表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拉致問題  作者: ゆるうる
Case 2:能技劇場
PR
19/34

奈落

黒塊(こっかい)の高密度の青白いエネルギー。

手腕楹咤は、そのエネルギーの脈打つ鼓動を感じ取っていた。


(なら)

(上回ればいい)


意識を沈める。

エネルギーが集まる。

今までとは違う。

“使う”んじゃない。

“押し付ける”ように。


空間が軋む。エネルギーがより溢れ出す。

観客のざわめきが止まる。それは何か未知の物を見るように。

黒塊の動きが早くなり、自分に飛び込んでくる。


(今か)

咄嗟に銃の形を両手で作る。

黒塊が来るより早く。

より強く。意識して。


目を見開き、少し口角を上げる。

「——二丁拳銃、だ」

それを見ていた少女・イグナは息を呑む。


「バァァァンッ!」


ドゴオオオオオオン!!!


強力な爆撃が黒塊を覆い尽くし、燃え続ける。

手腕楹咤の能力は、完全に具現化された。


——ビリビリビリッ!

「いった.....」

両手で莫大なエネルギーを放出した影響か利き手である右手が痙攣する。


「グォォォォォォッ......!」

燃え続けながら、ゴン、ゴンと足音を立て、手腕楹咤に向かって歩いてくる。


「まだ、動けるのか」

一歩も動かず、黒塊がただただ目の前に来るまで待っている。

そして、目の前に来て攻撃を行おうとすると。

「悪いな。()()停止させないと終わらないらしい」

これ、と言って黒塊を指差す。


「ドンッ」

燃え続ける黒塊に、ドンッという声に合わせ左手でデコピンをした。


——バゴォォォン!

吹き飛ばされ、スタジアムのバリアに叩きつけられた。

「グォォッ......」

黒塊のエネルギーが消える。


観客席が静まり返る。

黒塊は崩れた。

だが——消えてはいない。

地面に沈んだ黒が、微かに脈動している。


誰も、すぐには声を出さない。

音だけが遅れて戻ってくる。


* * * * * *


静寂の中。

まず動いたのは、カナリヤードだった。


「……理解できません」

小さく呟く。


「再現不可能」

「予測外」

「分類不明」

その言葉は、彼女自身を混乱させていた。

「.......この人なら」

そこで言葉が止まる。

カナリヤード自身、続きを口にできなかった。


一方、観覧席。

天城莱壽はワインを回しながら笑う。

「いやぁ……いいねぇ」

「想定より“外”に行った、か」


バックリアーは目を細め、ニヤける。

「評価を更新します」

「想定より危険な存在のようですね、、、」


エルティーナは椅子の背に寄りかかり、バックリアーと同じ表情をした。

「……なるほどな」

「“凡族”って、そういう意味だったわけ」


そして。

白透看枸は、少し退屈そうに頬杖をついたまま。

「やっぱりね」

「えいくん、そういうのやると思ってた」


視線の先。

少女はまだ、地面に座り込んでいた。

手は震えている。

何が起きたのか、理解できていない。

ただひとつだけ。


少女は、手腕楹咤の目を見る。

その瞳は、何かを倒した人間の目じゃなかった。

もっと深い。

もっと暗い。

まるで——

どこか底のない場所を見つめているような。


『凡族ノォォォォォォ勝利ダァァァァァァッ!!!!!』

しばらくし、司会者であるシャーク・スキンの声がスタジアム全体に響き渡った。


「うおおおおおおおおお!」

「これで10万だああああ!」

「黒いバケモンに勝つのか、、」

「すげーよ!!!」

歓声が戻る。

熱狂が戻る。


だが手腕楹咤には、それが妙に遠く聞こえていた。

自分は今、何を越えてしまったのか。

黒塊の残骸が、微かに脈打つ。

まるで、奈落の底から呼ぶみたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