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123 ヒシガツマ防衛戦〜老兵

砂漠を移動し始めて1時間程度。

途中何匹か獣を見たが、危険度3や4だったので、見つからないように駆け抜けた。

悪いがコウチたちに任せることになる。

大変な役割を押し付けたと内心申し訳なく思いつつも、スピード重視で走り続ける。

そんなとき、ドシンという重い音が響き、岩のような巨体が崩れ落ちるのが遠目に見えた。


「うわ、なにあれ!」


エフテルが指差し、叫ぶ。


「砂岩門、大型の獣だな。体は大きく攻撃力も高いが、鈍重で、割と砕けやすい。危険度は4だ」

「倒れたってことは、あそこで誰かが戦ってるんだ」


アルカがそう言って、スピードを一段階上げた。

今までは急ぎつつも体力を温存する走りだったが、今度は全速力だ。


「ま、待ってー!」


エフテルと俺も続く。

やがて見えたのは、倒れた砂岩門と、その上で休む数人の狩人だった。

全員疲労困憊、といった様子だが、こちらに気が付くと表情を明るくして、アルカを見た。


「お?2年前の専属狩人決定戦のときの…なんつったかな…」

「アルカです」

「おおそうだった。アオマキ村の狩人だよな」


アルカに名乗られ、納得したように手を打ったのは、狩人としてはかなり高齢の男だった。いや、その男だけでなく、皆、40歳くらいは過ぎているように見える。


「俺は覚えてるぜ。店にも来てくれたしな」


最初に反応した男に寄りかかるように前に出てきたのは見覚えのある男。


「む、串焼き屋の人…」

「ははは、嬢ちゃんも覚えててくれたか!」


流石食べ物のことになるとアルカは記憶力が良い。

無論俺も覚えている。この人は、2年前の祭りのときに自分で狩った獣の肉を売っていた男だ。

この人がいるということは、先遣隊とはこのメンバーなんだろう。それぞれの武具や防具は年季の入ったもので、今では改良され、あまり見ないタイプの加工がされていたりする。

一線を退き、ロンタウに専属狩人を譲った狩人たちだ。


「アオマキ村から、救援に来ました。“四極”です。ロンタウとはすでに話をしましたが、先遣隊というのは貴方達ですよね」


念のため確認する。


「おお、そうだ。まだ戦える奴らを集めて先に出てたのは俺らよ」


答えてくれたのは、最初にアルカに反応した大剣使いの男だ。


「村の状況は見てきました。だいぶこちらに負担がかかっているように見えますが、状況は?」


村まで押し寄せる獣があれだけの数で済んでいるのは間違いなくこの人たちの功績だろう。

しかし、ロンタウが3日間ロクに休めていないのであれば、この人たちも同様の負担がかかっているだろう。


「はは、状況って言われてもなあ…。まあ、手あたり次第に狩れる獲物は狩ってる。ほどほどヤバいやつもいたが、基本は危険度4だ。俺ら年寄りでもまあやれてる。衰えたが、まだまだひよっこには負けねえって感じだな」


ニヤリと挑発的な笑みを浮かべる男だが、顔色は悪い。


「オジサンたち、休めてる?」


エフテルが訊ねると、


「100時間くらい休まず戦えらあ!」


と前時代的な返事が後ろの銃使いの男から上がった。


「実際どうなんです?」


俺は苦笑している串焼き屋のオヤジに話を聞く。


「ま、正直疲れた。初めのころは、ホントに連戦連戦で、休む暇もなかった。でもまあ、今は割と落ち着いてる。もしかしたら襲撃も落ち着いてきたのかもしんねえな。結局、危険度5以上も最初の数匹と、こっちまで出てきてからは3匹くらいしかいなかったしな」

「そうですか。ギルドの調査も間もなく来るようですし、これで収束だと良いですね」

「ああ、そうだな。せっかく来てくれたのに申し訳ねえな」

「いえ、何事もなく終わるのが一番ですから」


話を終えて立ち上がると、エフテルが目を細めてにやけていた。


「…なんですか」

「いやあ、いつも偉そうな師匠しか見たことなかったから、目上の人と丁寧に話しているのが珍しくて、微笑ましくて」

「偉そうではないし、ちゃんと使い分けくらいできる!お前と違ってな!」

「え?あたしもできるよ?というか、あたしの方が丁寧だと思うよ。子供のころに厳しく指導を受けたし」

「あーーー…そうか、社交界は大変だって聞くしな…」


最近エフテルは吹っ切れたのか、こうして平然と過去の話をしてくる。こちらとしてはなんと反応してよいかわからず、微妙な反応を返してしまうのだが、彼女はそんな俺を見て楽しんでいる節もある。意地が悪い。

微妙に沈黙してしまう俺と、ニヤニヤとしているエフテル。

そんな俺たちに、先遣隊の人たちと話していたアルカが駆け寄ってきた。


「師匠、お姉ちゃん」

「お、どうした」

「直近では獣も落ち着いてきてるそうだし、危険な獣も少ないらしいから、一度村に戻ったら?って言っても良い?」


アルカは本当にヒシガツマ村のことを大事に思っているらしい。普段であればここまで積極的に行動することは少ない。

そんな彼女が、自ら情報収集をして、提案してきたのだ。

可能な限り希望は叶えたいし、今回に関しては俺と全くの同意見なので断る理由は何もない。


「そうだな、俺もちょっと話を聞いてみたけど、多分、この人たちが休めるのは今しかない。俺たちとバトンタッチして、村で休むよう伝えてもらえるか?」


せっかくなので、話をするのもアルカに任せてみようと思う。

俺の言葉を聞いたアルカは表情を明るくし(無表情だが)、再び先遣隊のおじさんたちの輪に入っていった。


「いやあ、妹の成長はうれしいものだねえ」


腕を組みながら、うんうん言っているエフテル。


「お前も成長してくれると嬉しいんだけどな」

「え?あたし、未熟なとこある?」


キョトンと、真面目に、そう返された。


「…そういうとこじゃないか?」


俺にはそう返すことしかできなかった。


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