7話 侵入
---100年前
冒険者ギルドに酒の匂いが漂う。
魔王軍との戦争により、人々の生活が少しずつ変わっていった。
数少ない欲求を満たすために今日も生きる。
傷が癒えても戦う。
癒えてなくとも戦う。
この世界にいる限り、この戦争は避けられない。
すぅ〜はぁ〜。
タバコを味わい深く吸う。
酒を嗜み、リラックスした。
それはたった一人のエルフである。
"白髪"のエルフ……リンネ。
最強の魔法使いとも呼ばれている。
そこに怪しき人物が冒険者ギルドに現れた。
バン!
ドアを強く開ける。
外からの逆光に目が眩んだ。
「おい!今人探しをしてるんだ!」
声からして青年だ。
リンネは目を合わさず、関係なさそうに酒を飲む。
「リンネという魔法使いだ!」
ブフッーー!!
盛大に酒を吐き出した。
「そこだな!!」
目を輝かせながら近づく。
「君がリンネ?実はパーティーメンバーを集めてるんだけど、入ってくれない?魔法使いが必要なんだよ!」
「…私リンネじゃない…リンネはあそこ。」
見知らぬおじさんに指を差す。
リンネは面倒事が嫌いなようだ。
そう言われると、その青年は優しくリンネの耳を触った。
「ひゃっ!?」
驚いて変な声を出してしまう。
青年は微笑みながら言った。
「リンネという者は長い耳を持つエルフ一族だと聞いた。この嘘つき!」
耳を引っ張る。
「イタタタ!耳は敏感だからやめて…!」
涙目になりながら、声を出す。
それを見てすぐに手を離した。
リンネは耳を触りながら、青年を睨みつける。
「君…何者?」
「ふふふ…よくぞ聞いてくれた…!
俺の名前は…山筆零!
よろしくなっ!リンネ!」
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ふふ…懐かしいな…
あの後、シズクの喧騒にイラついた冒険者達が一斉に殴りかかったんだっけ?
まあ、全員シズクの手によって返り討ちにされたけど…
シズク…待たせたね…
今日からまた歴史の歯車が進むよ…
「リンネさん?行きますよ?」
「ああ…行こうか!カケル!」
目指すは西南方面にある鬼の集落。
そして地下に行き、魔王軍幹部ヴェルーダを討つ!
その鍵を握るのが…カケル…君だよ。
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「やっと着きましたね…」
「うん…思ってたよりだいぶ遠かった。」
足が少し重たいが、そんなこと気にせず進んだ。
無数の魔物の気配。
二人の緊張が高まる。
すぐに武器を取り出した。
すると、カケルはリンネの杖を見て驚く。
「いや…ただの木の棒じゃん!すぐにでも折れそうなくらいに細い木…」
ほんとに誰のせいかな〜?
リンネは少しだけイラついた。
すぐに気持ちを切り替える。
「行くよ!」
そう言うとリンネは先頭を歩く。
そして、ゆっくりと集落に近づいた。
すぐに人らしき人物が目に入る!
赤色の巨大な体、立派な角…
どうやら鬼だった!
リンネはすぐに身体から出る魔力を抑え、気配を消す。
「戦ったとしても、ただ魔力を失うだけ…ここは避けながら地下に行きたい。」
するとカケルが何かを発見し、指を差す。
それは洞窟だった。
しかも、鬼の護衛が付いている。
間違いない、地下への入り口だ。
「アレが地下への入り口ですね?」
リンネはコクリと頷く。
そして杖を持ちながら、魔法を使う。
「透明魔法!」
瞬時にリンネの身体が透明になった。
木の棒さえも…
カケルは透明魔法に大興奮して、早く自分もと言わんばかりに急かす。
すぐにカケルにも使った。
うひょ〜!
すげぇ!透明だ!
この状態だったら…あんな事やこんな事も…!
