10話 切り札
「真似」
リンネさんにそれを言われて俺は人を観察するようになった。
全ては魔王を倒す為に…
強くなる為に…
自身の為に…
それぞれの想い身体から溢れてくる。
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人を観察するように言われ、一週間が経った。
あの日から毎日毎日ギルドの訓練場に行き、冒険者の模擬戦を見ている。
そして想像しながら、剣を振り、真似をする。
しかし、やはり実感が湧かない。
どうすれば強くなれる?
「……聞くか…」
カケルは立ち上がり、剣を持った。
少し手が震えており緊張している。
唾を飲み込み、喉が鳴った。
「あの…!」
先ほどまで模擬戦をしていた冒険者に声をかけた。
屈強な男で、たくましいと言ってもいいほどの冒険者だ。
片手にデカいハンマーを持っている。
「戦い方を…教えてくれませんか?」
小さな声で言う。
屈強な男は鋭い目つきになり、カケルを睨みつけた。
「なんでこのおれが、貴様のような黒髪のガキに戦い方を教えなければならないんだ?しかも、貴様は剣だろ…おれはハンマーだ。さっさと去ね。」
あっ…確かに…
そこを考えてなかった〜……。
強さに見惚れていたから…つい…
「そうですよね…。すみません…」
絞り出すように言い、目を合わせずに謝った。
すぐにその場から撤退しようとする。
すると屈強な男が「待て」と言ってカケルを静止させた。
おそるおそる首だけ振り返る。
屈強な男は目の色を変えず、ずっと睨みつけていた。
ヒィッ!!
全身が震えた。
すると、屈強な男はカケルの服を無理矢理引っ張って決闘場に連れていく。
「えっ!ちょっ……なに?!」
「………」
黙りながら引っ張る。
カケルは体を地面に擦りながら、引きづられる。
そして勢いよく、投げ飛ばされた。
「な、なに…!?」
決闘場!?
嘘だろ……アイツと…?
「…戦い方を教えてほしいんだったな…。
ならその身に味わえ!」
屈強な男はハンマーを持ち上げ、思いっきり地面に叩きつけた。
その瞬間…会場が静まり返る。
そして注目が集まった。
「…嘘だろ…あの黒髪、マグナムと戦う気だぞ!」
「未だ無敗の男…最強だぞ!?」
「終わり終わり。アイツ死んだな。」
外野の声が飛び交う。
それほど相手がヤバいヤツだとカケルは理解する。
さらに先ほどの気迫によって、体が硬直してしまった。
や、、やばい……怖い!…勝てない…!!
逃げなきゃいけないのに…足が硬まって…
「うおおおー!!!」
構えながら、突進してきた。
しかも見た目によらず、スピードが速い!
ハンマーが振り上げられた。
「はああぁー!!」
振り下ろされる……!
間一髪の所で、、体が動き腕でガードする。
ドォン!!
しかし圧倒的なパワー差…。
押し返す事はできず、そのまま押し切られた。
数十メートルぐらいぶっ飛んだ。
受け身の取り方も分からず、思いっきり衝撃を身に受けた。
グハッ……
バケ…モン……かよ…
…ダメだ…立てない…
無理だ…
「なぜ諦める…」
「…え?」
突然の言葉に驚く。
「なぜ諦める?」そりゃもちろん…
「…勝てないから」
「なぜ…勝てないと分かる?」
言葉責め…
そんなに聞かれてもあまり理由とか…
「冒険者は勝てないと分かってても、立ち向かう。
決して逃げない…。ましてや前衛は後ろを振り向く事さえ許されない。
深い傷を負おうとも、激痛に苦しんでも…
パーティーメンバーが逃亡していてもだ。
…おれは力の源は"意志"にあると思う。
人は意志によって動き、力を発揮する。
…強くなりたければ…一生たりとも消えない意志を持て。」
「意志を持てか…」
それから俺はマグナムさんの下で修行した。
意外にも、マグナムさんは黒髪である俺を養ってくれた。
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マグナムさん!!
俺今…逃げてませんよ!
なんなら魔王幹部相手に背後を取っています!
……思い出せ。
こんな時…他のみんなはどう動く…
想像しろ…自分の動き、相手の動き。
大きく息を吸って…身体の動きに無駄を捨てる!!
剣を振り下ろす。
無駄がなく、綺麗な動き。
リンネも呆気に取られていた。
ここだ!!
背中!中心部!
斬れる!!
「甘いな…」
突然としてヴェルーダの身体が崩れ始め、ふわりと霧に変わる。
赤黒い淀んだ濃霧。
カケルの剣を霧化ですり抜けた。
「カケル!油断するな!」
「ハッ!ヤバい固まってた…」
リンネさんの声がなかったら、隙を見せる所だった…
すぐに警戒しないと…!
リンネの杖の先端が輝く。
真っ赤な炎が現れる。
「火炎放射!」
確実に当たる…!
霧と化した吸血鬼に火炎魔法は抜群だ!
「食らえ!!」
すると、霧化したヴェルーダが一箇所に集まりそのまま真っ直ぐに変形しながらリンネに突っ込んでいく。
まさに槍!
だが、リンネの正面。
直に火炎魔法が当たる…
その瞬間が狙いだ!!
火炎魔法に当たる瞬間、ヴェルーダは霧化からコウモリとなり四方八方に飛び散った。
リンネは見事に火炎魔法を外す。
その時!
四方八方に飛び散ったヴェルーダが、勢いよく一斉にしてリンネに襲いかかる。
耳の時のように、弾丸の速度で噛みちぎられる…
しかも、今度は数が多い!
当たれば致命傷…。
死ねぇ!!リンネェェ!!
絶対絶命の時…。
時間が遅く感じる。
脳の処理速度が上がっていた。
……当たったら死ぬ…
今度は理解る。
「使わないといけない」とこの身に感じた。
ビュンビュン!
ヴェルーダが突進した。
埃が舞い上がり、視界が悪くなる。
強い衝撃により壁や床がボロボロになり、ひびが入った。
「リンネさーん!!」
強く叫んだ。
顔が少しずつ不安になっていく。
ダメだ…
信じろ…
不安になるな…
リンネさんは…絶対に…生きている!
信じるしかないだろ…
キーン…!
一枚の銅貨が落ちる音が響く。
落ちた場所はリンネがいた場所だ…
パチパチパチパチ!!
カケルの背後で乾いた音が鳴った。
カケルは安心のため息をつく。
そこにいたのはリンネだった!
「ハハハ!!ヴェルーダ!流石に焦ったよ!
まさかそんな技があったなんて…本当に驚いた!!
なら、こっちももう容赦はしないよ!
私が持つ"三つ"の切り札…そのうちの一つを見せてやるよ!!…ていうか見せちゃったけどね!」
さあて…!
その目に焼き付けろ!
転移魔法の可能性とやらを!
「エクスチェンジ!!」




