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俺は結局、何とラブコメしてるんですか?  作者: 磯貝青海
第1章 その胸、よくオフサイド取られませんか?
3/3

2.入学式

 結局、入学式が始まっても雨が止む事はなく、むしろ雨脚は強まる一方であった。ミルクティー返せ。

 しかしまあ、校長の話というのはどうしてこうもつまらないものばっかりなのであろうか。生まれつきゴリゴリの文系の俺からすると、彼の話しているノーベルなんかすごい難しそうな賞受賞者のエピソードだとかは一切面白味がない。まあ文学賞か平和賞の話をされても、結果は変わらないだろうが。

 

 何かないかと、目立たない程度にあたりを見渡す。視力だけには自信があるので、3クラス分遠くの生徒がコソコソとスマートフォンを見ているのも大体分かる。しかし、気になった存在は、もっと近くにいた。

 

 何よりも彼女の胸! この体育館に入場する前に見かけてからなんとなく気になってはいたが、近くで見れば見るほど、やはり年頃の男子高校生を魅了するモノを、彼女は持っていた。しかし俺の目は、彼女の胸元で豊満に育った二つの果実……も実際のところそうなのだが、彼女の行動、そして只者ならぬそのオーラに注目していた。


 確かに、この阿弘学院あひろがくいん高等学校は自主性を重んじ、数多ある私立高校の中でも校則がかなり緩い事で有名ではある。しかし、学校側もまさか入学式という式典の場においてもう少しで中身が見えそうな程にスカートを短くし、ただでさえデカい胸をさらに強調せんとばかりにキツめのYシャツを着て、紙パックのジュースを飲みながら魔導書みたいに分厚い本を読むような異端児が出る事は考えていなかったのではないだろうか。誰かに危害を加えているという訳ではないものの、やはりその明らかに周りとは違う風貌を周りの生徒、特に思春期の男子は注目せざるを得ない。これが俗にいう「ギャル」という生き物なのだろうか。昔から俺の周りに女子は男っぽい晴しかいなかったものだから、そういうことはよく分からないが。


 校長の長ったらしい挨拶が終わり、新入生挨拶へと移る。


「では新入生挨拶に移ります……。新入生代表、番場冴姫」


 はい、と言って立ち上がった彼女――番場冴姫は、自席に分厚い本と紙パックを置き、壇上へ上がる。スカートの短いままの彼女に真意の怪しい笑顔を見せる校長を前に、彼女ははきはきとした声で、手に持った原稿を読み始めた。


「桜が鮮やかに映える季節に、この阿弘学院高等学校の皆様に新入生として迎えられた事を嬉しいく思います――」


 風貌の割にしっかりとした入りであった。さらに彼女は続ける。


「この学校は何処よりも自由な校風が特徴と聞いております。その環境を活かし、勉学は勿論、部活動、学校行事に全力で、そして楽しんで励めることに期待を膨らませています。また、これからこの学校で活動していくうえで様々な難所に突き当たる事もあると思いますが、同級生、先輩、先生、保護者の皆さまの協力をお願いいたします」


 その後は学校の歴史が伝統がどうだの、将来がどうだのみたいな話が続いた。正直一つも面白くなかった。そして〆の挨拶――。そこで彼女は、思いがけない言葉を口にする。


「この新しい環境において、ヒトは勿論、私のようなヒトとは違った種族を含めて、一人一人が支え合い、全員が楽しいと思える学校生活を送れる事を心から期待しています」


 一瞬、生徒がざわついた。彼女は今確かに「私のようなヒトとは違った種族」と発したのだ。


 この世界の人口の0.003パーセントほどしかいないと言われるヒトとは違う「異種族」。その希少さは日本も例外ではなく、ヴァンパイア族の800人を筆頭に、他様々な種族で約3000人といった異種族が日本で生活している。種族ごとにヒトとは違う特徴、それに伴う決まり事はあるものの、基本的にはヒトと同じ生活を営んでおり、完全に溶け込んでいるために、一目見た他人を異種族と判別するのは容易ではない。


 だが、そんな彼女がヴァンパイア族だというのは何となく想像がついた。口を開けた時、微かに見えた鋭い八重歯。そして紙パックのトマトジュース。絵にかいたようなヴァンパイア族の特徴である。90年代の女子高生といえばルーズソックス、梶井基次郎といえば檸檬、ヴァンパイア族といえば八重歯とトマトジュースみたいな風潮なのだ。まあ、新入生代表が壇上で明らかに短いスカートなのは現代の女子高生でもかなりレアだと思うが……。


「おい、見たかあれ」


「絶対ビッチだよな。スカート短すぎ」


「俺もあの娘だったら血を吸われてもいいな」


 後ろの男子がコソコソと話す。俺も同意だ。


 新入生挨拶を終えた彼女が壇上から自席へ戻ってくる。前から見た歩く姿、それはもうゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさ。大迫力。あんなの漫画でしか見たことねーぞ。現実は漫画より奇なり、って訳だ。今日の夢に出てこねえかな。そう思いながら教室に帰ろうというところで、一本のアナウンスが流れた。


「えー、一般生徒並びに保護者の皆様に伝達します。稲葉線がただいま、停電の影響で全線運転見合わせしているという情報が入ってきました。ですので、稲葉線を利用している生徒及び保護者の皆様は……」


 雨だけでなく停電で運転見合わせ。新たな門出の日に、こんなにツイてないとは思わなかった。これから先が思いやられるものである。

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