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拉致問題  作者: ゆるうる
Case 1:実験
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3/34

拉致

夏休み初日。今は午前11時。

姉貴はすでに出かけており、弟はばあちゃんの手伝いをしているようだ。今日は図書館にでも行こうかと考えながらテレビをつける。


『キドナク帝国は、昨晩日本に向け弾道ミサイルを発射した模様です。ミサイルは日本のEEZ、排他的経済水域の外側に落下したと推定されています』


まーたキドナク帝国のニュースかいな。朝からやっている。確かに久しぶりにミサイル撃ってきたような。

大半の国民は、また撃ったのかよーとしか思わないだろうが、平和ボケしてると言っても過言ではないやんな。

LINEを見てみると、5人のグループラインでもミサイルの話がされていた。


『ねね、ミサイルのニュース見た?』

『それな、久しぶりに撃ってきたよな』

『ウケるー』

なんか...会話が見るに絶えなく、速攻閉じた。

スマホを閉じ、テレビの方をみるとおばやんが話しかけてきた。


「久しぶりに撃ってきたんやなぁ」

「怖いよな」

「あの国は国じゃないんよ」

まるで内部を知っているかのような口調でおばやんは話した。

その後すぐ他のニュースになりニュースを消すと、ふとカーテン越しに外を見つめた。

まさかなと思ったが、案の定普段と何ら変わりない景色が見えて安心した。


「気にしすぎよな」

そう思い、図書館に行くため玄関に向かう。


「おばやん、ちょっと図書館行ってくるわ」

「きぃつけてな、今日は」

「今日なんかあるんか?」

「......」

今日は、と何かありそうというふうに言ってきたが気にせずイヤホンを耳にはめ、音楽を聴きながら外を歩く。最寄りの図書館までは一駅分歩かなければ行けないのだが、音楽を聴きながらの散歩は好きなので歩いて行くことにする。

そういえば外出るなとかあいつ言ってたな。まあ関係ないやろ。



* * * * * *



午前9時。

手腕家の前で黒のベンツで会話をする筋肉質で大柄な男と小ぶりの男。腕には謎の紋章。


「ゼロ、あの件今日はどのくらいだ?」

「兄さん、例の通りで」


「あ...でも一人だけ指定入ってます」

「またかよ」

「しかもマスターマインド直々の、ですよ」

「うわだる、普段関わってこないのによー」

「何されるかわかりませんから、素直に従うことをお勧めします」

「そうだな、指定の方は暴れられたら面倒だし静かにさせとく?」

「検討しておきましょう」

そう言い終えると、車を出しどこかへ走り去った。



* * * * * *



午後16時。自販機で午後ティーを買ったわいは図書館を出た。推理小説とラブコメのマンガをレンタル。

ラブコメのマンガの方はあまり見かけないし、良い収穫やな。

わいは本を読むことが好き。というのも普段は誰かといた方が過ごしやすいと感じるのだが、本は唯一1人で没頭できると感じるから。自宅に帰るためイヤホンを取ろうとしたその時。


「あ、楹咤」

「ん?」

振り返ると、そこにはうっちーこと内治兼星がいた。

普段つけていないのに、なぜかヘッドホンをぶら下げている。


「うっちーか」

「偶然、それは必然」

「いや必然ではないな」


「今日なにしてたん?」

しばらく談笑を繰り返していると、17時になっていた。

同じ時間に、家が危機になっていることも知らずにわいは話していたのだった。


「今日帰るの早い?」

「いや特には。でももう17時だし切り上げるかなー」

「おけ」

うっちーとの会話を切り上げた。うっちーとは一対一で会話することが全然ないのである意味貴重な時間だったのかもしれないな。

スマホに画面を向けると、たくさんの着信履歴が溜まっていることに気づいた。姉貴とおばやんからやな。

おばやんへ電話をかけるも全然出ないため、姉貴にかけることにした。


「もしもし」

『あんた今どこいんの!?』

「え、どしたん、今図書館の近くの『家戻ってこい!!!』

「わ、わかった、ちょいまって」

ぶちっ、と通話が切れると早々に走り出し自宅に向かうことにした。

久しぶりに息が切れるほど走った。いつもより人通りが少なく、音があまりない気がするが、気のせいなのだろうか。


わいの家は無駄にだだっ広いおかげで、少し遠くからでもそれが見える。

一見何も変わってないように見えるが、姉貴がここまで焦ってるのは珍しいので何かあったんだろう。

玄関に来ると、そこには黒い車が止まっていた。

「あの車、、、」


あの黒い車、昨日コンビニで見かけたものと酷似している。車の中に人はいないっぽいか...?

