測定
翌朝。スマホの通知音で目が覚めた。
時刻は6時30分。こんな時間に通知が来るものなのか。
横で寝ているイグナを起こさないようにスマホを開き、メッセージの欄を見る。
『今日はお前だけ能力測定を行う、遅れるなよ』
教師であるワンからのメッセージだった。なぜこんな時間に連絡をするのかは疑問。
はい、とだけ返しておく。
スマホを見て意識が覚醒したのか、もう寝れなそうなので着替えだけ済ませて起きておくことにした。
アプリでランキングの欄を再度見る。
ソアヒート・プレッシュ......
アプリでの容姿を見るに、共通しているのは赤髪...と目元。
イグナのことを知っている可能性はゼロじゃない...かもしれない。
寝顔を見る。
「......兄妹、とか」
そこまで考えて、自分で否定した。
すぐ繋がりすぎるか。ちょっと都合が良すぎるかもしれない。
そんなことを考えているとちょうど1時間経ったようで、カナリヤードが部屋に入ってくる。
「学校の時間です」
「......珍しく、早起きですね」
朝食は食べず、そのまま研究所の外へ。
今日も車で行くらしい。
カナリヤードは助手席に座り、景色を眺めている。
「なぁ、これから毎日自分が朝運転するのか?」
「......そうです。帰りは私の能力で帰れますが」
「私はチョークでマーキングした位置間を転移させられますが、片方のチョークの線が薄かったり、消えかかっていたりすると転移ができません」
「まぁ、あなた自身にマークをしても可能なのですが」
なるほど、それがカナリヤードが持つ能力の原理というわけか。
「......自分を気絶させたときはどうやったんだ」
「転移で衝撃波を発生させて、それを首に当てただけです」
なるほどわからん。
「それではいってらっしゃいませ」
正門の前...ではなく、人があまり立ち入らない場所でそう言うと、研究所に戻った。
靴を履き替え、自身のクラスである1組に向かう。
「......あいつだ」
「能技劇場で暴れてた」
「マジで1組入りしたんだ」
「でも学園のランキング載ってなくね?」
なにやら多学年の生徒にもジロジロ見られている気がするが、気にせず行くとしよう。
クラスに入り、席に座る。
先日と同じように、基本的にはタブレットで授業を受けるので手ぶらが普通のようだ。
「おはよう、手腕くん」
「......おはよう」
隣に座る霧生知那に挨拶される。
「知那おはよー!元気ー?」
「......クロウリーくん、名前で呼ぶのはやめてと言ってるでしょう」
ジェイド・クロウリー、後方席に座る金髪の男子生徒。
学園のランキングではたしか、7位...だったか。優秀ではあるらしい。
「編入生、手腕、だっけ、おはよ!」
「......あぁ、おはよう」
挨拶をすると、ジェイド・クロウリーは自分の席に戻っていった。
「......彼、私のことが好きなのよ。わかりやすいわよね」
「まあ見てればわかるな」
「おまけにアメリカ人。なんだか心理的な距離で戸惑ってしまうことがあるわ」
やはりアメリカ人か。日本人以外も拉致しているのが考えられる。
...同時に複数の視線を感じた。
昨日より露骨だった。
噂になっているのだろう。
ランキング外の編入生。
カーニバルの怪物。
研究所直属。
そんな単語が、小さく聞こえた気がした。
「うぃーっす。ホームルームやるぞー」
「......ぶどうちゃんだけいないな」
周りを見渡すと、前方に座っているであろう紫琶葡萄の姿がない。
「まあいい、今日の予定だが──」
そう言うと、ワンは授業や注意すべきことなどを淡々と述べていった。
「今年の戦闘祭だが」
「来月、9月に実施されることになった。確認しとけ」
「手腕、お前は別室」
名指しされ、別室に行くことになった。
「もう特別扱い?」
「流石怪物〜」
クラスメイトからそんな声が聞こえてくる。
「......みんなうるさいわよ」
* * * * * *
ワンとスタジアムへ向かう途中。
視線を感じる。
廊下の天井付近。
換気口の上。
紫色の何かが一瞬だけ見えた気がした。
「......気のせいか」
スタジアムに来ると、ワンは何かの器具やら道具を持ってきた。
「よかったな、お前の今日の授業は全部測定で終わるかもしれないぞ」
「それは良いことなのか...?」
「まあ、取り返しはつく」
そう言うと、動く壁のような道具を前に持ってきた。
「この壁に向かって自身の能力を飛ばすんだ」
「それで能力の強さとエネルギーの量を同時に測れる」
銃の形を作る。
「バンッ!」
──ドゴオオオオン!
この壁はテストのための防御用のようだが、それを吹き飛ばした。
「じゃ、次。身体能力」
「......?」
「走れ」
「雑だな」
スタート音。
踏み込んだ瞬間。
スタジアムの床が砕けた。
「うお、加減しろ!」
「いや知らん」
記録。測定不能。
「次、頭脳」
タブレットが渡される。これもスタジアムで受けるらしい。
表示されたのは特定の教科による問題...ではなく。
『敵能力者3名に包囲された場合、最も生存率が高い選択を選べ』
『研究施設が暴走した際、被害を最小限に抑える方法を答えよ』
など、妙に実践的な問題ばかりだった。
「......学校かここ?」
「学校ではあるぞ」
「最後、エネルギー総量」
時刻はお昼過ぎ。ようやく最後の測定のようだ。
総量...?さっき測ったものとは違うらしい。
体を機械に預ける。
機械が青白く点滅した。
数値が上昇。止まらない。
「......いや、まだ上がるのか」
ワンが眉をひそめる。
警告音。
測定器の画面に、ERRORの文字が浮かんだ。
* * * * * *
観客席上段。
「わー......」
その様子を見ていた紫琶葡萄は、楽しそうに笑っていた。
「やっぱ化け物じゃないっすか」
「ね」
右耳から知らない声。
「え」
「誰っすか!?」
その場を瞬時に離れる。
スタジアムの全体を見てもワンと手腕楹咤を除いて誰もいない。
だが、速攻の刻印を持つ彼女は見逃さなかった。
「白い髪...?」
一瞬だが、影からそんなものが見えた気がした。
更新遅れて申し訳ありません...私生活に加えてストーリー作るのに結構苦労しております。。。




