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9話 対決

クエスト失敗。

これがいかに単純なことであるか、リンネは再度理解した。


どうもこうもない。

自分のせいでこうなったんだ。

私がカケルを…絶対に助ける!


リンネは反射的に魔法を唱えていた。

体から膨大な魔力が溢れる。

その場にいる全員が震え上がった。

さらに恐るべきことはその詠唱はリンネ以外誰も知らないことだ。

---一体何が起こるのか…


「生を愛し、死を崇め。死の淵という麗しに永遠の轟きを。私が私で在り続けるために……。

……『新そう……』


バン!!!


扉が吹き飛んだ。

奥の部屋から……。


「誰だ?殺気ばっか飛ばしてくる野郎は!?」


暗い部屋から煙が舞う。

だんだんと白い煙が晴れていくと、そこには禍々しいオーラを放っている高身長の吸血鬼(ヴァンパイア)がいた。

すぐにその場にいる吸血鬼(ヴァンパイア)は床に膝をつけ、忠誠を誓う。

メザーが怯えながら言う。


「ヴェルーダ様…睡眠の邪魔をして申し訳ございません…」


「メザー…なぜ客が来ているのに、我を呼ばぬ?」


ゴクリと唾を飲んだ。

唇が震える。


「す、すみません。」


頭を深く下げる。

顔には汗がびっしりと張り付いていた。

するとヴェルーダはリンネの姿を見て、瞬時に理解しニヤつく。


「やはり、先ほどの魔力貴様か…リンネ!」


「ごめんねヴェルーダ。殺気をチラつかせて起こしちゃった。」


リンネはわざと大技を披露し、ヴェルーダを誘っていたようだ。

まさに奇策。

しかし、状況はさらに悪くなる。

今目の前にいるのは魔王軍幹部のヴェルーダ、相当手強い相手だ。

勝てるかどうかも怪しい。

するとリザーが冷静に言う。


「リンネはヴェルーダ様の命を狙ってます。そこにいる人間はリンネの仲間。次の勇者に成り得る者です。」


「……ご苦労。……やはりリンネ、貴様は我に損しか与えぬな!貴様には色々と世話をしてやったというのに…」


「ああ、ヴェルーダ本当に世話になったよ。」


リンネは杖を構える。

それに同ずるように、ヴェルーダは殺気を出した。

そしてゆっくりと思い出を語る。


「金が足りないから貸してやったこともある。

家を燃やされた時も、ここに泊めてやった。

同じギャンブラーとして沢山張り合った…」


カケルはそれを聞いて、すごく引いた。

まさかそこまでの人だったとは…

ドン引きだ。


マジかよリンネさん……

色々と恩があるのに、討伐するなんて…

さすがに最低ですよ。

…でも、もう戻れないよね…

やるしかない!


カケルはゆっくりと立ち上がり、剣を構えた。

それを見て、リンネの闘争心が上がる。


「正直な所、リンネ…同じギャンブラーとして貴様を失いたくない。初めての友だ。」


ヴェルーダは顔をしかめた。

不快感を抱いたのではなく、、悲しみを堪えるために。

だが、それを大いに超すのがリンネだ。


「うるせぇよ、ヴェルーダ。さっさとその首よこせ。」


その言葉に全員が顔をしかめる。

そんな冷酷な奴だったとは、恐るべきリンネ。

ヴェルーダはリンネの覚悟を決めた目を見て、同胞を自分たちの周りから離れるように言う。


「1対2だ。お前達、水を差すような真似はするなよ」


鋭い目で睨みつける。

その言葉を聞き、全員縮み込んだ。

次の瞬間リンネが無詠唱で魔法を繰り出そうとする。


「よそ見厳禁!」


炎魔法『火炎放射(フレアストリーム』


杖の先端に魔力が集まり、ヴェルーダに向ける。

その瞬間視界の全てを埋め尽くすような炎が杖の先端から放射された。

それはB級魔法使いとは比べ物にならないくらいの威力。

A級並みだ。


だが…相手は魔王軍幹部…


「リンネ…さん」


そんなものでは倒せない。


カケルはリンネの異変に気付いたようだ。

顔から一滴の汗が流れ出る。

いかに深刻な状況なのか、それを見た瞬間…カケルは全てを理解した。


「リンネさん……耳が…」


右耳から大量の血が溢れる。

激痛がリンネを襲う。

その形状を見る限り、かじられたようだ。


「ーーイッッタ!!」


ヴェルーダめ…

あの一瞬で…!

体の一部をコウモリに分裂して、弾丸並みの速度で食いやがった!

ほんと油断してたよ……


「流石だね。ヴェルーダ…!」


「まだまだ行くぞ。」


今度は体全体をコウモリに分裂し、リンネに襲いかかる。

しかし、リンネは同じことに二度引っ掛かるような器ではない。


魔力壁(ウォール)


ただの魔力の壁だが、それで十分。

相手は分裂してるため、魔力も分裂するはずだ。

つまりまとまらないと…雑魚同然。


リンネは魔力壁を前方に押し出し、コウモリに分裂したヴェルーダにわざと当てた。

その行動にヴェルーダも驚く。


魔力を注ぎ、さらに広くさせる…!

そして……囲む!覆う!閉じ込める!

魔力壁が魔力ドームとなった。


「縮め!」


その言葉に反応するように、魔力ドームが縮んでいく。

ヴェルーダは押し返そうとするが、分裂のせいで思うように力が出せない。


このままでは…!

圧死する…!


すぐに合体し、元の体に戻る。

そして押し返した。


「うおぉぉおおー!!」


魔力ドームに亀裂が入る。


パリンッ!


ガラスのように、崩れる。

そしてすぐに魔力は塵となって消えた。


「流石だな…リンネ!お前ほど魔力を上手く使いこなすヤツは初めてだ!」


「ヴェルーダこそ…さらにパワー付けたね…!」


二人の闘志が燃え上がる。

その死角から鋭い剣がヴェルーダに襲いかかった。






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