焦りと恐怖からわいはその場に黒い車を見つめながら立ち尽くしてしまった。

ハッと我に返り、玄関の扉を開け中に入るとそこには暗闇と静寂があった。

人の気配があるかどうかはわからない。


恐る恐る暗闇のリビングに行くと、そこには血まみれの姉貴とおばやんが倒れていた。

近くには数珠と複数の紙が散乱している。


「えっ、あっ、え、え」

「姉貴!!!!!!!」


「ちょ、あ、え、うあ、あえ」

「おばやん......??????」

「ねえ起きて!!!ちょい!」

大声で呼びかけるが反応がない。


「意味わかんないって!嘘言うて!」

その瞬間。


「大丈夫、死んではないですよ」

後ろから声が聞こえ、振り返ろうとした瞬間。


グサッ———


とてつもない痛みに襲われ、下を向くとお腹に刀のようなものが刺さっていた。

わいはその場で倒れ、意識を失った。



* * * * * *



「これで今日のミッションは終わりか」

「そうですね、指定だけ持って帰るとしましょう」


「一応救急車は呼んでおきます」

そういい、ゼロは119に電話をかけようとしたその瞬間。


———ブチッ


「......もしかして」

空間を歪め、分断した次元から顔を出している黒い髪の人間。

顔の全貌は見えない。男なのか女なのかもわからない。


「あんたがマスターマインドか」

「..........」

無言のまま何も言わないマスターマインドは、血を出して意識を失っている手腕楹咤をじーっと見つめている。

その後、フッと言うと。


———ブチッ

空間の歪みが消えた。


「......何をしにきたんでしょうね」


「それな。てか初めて見たぜ」

「あのエネルギーのオーラ、只者じゃない」


「百連撃の兄さんがそんなこと言うとは驚きです」

「だまれゼロ。俺だって完璧無敵超人ってわけじゃねぇよ」

「失礼しました」


「指定の方はこのまま飛行機乗せるか?それとも船?」

「たしか大型客船の方を手配していると皇帝本部から聞いていましたが」

「あ?まじ?俺何にも聞いてないんだけど」


「とりあえず横浜へ行けば良いでしょう、船は赤レンガ倉庫にいると思われます」

「おけ、運ぶか」

そう言い、男2人は指定と呼ばれる手腕楹咤を運び、車のトランクに入れた。

血を綺麗に拭き取り、万が一死んだ時のためゼロの能力も使用した。


「これで傷が悪化することはないでしょう、多分」

「よし、出すぞ」

ぶぉーんとエンジン音が鳴り響き、黒のベンツは横浜へ向かうのだった。


「横浜までの行き方、、調べ方がわからん」

「相変わらずですね...」


「日本産の車は最高ですが兄さんの機械音痴が治らないのは勘弁です」

「悪かったな」



* * * * * *



目を覚ますと、そこは何も見えない黒い場所にいた。

「なんやこれ...」


まともに身動きが取れず、視界は真っ暗。

自分が今どこにいるのかはわからないが、少なくとも物の中にいることはわかった。

多分寝袋かなんかだろう。

スマホは没収されているようで、今手元にあるのは普段つけているミサンガだけ。

しかし、何だか揺れているやんな...?耳を澄ませてみる。


———サーッ、サーッ


波の音だろうか。それにかすかなエンジン音も聞こえる。

仮にそうなら、ここは海の上...つまり、船に揺られていることになる。


「いてっ、、」


少し動き、出血していたお腹に手を当てると、ナイフがまだ刺さっていることがわかった。

でも不思議なことに、痛みはあまり感じない。わいの感覚が鈍ってるのかもしれないが。

仮に船の場合、近くに船員がいる可能性もあるので、わいは声をあげた。


「誰かおらんかー!」

「HELP!」


.................


何の応答もなく、波とエンジン音のみが響き渡る。


「おーい!!!」

もう1回全力で叫ぶも、何も返ってこない。

姉貴......おばやん......春気.........


「......あかんやろ、これ、、、、」

呼吸が震える中、寝袋のなかで静かに言葉を吐いた。

そして、波の音が急に大きくなったのを感じた。

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