間の速度で獣の速度に肉薄できるだけですごいのだが、やはり徐々に距離は引き離されていく。

そこで響く炸裂音と、宙を舞うアルカ。

一気に尾塊狼を追い抜き、すぐさま引き返すように逃げる尾塊狼を追いかける。

尾塊狼も加速に空気砲を使い、アルカも炸裂機構で追いかける。最早戦場は砂煙でまともに見えない。


「なるほど、そういう…」


カーリが目を輝かせて、俺を見た。


「お師匠様、騒慌玉をお願い致します!」

「おお?おお!」


理解した。

アルカが狙ってこの状況を引き起こしたのかはわからない。

だが、カーリに声をかけたのは、彼女ならばなんらかの策を講じると思ったからだ。


「しかし、見えん…!」


俺はポーチから騒慌玉を取り出して、狙いを定めるが、尾塊狼とアルカは高速移動をしており、砂煙も夜闇も相まって、なかなかに難しい。


「わたくしのお師匠様ならやれますわ!」


カーリの声援を聞き流しつつ、集中する。

最初にカーリとエフテルに渡したカートリッジは10個ずつ。アルカがエフテルのポーチから抜いたとしても、最大で10回しか炸裂機構による加速は使えない。既に爆音は6回以上聞こえている。


「次だ、次の瞬間に…」


アルカが次の炸裂機構を使った瞬間、その瞬間だけは一瞬煙が晴れるはず。


「あたしが投げたかった…」


未だに隣で蹲るエフテルに苦笑しつつ、耳を澄ませる。

…ドンっ。


「今だ!」


一瞬見えた尾塊狼の姿と向きから走る方向予測、紐を回転させながら騒慌玉を投げつける!

うまく引っかかってくれたかはわからない。

だが、騒慌虫の甲高い鳴き声は、砂煙の中を移動しているように聞こえた。


「ここからはわたくしの出番ですわ!」


カーリの回転刃もうねりをあげる。


「俺は離脱…」


けほけほと咳き込みながら、コウチは俺の隣にやってきた。


「お嬢たちが何をしようとしてるのか、お師匠さんは分かるのか?」

「ああ、なんとなく」


ドンッという音が連続で響く。

アルカが炸裂機構を連続で使ったのだ。

そして、土煙の中から、血飛沫が舞うのが見えた。


「ziaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」


聞き覚えのある、回転刃が獣の骨肉を削るあの音が聞こえる。

やがて土煙が晴れると、そこには前足が欠落し、そのままわき腹に深々と回転刃が突き刺さった尾塊狼と、またしても返り血で真っ赤になったカーリ、そして不満そうな顔で細剣の炸裂機構作動レバーをカチカチと引いているアルカが現れた。


「うおおおおお!お嬢最強だぜ!!」


コウチがポーチから布を取り出し、カーリに駆け寄る。

カーリは回転刃の稼働を止め、一息ついてから既に事切れた尾塊狼から刃を抜いた。

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ぜひよろしくお願いします!

あと、評価じゃなくて感想でも喜びまくります!


あと、日常パートもっと多めにしてほしいとか、そういう意見もいただけたら嬉しいです。あとは大物狩りばっかじゃなくてたまには採取にも行けとか…

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