赤髪
あれから数日が経ち、徐々に学園生活に馴染んできた。
日本で通っていた高校生活と対比して、全く退屈しない生活を送っている。
ちなみに明後日から夏休みらしい。
とはいえ紫琶葡萄に対人戦を挑まれたり、ジェイド・クロウリーにカナリヤードと会話しているところを見られて関係を疑われたり、ガルム・バイオローにちょっかいをかけられたりなど、良くないこともあるにはあったが。。。
今日はやることがあり、それはソアヒート・プレッシュという女子生徒と接触すること。
ランキングの欄は同時にプロフィールのようになっており、詳細を見るとH・1年次と記載されている。
どうやら1つ年下のようだ。
4位:ソアヒート・プレッシュ 能力名:炎牢、エネルギー密度:大
総合力:S
だが、少し1学年下のクラスに行くのは少し抵抗がある。
上手くタイミングが合えばいいのだが。
「手腕くん、どうかしたの?」
考えてる途中、隣に座る霧生知那に話しかけられる。
「......ちょっと会いたい人がいて、だな」
「......誰?」
「気になるのか?」
「......別に」
そう言ったわりには、
タブレットから目を離さない霧生知那。
「1年の女子......」
「ソアヒート・プレッシュっていう」
その瞬間。
知那の指が止まった。
「......あまりおすすめしないわね」
「というと?」
普段見せない懐疑的な目をしている。
「彼女、成績は良いけれど学園の中でも嫌われてるようなの」
「孤立してる、とも言えるわね」
「そうなのか?原因...は」
「私が知るわけないでしょう」
途端にムスッと、違う方向を向いてしまった。
何か気に触ったのだろうか。
人の心はわからないしわかりたくもないが、あえて挑発してみることにしよう。
「自分が興味あるのはあんただけだから安心しな」
「ハッ──!?」
顔を真っ赤に染め、急に大声を出す。
当然の如くクラスメイト中がこちらをみる。
「冗談」
直後、無言で腰の剣を取り出し自分の左手に刺してきた。
痛い。
自分が霧生知那という人間、もとい過去と成長、戦闘技術について興味があるのは本当なんだが。
「手腕と霧生。俺の授業で喧嘩とは良い度胸だな」
「「あ」」
ワンが今の授業を担当していることを完全に忘れていた。
この後痛い目を見たのは言うまでもない。
* * * * * *
昼休み。再生するとはいえまだ痛いため左手に包帯を巻き、1年生の校舎にやってきた。
1学年もこちらと同じく3クラスある。
一つ気づいたことは2年の校舎より静かだった。
というより、どこか張り詰めている。
ランキング上位の名前が壁のモニターに常時表示されているからかもしれないな。
日本で言うところの中高一貫、高1ならば生活に慣れてはいると思うが。
少し歩き、1年1組を目指す。
さて、どうやって声をかけるか。
赤髪と目元が特徴的であることはわかっているので、クラスにいればすぐに目につくはず。
とはいえ、自分も全く目立たないわけではなく、なんなら目立つ側の人間になってしまっている。
「...........」
クラスの様子を見ると、8人ほどしかいないようだ。
ソアヒート・プレッシュの姿は......なし。
クラスの扉の一番近くにいた男子生徒に声をかける。
「......ちょっと聞きたんだが、ソアヒート・プレッシュがどこにいるかわかるか?」
「あなた、能技劇場の怪物さんですか」
「だったらどうする」
「......いえ、なんでもありません」
「モノ好きにはモノ好きを、ということですか」
モノ好き。やはりソアヒート・プレッシュという能力者は何かがあるように思える。
男子生徒は一拍置いてから、
「プレッシュさんであれば、誰もいない場所でよくお昼を過ごしているようですが」
「それ以上はわかりません」
「......なるほど、感謝する」
一言だけ述べ、早々にその場を離れる。
誰もいない場所。これだけでは絞りづらいな。
とりあえず心当たりがある場所へ行こう。
1年生の校舎から移動し、スタジアムに来た。
人目には付かないが、だだっ広すぎて居た堪れないと感じるかもしれないな。
なら、その裏はどうだろう。
スタジアムは直接校舎にも繋がっているが、外にも出られる構造になっている。
だが、何かの配達だったり業者くらいしか出入りしないためまともに使われない...とワンが言っていた。
業者用の扉を開け、外に出ると、灼熱に襲われる。
「あっついな...」
流石、8月と言ったところ。
温暖化現象は当然キドナク帝国にも影響があるようだ。
灼熱に当たり、誰も座らないであろうベンチ。
そのベンチで目的である赤髪の少女が、一人でパンを食べていた。
汗をかいている様子は一切なく、なんなら日光浴をしてチャージをしているようだった。
「......あんたに話が」
「......はむはむはむ」
ジト目でこちらを見ながら、ハムスターのようにパンを食べている。
なんだか話しかけづらい。
「......だれ」
「手腕だ。手腕楹咤」
「......黒と白の髪、一人称が自分」
「能技劇場の、ばけもの」
「ならあんたも嫌われ者...ってことでいいか?」
「......死んで」
なぜか罵倒されてしまったが、このまま話を合わせてしまうか。
「あんた、イグナ・プレッシュを知ってるか?」
「......どこでその名前」
急に固まり、ソアヒートの目が鋭くなる。
こちらをじーっと見つめている。
見つけた時とは別のオーラを放っていた。




