やります!
「やります!」
二つ返事だった。もちろん、王宮への出仕の話だ。
そんな選択肢が自分に残されていたのか。驚きと高揚が混ざり合い、思考が追いつく前に言葉が口をついて出た。
父は呆れ果てたように、深くため息をついた。
「おい。中身も聞かずに快諾して、後で泣きを見ても知らんぞ」
「いいんですよ。フットワークの軽さだけが俺の取り柄なんですから」
「浅慮の間違いだろう。……まあいい。用意されている席は『従者見習い』だ」
「従者、ですか」
柄にもなく、少し背筋が伸びた。
「まずは二年間、見習いとして下働きからだ。そこで認められれば、正式な任官となる」
「でも父上、そういう修行ってもっと幼い頃から始めるものじゃありませんか?」
問い返すと、父は急に声を潜め、言い難そうに眉を寄せた。
「……ここだけの話だぞ。本来、従者見習いの多くは第一王子に仕えていた。だが、その母君であるゲルダ妃の気性が苛烈でな。罵倒や折檻に耐えかねて、皆逃げ出してしまったんだ」
一気に血の気が引くのがわかった。
「ち、父上……俺をそんな地獄へ送るつもりですか?」
「安心しろ。お前が将来お仕えするのは第二王子殿下だ。母君のポレッタ妃は慈悲深く、使用人からも慕われている。第二王子の従者となれば、王太子の側近のような出世は見込めないだろうが……」
「出世なんて二の次です!」
「だろうな。だが殿下はまだお生まれになったばかり。ゆえに、まずは国王陛下の従者に付き、二年間徹底的に作法を叩き込まれることになる」
「へ、陛下に……?」
さっきまでの威勢はどこへやら、俺の喉が鳴った。
「そうだ。くれぐれも粗相のないようにしろ。小さな失敗はいい。だが、取り返しのつかない事態だけは避けてくれ」
「は、はい……」
こうして、オレは学校の卒業と同時に、王宮という未知の世界へ足を踏み入れることになった。
十五歳の秋のことである。




