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拉致問題  作者: ゆるうる
Case 3:学園
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27/34

面倒

「初日はどうだったー?」

天城莱壽はニコニコしながら質問をした。

「......特に何も」


「相変わらずドライだねぇ〜」

「てか、バケツのことは聞かないんだねー」

そう。周囲には大量の血が入っているであろうバケツが置いてある。


「聞いても答えてくれるのか...?」

「それは君次第だねぇ」


「......もう答えるのも疲れたな」

「君もだいぶここに馴染んできたねぇ〜」

「とりあえず部屋に戻っていいよー明日もあるからねぇ」


「学園生活、楽しんでね」

いやらしい笑みを浮かべている。

ドアを閉め、その場を後にした。

今日は疲れたし変なことはせず自分の部屋に戻ろう。


* * * * * *


部屋に戻ると、カナリヤードとイグナがおもちゃで遊んでいた。

「お兄ちゃーん!おかえり!」

満面の笑みを浮かべていた。

「......あぁ、イグナは何してたんだ?」


「あのね!でっかいクマさんに襲われたの!」

「........は?」


「でもね、お姉ちゃんが指でぱっちーんってやってどっかやっちゃったの!」

イグナは必死にカナリヤードの指パッチンの真似をしている。

なかなか鳴らないようだが。

「.......すまん、全く理解ができん」

「イグナ、少しお兄ちゃんとお話するから休憩していなさい」


「え〜、じゃあおねんねするねー」

すぐにすぅすぅ、と寝息を立てている。

寝るスピードは尋常じゃなく早いらしい。


寝たのを確認したのか、カナリヤードがイグナの方を見ながら口を開く。

「恐らく、ドクターが研究所の中にヒグマを放ちました」

「あの人の気まぐれでしょう」

「気まぐれでやることじゃないな......」

やはり、天城莱壽のことは理解できない。

いや、理解すらしたくない。そう思ったのであった。


「先ほどは無視しましたが、学園初日はどうでしたか?」

「......あぁ、正直言って」

無視という部分は無視して話を続ける。


「初めてここにきて興味が湧いた」


「......興味?」

カナリヤードが、ほんの少しだけ目を見開く。

「あなたが、ですか」


「そんな驚くことか?」


「えぇ」

「少なくとも、以前のあなたなら」

「“面倒”で終わらせていたでしょう」


面倒、か。確かにそうかもしれない。

だが、実際に行って見方や視点が変わること。それを実感した。

他人への興味。戦闘での視点。帝国の謎。

......最後に関してはできるだけ知りたくないかも。


「一つ、あなたに渡すものがあります」

「......ドクターからです」

黒い端末を差し出す。


「連絡用と、学園システムへの接続用です」

「それ以外は使えないようにプログラムされています」


「なくさないでくださいね」

「再発行が面倒なので」

そう言うと、カナリヤードは部屋の扉を閉めた。

今日はどうやらイグナのことは自分に任せるらしい。

いつもはイグナの手を取ってカナリヤードの部屋で過ごしているようだが。


黒いスマホを手に取る。初期設定から行うようだ。

端末の設定が終わり、学園のアプリを見る。

そこには能力測定や時間割及び行事の予定、クラスの掲示板、ニュースなどがある。

なかでも気になったのは「ランキング」というもの。


ランキングに表示されている生徒数は536人。1クラスあたり30人くらいいることになるか。

総合力を元に身体能力・頭脳・能力の強さ・エネルギー密度で計算されているようだ。

おまけに能技劇場(カーニバル)への参加回数やスタジアムでの戦闘履歴なんかもある。


1位である紫琶葡萄(しきべ ぶどう)を見ると、能力や細かいデータが数値化されている。

クラスの欄には1組、ではなくエリートと書かれている。

ワンの言う通りだ。


にしても、このランキングだけで自身の能力ほぼ全てが管理されているのか。

霧生知那(きりゅう ちな)がこだわる理由もわからなくはない。

自分は今日が初日というのもあり、当然だが名前は載っていない。


1位:紫琶葡萄、2位:霧生知那、3位:ソアヒート・プレッシュ、4位:ガルム・バイオロー......下にスクロールしていくと、順位別に生徒の情報が表示される。


ソアヒート・プレッシュ。

その名前を見た瞬間、

胸の奥が妙にざわついた。

横で寝ている少女を見る。


「......偶然、か?」

そう感じていると。

「ふぁぁぁ、あれ?お姉ちゃんいなくなってる!」

イグナが欠伸をしながら起き上がった。


「.......今日は自分と寝てほしいそうだ」

そう言いながら、スマホを机の上に置く。

「わーい!お兄ちゃんと!」

二人で一つのベッドを使い、そのまま眠りについたのだった。

今日も研究所では悲鳴が聞こえていた。

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