平穏
時間は変わり、放課後。
5人ほぼ同じタイミングで昇降口を出て、近くの大型商業施設に向かう。大半の生徒は放課後をほぼそこで過ごしているからやな。
最初にカラオケに入った。まず未歌とみるくが一緒に歌い始める。
わいがよく知っている曲なので、タンバリンをタイミングよくリズムに合わせて叩いている。
こういう役割は奏詩がやった方がいいと思うんやけどな。
その後も各々歌い、2時間ほどでカラオケを後にする。うっちーは歌い足りなかった模様。
うっちーに対して苦笑しつつ、次はボウリングとアスレチックへ。
ボウリングは個人戦。
「えいくん手腕家の力みせてー!」
「そうだな、家計の血を」
「家系とか関係ないんやけどな...」
うっちーとみるくが余計なことを言っているが、結果は4ピン。
奏詩は運動神経抜群なので案の定1位。未歌もギャルでネットに精通してるタイプにしては謎に運動神経が良く、ストライクを3回決め2位。奏詩との差は微少やな。
わいは......ビリ。最初はスペアを多く取れて調子が良かったが、どんどん追い越された。なお、みるくにこっぴどくバカにされたので哺乳瓶と言っといた。
なぜ、ボウリングの後にアスレチックを選んだのか。普段は行かないが、せっかくだからということできた。正直わいは体力的にあまりにもきつくリタイアしたいところだったが、みるくがボウリングの結果を永遠とバカにしてくるので、仕方なくやることにした。
わいだけ目標地点にタッチできなかったのは別のお話。やっぱやらなきゃよかったわ。
でも、わいはなぜか優越感に浸っていた。結局5人でいる時間は心地よいのかもしれないと。
20時前。カフェで少し過ごしたあと学校の最寄駅で解散となった。
奏詩と未歌は別方向の電車のため、一緒に帰った模様。うっちーはまだ商業施設でやりたいことがあるらしく戻っていった。
つまり、今駅前にはわいとみるくだけであり、若干気まずい空気が流れている。ちょっと寂しい。
「ねえ」
「なんやみるもっと」
「モルモットみたいに言わないで?」
モルモットと一緒に駅の中を歩き出す。まだ人は多く東京という都市のデカさを実感する。
同じ電車に乗り、わいのおうちの最寄駅まで一緒に行動した。
夜道を一緒に帰っていると、
「ねえ、えいくん」
「どした」
みるくが袖を引っ張ってきたので、立ち止まって話を聞く。
「えいくんって、ほんと一人になるの苦手だよね」
「は?」
いや、でも中学のときまともに会話できてたのはみるくだけだったんよな.....
「あぁ...そやな......」
「なに、ちょっと傷ついちゃった?」
そう言って頬をつねってくる。なぜか、いつもより暗い笑顔を作っているように見えた。
「それと、ここ数日はあんま外出ない方がいいよ」
「.........なんでそんなこと言えんねん」
「わいの誕生月なんやけどな」
「知ってるよ」
こいつ、さっきから根拠のないことを事実かの言うのなんやねん。ムカつく。
「じゃ、また夏休み明けにね」
「どーせバイトで会うやろ」
みるくは返事せず、ニコっとして背中を向けて歩いていった。
「なんやねんあいつ」
誰もいない道に吐き、家に向かって歩き出す。今日の空はやけに明るい気がした。
やはり話し相手がいないと、家に帰るまでの時間が長く感じるな。
「ただいまー」
「おかえりえいたー」
「姉貴、今日は仕事早かったんやな」
「おぉう、楹咤おかえんなさい」
「おばやん、玄関こやんで椅子座っててええで」
おばやんこと、わいの祖母である手腕火重。今年で78歳。両親は常に仕事で忙しく、良くて年に2回ほどしか帰ってこないため、姉の柯怜、弟の晴気とともにおばやんの元で育った。おばやんは関西の人間なので、わいも関西弁を話すというわけや。
「春気ただいま」
「ーーーー」
弟である春気は生まれつき耳の病気であまり言葉が聞こえていない。
そのため、手話でコミュニケーションをすることが多い。わいが手話でただいまと伝えると、おかえりーと言ってくれた。
手を洗い、自分の部屋に行きバッグを置いてリビングに戻ると、姉貴から
「8月、マミーとパピーおうち帰ってくるって」
「ほんまにいうとる?お盆とか関係ないのに」
「あんたの誕生日あるからちゃう?」
「そんなしょーもない理由で帰ってこん気がするんやけどな」
何を考えてるんだか。
20時前、姉からの買い物を頼まれコンビニへ。今日は夜風が強く、髪を靡いている。
姉貴から頼まれたものはコーラと牛乳、あとお菓子を適当に何個か買うてこいいうてたな。
ついでにわいはコーラ味のグミを購入。噛めば噛むほどやる気が出るんや(気がするだけ)。
「レジ袋おつけしますかー」
「大丈夫です」
「ありがとうございましたー」
コンビニを出て、自宅に戻ろうとした時。来た時には身に覚えのない黒い車が止まっていることに気づく。
わいは車に詳しいわけじゃない。車種に関してはわかりかねるな。ナンバーは...なぜか7777。全ての番号が7になっているようだ。ナンバーに関してもわかりかねるが、あまり見たことがないような...?
中には2人の人間がいるのが見えるが、性別や見た目はここからではわからない。
そんなラノベやマンガの世界じゃあるまいし。特に何もないと思い、家路につくとする。
多少視線を感じた気もするが。
「ただいまー」
姉貴から遠目におかえりーと聞こえてくる。どうやら飼い犬のマルと遊んでいたらしい。
弟の春気がジェスチャーでバン!とやってマルがそれに合わせて倒れている。
そんな微笑ましい光景を、わいは見つめていた。
「ドーン」
「ワゥッ」
今度は押し倒すジェスチャーらしい。ドーンと言ってわちゃわちゃしている。
春気はまだ小学5年生。このまま両親のことは考えず純粋に育っていってほしいと、なぜか親目線で考えたのだった。




