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122 ヒシガツマ防衛戦〜再会

「ああ、ウエカのところの。良く来てくれたね」


ヒシガツマ村の港で一番に迎えてくれたのは、ヒシガツマ村の村長であるシタコ村長だった。

てっきり村の中で防衛の指揮をとっているものだと思っていたが、港で船を集めているらしい。


「避難用の船なら、あとでアオマキ村からも手配するそうだ」

「ああ、知ってるよ。だからこうして村長のわたしが港でああだこうだと指示を飛ばしてるんだ。悪いがあまり構えない。現状はロンタウに聞いてくれ」


本当に最低限の会話だ。

港では沢山の人が慌ただしく働いている。

食料の運び込みなんかも始まっているみたいなので、一時避難なども考えられているのだろう。

となると、いつまでも邪魔をするわけにはいかない。

アオマキ村であったことは俺達と一緒にヒシガツマ村に戻ってきた使いの村人が村長に報告するだろう。


「ロンタウは家か?」

「ああ、そうだね。早く顔見せてやるといいさ」


それだけ言って、シタコ村長はまた、指示出しに戻った。


「なーんか、いやな賑わいだよね」

「こういうのは賑わうとは言いません。慌ただしいですとか、落ち着かないですとか…」

「エフテルさんもお嬢も、そんなことはいいからさっさと行こうぜ」

「ははーん、コウチくんはロンタウさんに会うのが楽しみなんだ!」

「浮気は良くありませんですわよ、コウチ」

「助けてくれお師匠さん。俺は何も悪いことをしていないのに突然いじめられている」

「アホやってないで行くぞ。アルカなんかもうあんな遠くにいる」


スタスタと早歩きでロンタウの家に向かうアルカを慌てて4人で追う。

ロンタウの家は、塔のような3階建ての長い建物だ。久しぶりのヒシガツマ村とはいえ、迷うことはない。


「師匠、早く」


俺達が追いついたことを確認したアルカがさらにスピードを上げた。

確かに一刻を争う。

足早にロンタウの家まで向かう。途中の道は見覚えがあり、懐かしさを感じる反面、やはり通常通りの落ち着いた様子ではなく、非常時だということを否が応でも感じてしまう。

次第に口数が減り、無言になったころ、見慣れた高い建物の扉の前に立つことができた。

この非常事態にロンタウが家にいるということは、3階の展望室にいるに違いない。


「ロンタウ!来たぞ!」


上に向かって声を張り上げると、思った通り返事が返ってきた。


「おう、入って来てくれ!」


扉に鍵はかかっておらず、抵抗なく開いた扉を潜り、全員で3階に向かう。

流石に半年近く住んでいた家だ。迷うことはない。

長い階段を上ると、やっと展望室に着いた。

部屋の四方がオープンになっており、その一方で銃を構えているロンタウがいた。

2年前と変わらない若い姿だ。


「よ、指導役。久しぶりだな」


ロンタウは外から視線を外さないまま、挨拶をした。


「久しぶり。状況は?」


再会を喜ぶ暇もない。

今のヒシガツマ村の状況を伺う。


「今は村の外周の柵までやってきた獣を迎撃している状況だ。幸い、軍団としてやって来るわけじゃなく、散発的に村にやってくる。だから狩人の連中が防衛してる」


話しながら、ロンタウが引き金を引く。

きっとここから届く範囲の獣を狙撃したのだろう。

ロンタウの狙撃の腕は俺以上だ。


「こうして危険度が高めの獣はロンタウが狩ってる。ただ、危険度の高い獣はまだあまり来ていない…具体的には、4以上。危険度5も観測されているらしいが…まだ、ここからは見えない」