自分の手を見て、透明になったことを確認する。
「リンネさん…帰ってからもう一回使ってくれませんか……?」
「やだ。」
即断!
カケルは勇者になる前に犯罪者になりそうだ。
二人は雑談を終えすぐに洞窟へと向かう。
意外にも鬼は人間とさほど変わらない生活をしていた。
働いて飯を食って寝る。
あまり変わらない。
そして……難なく、二人は洞窟の中に入れた。
周囲を確認し、透明魔法を解く。
カケルは余裕の笑みを浮かべていた。
「全然余裕でしたね!」
「ここまではね…。」
リンネは前方を見つめた。
目の前に広がる不気味な扉。
その奥から感じる異様な魔力。
空気が濁っている。
カケルは剣を取り出し、身構える。
ゴクリと喉を鳴らし、扉を開けた!
そこに広がる光景…カジノの風景とは全然違う。
薄暗く、真ん中のテーブルにロウソクが一本だけ立てられていた。
カジノ特有の眩い光は無い。
ゆっくりと二人はロウソクまで行く。
そしてリンネは大きな声でその名を叫んだ!
「ヴェルーダを出せ!」
その瞬間、暗闇から人影が揺れた。
しかもそれは一人だけでは無い…
大量の魔力…
どうやらリンネ達は囲まれているようだ。
「おやおや、これはこれはリンネじゃないか…!」
暗闇から一人現れる。
それは吸血鬼だった。
「久しぶりだな〜。またギャンブルか?」
「久しぶりだね。メザー、弟のリザーはいないのかい?
まあいいや、ヴェルーダを出して。」
「断る!残念ながら、ヴェルーダ様は奥の部屋で睡眠中だ!」
「教えてくれてありがとう。今すぐに起こす!」
すぐにメザーはリンネを止める。
そして睨みつけた。
その場から殺気が沸き立つ。
「動くな。」
リンネが振り向くと、カケルの背後に新たな吸血鬼がいた。
その一言を聞き、カケルは止まる。
カケルの背後にメザーの弟のリザーがいた。
しかも刃物を持ちながら…
メザーは笑いながら、リンネに言う。
「お前まーた、何か企んでんだろ?いい加減分かってきたぜ。
こんな人間連れてきてよ〜」
「兄さん。コイツ上質な血を持ってる。食っていい?」
冷たい刃物がカケルの首に触れた。
どうやら他の吸血鬼もカケルに釘付けだ。
「俺は〜どうせなら女性の吸血鬼に吸われたいです!…男性は範囲外…」
「私は?私は上質!?」
緊張感が乱れる。
この二人に流されていく。
「うるさい!黙れ!とにかく、すぐにここを出るか、大人しく我らの食糧になるか…選べ!
安全に出られるとは限らないけどなぁ〜!」
どちらを選んでも襲われる。
リンネは少し考え込んだ…。
決断を待つ…。
静寂が広がる…。
「決めた!!」
リンネが何か思いつく。
カケルは嫌な予感がして、体が震えた。
「どうせならギャンブルで勝負しない!?
私達が勝ったらヴェルーダに会わせて!
そっちが勝ったら…カケルを食べていい!
これでよくない?」
……!?
カケルがすごい顔で驚く。
自分が賭けの対象にされているからだ!
「良いぞ…。そうこなくっちゃなぁ!!」
「勿論。種目はこちらが決めるよ。」
カケルの方を向く。
目を見て感じる、どうやらお前が決めろと言っているようだ。
カケルは戸惑った…。
なんせ、こういう場所は初めてでカジノ系のルールなど全く知らないからだ。
どうしよう……
するとリンネが大きな声で言った。
「カケル!私はなんでもいいよ!私がいる限り、負けたりしないからね!」
リンネさん……
「決めました…!……"ババ抜き"で勝負しましょう!」
自信満々の顔。
カケル以外の周囲の者が硬直した。
「「「ババ抜きだと!?」」」
いざ一向にババ抜き開始!




