4話 登録
--ルナフィリア刑務所
罪を犯した者が収容される…
汚れた部屋、悪臭が漂う。
その小さな牢屋に一人の青年が居座っていた。
最悪だぁ…なんでこんな目に…
臭いし、汚いし…
早くここから出してくれぇ!
すると、小太りなおじさんが鍵を持ってカケルの檻の前に立つ。
威圧感が半端ない…
「おい!黒髪!」
「はい!」
そう呼ばれ、慌てて立ち上がる。
緊張で手が震えた。
一体…何を言われるんだ?
「おめでとさん。釈放だ。」
ポカン…
口が開いた…
「え…?」
---
外に出ると、リンネがポツンと一人で立っていた。
いや……隅で冒険者が様子見している…
冒険者どころじゃない…老人や子供まで!
刑務所を囲むほどの人集りが出来ている!
無数の視線を感じた…
リンネが明るい表情をし、カケルの前に行く。
「よっ!それじゃ、、行こっか!」
「いやいや、行こっか!っじゃないですって!
何があったんですか!?」
「えーと、、話せば長くなるよ…?」
---2時間前…
……ビビってるだと?…オレたち冒険者が……?
新しい勇者に成り得る者にか…?
「お前…舐めてんのか?」
それを聞きリンネは口角を上げ、見下す。
「舐めてるに決まってんだろ!?
100年間何も成し遂げていないカス共が!
現状はまた拮抗!魔王軍との戦争はいつ終わるのやら…」
……クソが…好き勝手言いやがって!
言いたい放題言うリンネに、メバトはついにキレそうになる…。
だが我慢強く堪え、冷静となった。
確かに…テメェの言う通りだよ。
魔王軍との戦争は長期となり、一向に終わらない。
一度終わりかけた時もあったが、それ以来何も変わっていない…
「お前は結局何が言いたいんだ?」
メバトは睨みつけるように、リンネを見る。
その目つきに一瞬動揺するがゆっくりと落ち着きながら喋った。
「結論から言うと…法律を改正してほしい。」
法律の改正…!
なるほど…黒髪の件か…
「無理だな。そもそもそういうのはオレたちに言われても…」
「1ヶ月!……1ヶ月時間が欲しい。」
真剣な眼差し。
メバトが息を呑む。
「1ヶ月の間に魔王幹部の一人を倒す。
もし失敗したら、、、私と黒髪の命を奪っていい
これは契約だ。」
相応の対価!
1ヶ月以内に…魔王幹部一人を倒すだと…!?
普通に考えて無理だ。
オレたちでも歯が立たないってのに、、無謀すぎる。
そして…自分達の命を賭けたか…
「仮に倒せたとしても…改正するかは分からないぜ…?」
「確かに、ルナフィリア王国は黒髪差別主義だ。多分ルナフィリア貴族直々に頼んでも、断られるだろう。」
「そうだ…だからそんな契約しても意味は--」
「だったら、何回でも倒してやるよ!魔王幹部だろうが、魔王だろうが全員ぶっ殺してやる!
ルナフィリア貴族が満足するまで…!」
リンネの狂気染みた発言、表情、殺気。
どれほど本気なのかと分かるくらいに身体に伝わる…
本当にやってしまいそうだな…
「わ、分かった。契約を呑も…」
メバトが言い切りそうになった瞬間。
フィリアが会話に入り込んだ。
「待って!…ホントメバトは押しに弱いんだから…」
「フィリア…。」
「まずは、リンネさん。その条件を呑む代わりに、こちらもある条件を足していい?」
リンネはすぐさま頷く。
今のリンネには断るという選択肢はない。
「一つ目は監視を付けること。
これは逃げたり、悪事を働いていないか確認する為にね。
二つ目はルナフィリア貴族に忠誠を誓うこと。
どんな命令や決断が下されても、絶対に「Yes」だよ」
絶対…か。
何かピンと引っかかる。
「それならこちらも条件を足してもらうよ。
ギルドの出入りの許可。
黒髪の拘束禁止。
これら二つを守って欲しい。」
出入りの許可と黒髪の拘束禁止。
それぐらい別にいい。
……アレ…なんでリンネさん、ここ(ギルド)にいるの?
……まあいっか!
「分かった!いいよ!」
「あ、あと。この件は刑務所の方に連絡してね!」
---
「というわけで…」
カケルの顔を見る。
すごく何か言いたそうな表情で、リンネを見つめていた。
「うーん…はいはい。分かりますよ。法律の改正させなきゃいけませんもんね!」
ここでごちゃごちゃ揉めたって、決まったことだ。
それに今更ビビったって仕方ない。
強い目つき。
何かを決心したと悟る。
「行きましょう!リンネさん!新しい冒険のために!」
「よし!まずはギルドに行って冒険者登録だ!」
人々の視線が痛いかもしれないが、二人はギルドへと向かう。
新しい冒険のために!
---冒険者ギルド
「あの〜冒険者登録を〜」
「え、えー…この紙に名前と……なりたい職業を…」
受付人さえも…流石に嫌がってる。
顔が引き攣って、笑顔が崩れていた。
おい!受付の心得!笑顔が崩れてるって!
そんなに…俺のこと嫌い?
涙目になりながら、ペンを握り言われた通り紙に書いた。
「北柳カケル様ですね…なりたい職業は…剣士…
それではコチラの水晶に手をかざしてください!」
「意外と…普通通りなんだな。」
そっと手をかざす。
しかし、何も起こらない……。
するとリンネが頭を抱えながら、苦悩の表情を浮かべていた。
「あぁ〜!やっぱりか〜。」
「え!?なに?リンネさんどう言うこと!?」
まさかですけど…アレですか…定番のアレ…
「魔力…なし」
受付人は必死に笑いを堪えた。
見ていた人も、口元を押さえている。
「よし!エクスチェンジで!」
「リセマラすんな!」
---ルナフィリア王城
二人が仲良く戯れあっている時、ルナフィリア王国ではメバトとフィリアがルナフィリア王国の王。
バルトロ・ルナフィリアに直接抗議していた。
「偉大なるバルトロ王よ…。黒髪の北柳カケル、エルフ一族のリンネ。彼らの件について…どう思いますか。」
落ち着きながら、メバトは声を出す。
権力という圧に呑まれながらも、声を張り出す。
「わたしも歳だ…あまり言い争うことはしたくない。もう耳にしている。彼らの契約について…」
「どのようなお考えを…?」
「……もし成功すれば、あの任務を任せたい。」
奥様のメリティア・ルナフィリアの……
あの任務に…
「バルトロ王がそう願うのならば…オレたちも賛同します。」
リンネ…どうやら、、お前の死はさらに強まっていくぞ。