「村の防壁までは危険度5は来てないのか」


ウエカ村長から聞いていた状況よりはまだマシということだ。

ただ、危険度5とまでなると、4級の“四極”ではまだ討伐は難しい。

となると、俺達のやるべきことは…。


「ロンタウ、村の防衛の人手は足りてるか?」

「ああ、今のところは」


よし、であれば、俺達のやることは決まったな。


「ロンタウ、俺達は砂漠に出て、少し離れたところで危険度4の獣を狩る。夜には戻るから、そのとき改めて情報共有をしよう」

「流石指導役。それが一番助かるよ」


村人が防衛体制を引き、ロンタウが狙撃をしている。

今必要なのは、防衛ラインまでやってくる獣を少しでも減らすことを目的とした遊撃部隊だ。

だから俺達がその役割を担うことにする。


「ということで、少しでもロンタウや村人の負担を軽くするために、俺達は村から出る。詳しいことは移動しながら話す。いいな?」


俺が方針を勝手に決めて申し訳ないが、皆は素直にうなずいてくれた。


「ところで、突然こんなことが起こった原因に心当たりは?」


何もなくとも獣が村に襲ってくることはある。しかし、群れでとなると話は変わってくる。


「全く不明だよ。村に獣がやってきたから討伐したら、また来て。一息つく間もなく来て、それから複数来て、流石にヤバいと思ったころには50匹は超えてた」


50匹というのは、危険度の低い獣たちのことではないだろう。それだけの数が一挙に押し寄せてきたというのだ。狩人の多いヒシガツマ村でなければ、すでに滅んでいる。


「ま、一生続くわけではないだろうし、村長がギルドに調査も依頼してる。もうすぐ気球が飛ぶさ」

「そうなれば残りの数、原因も分かる、か」

「そういうこと。だからロンタウはもう少しだけ気張るの、さ!」


またロンタウが引き金を引く。遠くで獣が倒れた。


「ロンタウ姐さん、大丈夫か?」


コウチが気遣うように声をかけると、ロンタウは元気に笑った。


「大丈夫じゃないが、これが専属狩人だ。役目は全うしないとな。ただまあ、強いて言うなら…」


横目でロンタウに見られた気がした。いや、ロンタウは顔を外に向けたままなので、意識を向けられたのか。


「ただ?」

「少し寝てないから、お前らの顔を見ることができないのはちょっと悪い。早くケリつけて、そのときに改めて再会を祝おう」


寝てないから顔を見れない?

見張っていなければいけないからではなく?


「顔くらいいくらでも見せるがでででで!」


ロンタウの顔を横から覗き込もうとしたところで、エフテルとカーリに髪と耳を引っ張られ、阻止された。


「じゃあ、もう行くから、少しはあたしらに任せて、休憩してね!」


エフテルは俺の耳を掴んだまま階段を下りていく。


「何をする!」

「乙女心、ですわよ」


カーリの声が呆れたように上から聞こえる。


「はい…?」


コウチを見ると、少し考え込んで、あっ!とでも言うように手を叩いていた。

分からないのは俺だけか。


「師匠はそのままでいいよ。どんどんデリカシーのない男になって。それで皆に嫌われて。私がもらってあげるから」


アルカに肩をポンと叩かれながら暴言を吐かれた。


「どういうことだ…」


まあ、今は良い。

とりあえずは、ヒシガツマ村の防衛作戦だ。

俺と“四極”は村の外の砂漠に向かっていく。

ヒシガツマ村の門を開けてもらうと、柵の向こうには獣の死体と、数人の狩人であろう村人がいた。

防壁にもたれかかるようにして休んでいる人たちも見える。

ちょうど今は襲撃は落ち着いているようだ。


「アンタらは“四極”!来てくれたのか!」

「あ、久しぶり!来たよ!」


エフテルが気さくに挨拶をしている男をどこかで見たような…。


「船乗りかつ坑道作業員の人」


アルカに耳打ちされて、やっと思い出した。

確かにそう言われればそうだ。一番最初に“四極”を認めてくれた人だ。

狩人ではない村人も防衛には参加しているようだ。


「少し、ここの人数少なくありませんか?守り切れますの?」

「腕の立つ狩人には、先行して情報を集めてもらっている。それで、どんな獣が村に向かっているかを教えてもらっているわけだよ。それに、危なくなったら、ほら」


村人が指さすのは村の一番大きな建物。つまりロンタウの家だ。


「なるほど。そうなりますと、まずは先行している方々のお話をお伺いしたいところですわね」

「そうだな、今一番新しい情報を持っているのがその人たちだ」


流石カーリは頭の回転が速いな。


「じゃあ、追っかけよう!」

「そうだね。どうする師匠。わたしとお姉ちゃんで先に行く?」

「俺も行こう」


少しでも早く詳細な情報が知りたいし、危険度5の獣も目撃されているなかで、狩人とはいえただの村人が砂漠を先行しているというのも心配だ。

いつしか食べた串焼き屋の狩人のおじさんなんかは2級の狩人だと言っていたが、現役は退いているような感じだった。複数の獣を相手取るとなると、負担は大きい。


「わざと痕跡を残しながら進む。カーリとコウチはそれを追ってきてくれ」


重装備の2人はどうしても移動速度が落ちてしまうからな。


「お師匠さん、もし途中で獣を見つけたらどうすればいい?」


速度を重視して、先遣隊との合流を目指したかったので、獣を見つけてもスルーの予定だったが、この防壁の防衛体制を見ると、少しでも獣は減らした方がよさそうだ。ロンタウも休ませたい。


「コウチ、カーリ。危険度4以下の獣と遭遇した場合は狩るんだ。多少俺達との合流が遅くなっても良い。村の安全第一で行こう」

「了解」

「分かりましたわ!」


この2人なら大丈夫だ。


「よし、じゃあ、走るぞ」

「おっけー!」

「お姉ちゃん、バテても速度は落とさないからね」

「そこは気合でカバーします!」


いつもよりやる気満々な2人を引き連れて、俺は走り出す。

コウチとカーリは無理のない範囲で急ぎながら俺達を追う。

最新の情報をもって、作戦を立てよう。

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