3話 起動
朝起きたらカケルが消えていた。
突然のことで、すごく取り乱したけど…
エールを飲んで気持ちをリセットした!
なぜカケルが消えたのか…数ある中の選択肢を二つに絞り出した…
①保安隊に連行された。
②女の子に誘惑され、一夜を共にしたか。
どちらもあり得る。
ま、一旦…①を信じて地上に出るか…。
リンネは地上に繋がる階段へと足を運ぶ。
とても長い階段でヘトヘトになるも、なんとか最後の段に辿り着く。
ゆっくりとドアを開けると、そこは地上の路地裏だった。
眩い光が見える方へ向かって歩く。
「やっぱり地上は空気が美味しいなー!」
リンネ1ヶ月ぶりに外の空気を吸う。
まずは…大通りを抜けた正面にある、冒険者ギルドに行って掲示板を見てみよう。
でも…大通り通るのやだなぁ、、
そう思いつつもリンネは大通りを歩いた。
辺りが騒つく。
ヒソヒソ…
「ねぇ…あれ…」
「うわ…エルフじゃん。」
「え、エルフの成れの果てだ…」
「あの裏切り勇者パーティーのババア?」
道を歩くリンネを見て、周囲の人々は距離を取りお互いに顔を寄せ合った。
口が小刻みに動く。
冷たい視線、嫌な囁き、全てが心に刺さる。
うう…こうなるから、あまり外には出たくないんだ…
幻影魔法使えばよかった…
あとババアって言ったヤツ殺す。
なんとか冒険者ギルドに目の前まで辿り着き、ドアを開ける。
開けた瞬間、賑やかだった雰囲気が一瞬にして静寂に切り替わった。
リンネを見てすぐに目つきが変わる。
だけど、誰も何も言わない…
リンネは大きなため息をつき、掲示板の前に行く。
【緊急】オーク討伐
内容:オークの群れが北の村を襲撃(数は不明)
報酬:20000デラム
条件:Cランク以上
【求む:回復・支援職】サンダーバード討伐
内容:テラストラ山脈の頂上にいるサンダーバードの
討伐。後衛で前衛のサポートを求む。
報酬:100000デラム
条件:最低Aランク以上の回復・支援職
へー…色々と出てらっしゃる…
おっと違う違う…掲示板じゃなくて広報板だった!
広報板に貼られている紙を一つずつしっかりと確認する。
あっ…
昨夜黒髪の人物を逮捕。
転移魔法によるものか、それとも勇者の隠し子か…。真相は不明。
関係がありそうな勇者の仲間だったエルフ一族リンネを捜索中。
この人物を見つけた方は国家保安隊まで…。
リンネはその文字を見た瞬間、体から冷や汗が出てきた。
つまり、リンネは今国全体に狙われているという訳だ。
しかも、転移魔法は違法であり、もしバレてしまえば刑罰をくらい、刑務所に収監される。
それだけは絶対にダメだ。
ここに長居してはいけない…すぐに出よう。
リンネが慌てて冒険者ギルドを出ようとした瞬間…
ガシッッ!
強い力で、腕を掴まれてしまう。
振り向くと、チンピラみたいな冒険者パーティーがこちらを見て、なにやらニヤニヤしていた。
リーダー的な男がリンネの腕を掴んでいる。
「エルフのリンネだろw?広報板見たぜー?
やっぱ変なことしか考えてねぇな〜?」
嘲笑しながら、煽るように話す。
だがリンネは、煽りに乗っからず、そっぽを向きスルーしようとした。
表情一つ変えずに…
それが気に食わなかったのか、さらに握る力を強め、顔を近づけた。
「どうした?殴らないのか?やってみろよ!?」
あ〜うぜぇ…。こいつマジで潰そうかなぁ、、
まだリンネは冷静を保っている。
さらに猛攻が続く。
「裏切りの勇者みたく、殺してみろよ!」
リンネの瞳の色が変わった。
光がない…
腕が震えるが、なんとか感情を抑えつける。
相当頭にキてるようだ。
その反応を見て、男はさらに追撃を仕掛けた。
「これだからババアは…」
っ…テメェ…!
魔法を使おうと魔力を込める。
その瞬間…!
バンッ!!
激しくドアが開いた。
周囲の皆がある一点を見つめる。
ドアがある方向…
そこには一組の男女がいた。
「全員止まれ。」
緊張が走る。
全員の顔色がすぐに変わった。
二人はリンネを見つけ、ゆっくりと目の前まで進む。
「お前がエルフ一族の生き残り、そして元勇者パーティーのリンネだな。
上から捕えろと命令された。大人しく付いて来い」
リンネはそれぞれの顔を凝視する。
そして目の前にいる者が誰なのかやっと理解した。
ルナフィリア王国の最強ギルドパーティー…
剣士のメバト・ディリヒィークス
魔法使いのフィリア・シルフィード
どちらもA級冒険者!
噂では一週間で20個のクエストをクリアしたとか…
「おい!聞いてるのか!?これ以上フィリアとの時間を潰すな!」
「メバト!あまり強い言葉を使っちゃだめだよ…!」
メバトは早くリンネを引き渡そうと急いでいる。
フィリアとの時間を潰さないために…
しかし、リンネは一歩も動かない。
なんなら…堂々と立ち、睨みつける。
それを見て、フィリアは優しく呟いた。
「大丈夫…痛い思いとかしないから、なんなら一緒に居てあげる。だからね?行こ…!」
ニコっと笑い、安心させる。
リンネという人物を理解っての配慮。
さすがのリンネも同様を隠せなかった。
若干ついて行こうかな…と心も揺らぐ。
それだけ、フィリアの言葉に驚いたのだ。
だがその優しい言葉を掻き消すかのように、毒を吐くメバトが言う。
「どうせ…コイツがやったんだろ…。ホント迷惑しかかけねぇな。」
それを聞いた瞬間…リンネの奥底に眠る何かが壊れる。
今回ばかりは聞き流せなかった。
…私はずっと勇者の真似をするように、動いていた…
口調も行動も…
そうすれば、また明るい生活が来ると思ってたんだ。
でも、現実はさらに私を追い詰める…
いつになったら、また本当に笑えるかな…
いつになったら、「私」を出せるかな…
なぁ…教えてくれよ……誰か…
だけどこれだけは分かる。
この状況、勇者なら…きっとこう言うだろうって!
リンネは目を見開き、メバトを見つめる。
そしてずっと閉じていた口を開いた。
それは…全ての冒険者を敵に回すセリフだった。
「いい加減認めろよ…。
この100年何も出来なかった自分達の無能さに…
新たな勇者の登場を願えよ。モブどもが!」
場の空気が一気に冷たくなる。
込み上げる殺気…
リンネに向けられた殺気が一段と濃くなる。
フィリアでさえも、驚いて笑顔を忘れていた…
だが、リンネは引かない…むしろ、、覚悟を決めた。
「あれ…もしかして…本当は自分たちの居場所が取られちゃうから無駄なプライド張って妬み続けてるの?
ビビっちゃってんの〜!?」
人間も…魔族も…神も…私の悲劇を願っている。
……舐めやがって…
もう我慢の限界だ。
本気で全てを変える為にもう我慢なんていらないよな。
"今から"が本当の革命だ…!




