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俺は結局、何とラブコメしてるんですか?  作者: 磯貝青海
第1章 その胸、よくオフサイド取られませんか?
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1.俺より男な晴れ女(?)

 高校生・菜南晋之介として、まだ綺麗なブレザータイプの制服を身に纏い、少し前まで中学生だった俺たちにはまだ慣れない朝ラッシュの快速列車に乗り込む。あいにくの天気が影響しているのか、どんより、じめじめした空気の流れる車内で、俺と、幼馴染の晴は吊り革に掴まりながら他愛もない話をしていた。


「中学の入学式も雨だったっけな」


 ため息交じりにぽつりと呟く。別に雨男という訳ではないが、今年は3月から今に至るまで雨が少なく、例年以上に桜が綺麗だったので、できれば入学式くらいは晴れてほしかったところだ。


「ここに名前からして晴れ女っていうのがいるんだけどねぇ、残念だ」


 と晴。晴れ「女」とは言うものの、俺より短いんじゃないかという髪の毛、俺に劣るとも勝らないそれなりの身長、そして何よりも俺の数倍キリっとした顔立ち。何事にも怖気づかない性格も相まって、完全インドア派の俺よりもちゃんとした男に近いんじゃないのかと感じる。そんな男勝りな性格だからか、男女問わず周りからの人気は高い。


 そんな晴がこんなド平凡、なんなら彼女に勝てる要素がほとんど見つからない俺と仲良くしている理由としては、両親が共働きで、幼い頃から家が近くであった我が家によく預けられてきたという背景がある。幼い頃から既に男勝りだった晴に振り回されながら、小中学生時代を過ごした。更に彼女は俺と違って頭の回転が速く、成績は常に上位だった。だからきっと俺よりも数段上の名門校に行くものだと思っていたが、自由な校風に惹かれて、俺と同じ中堅高校を選んだらしい。


「まあここまでずっと晴れが続いてたんだし、こういう日もあるさ。この間の卒業式は綺麗に晴れてたし」


「それでも、今日に限って降るかぁ? おかげで真新しい制服が早速濡れちゃったじゃないか」


 雨粒模様の窓越しに、空に向かって愚痴をこぼす。


「日頃の行いじゃないか?」


「俺がいつ何をしたんだ」


「ほう? 土下座してまで私に入学課題の答えをせがんだのはどこのどいつかな」


 そう言って晴は俺の顔を覗き込んでくる。ヤメテ、その舐めくさったようなニンマリとした笑顔、ヤメテ。


「仕方ないだろ、ギリギリで受かった学校の課題なんていきなりできるもんじゃない。そりゃあ近くに特待生がいたら頼み込みますよと」


「幼馴染に言うのもなんだけど、これから先が思いやられるな……。この天気は実はそういうメタファーなのかもわからんね」


 と、呆れた顔で俺の心にグサグサとナイフを刺してくる。特待生だから気にならないんだろうけど、教科書もなしにワークブックのちょっとしたヒントを見ながら初見の訳分からない方程式だの何だのを解けなんて凡人には到底無理難題である事くらい、特待生なら分かってほしい。何だよド・モルガンの法則って。俺はいつから中二病の脳内に迷い込んだのだと勘違いしそうになったよ。


「不吉なこと言うなよ。同級生にとんでもない雨男雨女がいるだけかもしれない」


 というか、そういうメタファーじゃなければこの雨の理由はどうでもいい。ほんと、現内閣の陰謀によるものとかでもいい。


「じゃあ私は正真正銘の晴れ女としてはまだまだ力不足だと?」


 と不満げに晴。いつの間に「名前からして晴れ女」から「正真正銘の晴れ女」にグレードアップしたのだろうか。というか、別にそんな事は一言も言ってない。特待生だからといって分かりきったつもりの拡大解釈はしないで頂きたい。


「よし。そんなに言うならお天道様に祈ってあげよう。悪天候くらい祈ればどうにだってなる」


 別にそこまでして晴れを求めているわけでもないし、どうにだってならねえよ。映画じゃないんだから。


「おいおい、高校生活初日からぶっ壊れなさんな。天気なんて神のみぞ知るものだ。お前のような脳みそ味噌汁にどうにかできるもんじゃない」


「ふぅん。そんな事言うなら残りの課題見せてやんない」


 神の皮を被った人間の皮を被った悪魔かお前は。と口に出したいところだが、立場を分からせられた今、そんな暴言を出そうものなら全てが手遅れになってしまう。


 ここでするべきは勿論。


「分かった分かった。この間の分とこれからの分で奢ってやるから」


 仕方なく、寂しい小銭入れの中身を確認する。二百六十三円。絶望。


「それでいいんだよ、それで」


 晴は偉そうに大きくため息する俺の肩をポンポンと叩く。どこか屈辱的ではあるが、晴の事だ。実際こうでもしないと本当に見せてくれないかもしれない。プライドは持つべきものではあるが、たまには売りさばくべきものでもある。株みたいなものだ。知らんけど。


「ところで、そもそもお前の晴れ女としての実績はどうなんだ?」


「小学校の遠足は六年間で四勝二敗だったじゃないか。それに修学旅行は小中ともに大勝利だ。信じてみる価値はあるだろう?」


「……遠足四勝二敗はだいぶ怪しいな」


「晋之介が祈るよりはマシだろ」


 分かってても打てないど真ん中の剛速球にぐうの音も出ないので、晴れ女様へのお賽銭という意味も込めてミルクティーを一本奢ってやった。


「それにほら、止まなかったら私は水も滴るいい女だった、ってことで」


「じゃあ俺は水も滴るいい男だな」


「それはちょっと気味が悪いかな」


 ああ神よ、俺に逃げ場か入学課題の答えを示してくれ。

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