5話 人間
契約の日から2日経った。
北柳カケルは前勇者の子孫として処理された。
契約により、ギルドへの出入り可能!
さらに黒髪の拘束を禁止。
とてもハッピー!……というわけでもなく…
二人は圧倒的資金不足に達していた。
「リンネ…さん…一体いつになったら、家を…!買うんですか?」
「アホ…食費だけで精一杯だってのに…!」
「てか!アッツ!…エアコンとかないんですか〜?」
今日は真夏日…
二人は日陰で天を仰ぎながら、座っていた。
完全に夏バテだ…
「ていうか…こうなったのも…君のせいだぞ。
カケルくんよ〜!」
ギクッ!
実はあの日、カケルが剣を欲しいと駄々をこねており、最初は断っていた。
しかし、異常なほどのカケルへの甘さにより、簡単に買ってしまったリンネ。
新品の鉄の剣!
反りのない普通の直線の刀剣!
切れ味バツグン!
クソほど安いやつにしとけばよかった!
10万デラム使わせやがって!
自分の甘さが悪いと、自覚していない様子。
「風魔法…早く…」
「精神力使うからヤダ。」
汗だくになりながら、リンネに魔法を使うよう求むカケル。
それを拒みながら、空を見つめるリンネ。
2日前の姿はどこへ…
すると、カケルが話を切り替えた。
「……リンネさん、特訓とかしないんですか?」
「あぁ、やるよ。」
「今すぐに?」
「うん」
ゆっくりと立ち上がり、腰を伸ばす。
そして背中を向けながら、カケルに付いてくるよう手招きをした。
だら〜んと付いていく。
「剣持ってる?」
「持ってますよ。すごく重たい。」
重たい剣を持ちながら、背中を追う。
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「着いたよ。」
「ここは…。」
ギルドの訓練場だった。
そこは冒険者の闘いを練習する場所であり、数多くの冒険者がいた。
いかにも…強そうな連中だらけ…
カケルが入れるスペースなど無かった…
「俺…ここでやるの…?」
怯えながら問いかける。
リンネは素直に「うん」と言い、頷いた。
練習はほぼ模擬戦。
一対一もあれば、多対多もある。
しかし、模擬戦とはいえ、みんなバチバチにやり合っていた。
「さぁて、それじゃ私が少しずつ教えてあげる。」
リンネが優しく魔力について話を進める。
「魔力は、魔法を使う為のモノでね。
たしか「精神の気」とも呼ばれてる。
魔力を身体に付与すれば、身体強化。
武器に付与すれば、グレードアップ!」
「精神の気」か…
でも…俺にはそれが無いのか…
「落ち込む事は無いよ。魔力が全くない奴は稀に見る。…だけど、そいつらは冒険者を辞め、地下街で野垂れ死んでた。やっぱ精神が軟弱なんだよ。」
その話を聞き、寒気が走った。
そして魔力がどれほど大切なのか改めて理解する。
「カケルに覚えて欲しいことは二つ!
一つ目は闘い方。
二つ目は魔力察知。
これだけ!簡単でしょ?」
「いやいやどっちもむずいですよ。
俺闘い方とか分かんないし、魔力察知とかも…」
カケルは模擬戦をしている連中を眺め、ぎゅっと剣を握った。
悔しい…その表情を表すにはこの言葉だけで十分なほど…
しかし、やれやれというようにリンネはカケルを見つめる。
「真似とかするの得意でしょ?」
「いやいや、俺は得意じゃないですよ…」
まだ言葉の本質を理解していないようだ。
「いーや、得意だね…いい?君は何者だ?」
「俺は北柳カケル…」
首をブンブンと横に振る。
「違う!君は「人間」だろ!?」
人間……。
単純なことである…。
「人間とは…人の真似をして生きる生き物だ。
そのスキルは時を得て、天才のレベルへとなっていった。君たちが思っているほど、「真似」というスキルは素晴らしい武器だよ。」
真似。
他者の行動を観察し、自身で再現する。
そのスキルは皆同様天才のレベルへと化している。
たまに劣っているという者がいるかもしれないが、それは単に他の者が優れていると言うしかない。
基礎能力こそが最強!
「だから、模擬戦してる奴らを観察して、闘いについて学ぶ!」
「魔力察知は?」
「それは後々教える。」
何か言いたそうな顔をするが、すぐに切り替え、闘っている奴らの観察を始めた。
目を見開き、集中しながら。
「それじゃ、私は杖探してくるから。またね。」
そう言うと、リンネはギルド訓練場を出て、ルナフィリア王国の外れに行く。
木々が道を作るように、並んでいる場所。
リンネはじっくりと、落ちている木の棒を観察した。
触れてみたり、振ってみたり、
杖を買うお金もないんだ…。
そこら辺で落ちている木の棒で十分活用できるかな。
にしても…すぐに壊れそうだなぁ…
炎魔法とか水魔法とか使っちゃいかんね…
リンネは適当な木の棒を拾い、それに決めた。
なんの変哲もない、真っ直ぐな棒。
これがこれからの相棒か。
「ハハハ!!面白くなってきたーー!」
にしても、魔王幹部…一体どこにいるんだ?
情報屋に頼んで見つけてもらうか…
いや、金がないんだった…
どうするべきか………
あっ!
そういえばいたいた!
魔王幹部1体だけ!
でもそいつとやり合うのか〜
仕方ない…念の為、切り札を備えておこう。
一週間ぐらい国を離れるけど、カケルなら大丈夫か!
魔王幹部討伐まで残り……29日




