11.ありふれた「コボルド」と「魔弓」と「敵襲」
ラーメンも食べ終わり、ボクたちと自衛隊さんは階段へと向かった。三角錐構造物の集落を抜けて白樺の森へ。踏み分けられた道を歩く。下階層への階段は道行くこと20分。森の中に聳え立つ三角錐構造物の中にあった。上半分が森の木々から頭を突き出すくらいの巨大さ。森の中で道に迷っても、木に登って天辺から見渡せばすぐ見つかる。ランドマークだ。構造物の周囲は木々が伐採され、そこそこ広い広場になっていた。いったん荷を降ろしてわずかに緩めていた各所のストラップを締め直す。装備が身体に吸いつく。リュックの中やポーチの中を整理する。空いたスペースには柔らかな物を詰めるなどして接触音が出ないように工夫した。敵性地域での移動中に音を立てるのは最大の愚行。シオンがミカンさんの面倒を見ている。少し時間がかかりそうだったので旗島陸曹長にちょっとしたお願いをしてみた。
「あの。旗島陸曹長さん。滅茶苦茶プライバシー侵害なんですが。もし国家機密とかじゃなかったら、みなさんのステータスを見せてもらったりできますか。協力するにあたって、みなさんの実力を把握しておいたほうが生存率があがると思うんですよね」
旗島陸曹長は一瞬の躊躇いもなくステータスパネルを開いた。サブパネルも全部開いて、ボクに向けて表示面を回した。横に立っていた日向1等陸曹と花斗1等陸曹も続く。
「それも想定してました。どうぞ」
ありがたく覗かせてもらう。お三人とも経験値に差はあれど全員がレベル78をマークしていた。旗島陸曹長と日向1等陸曹はありがちなパワー偏重傾向。ただ敏捷と精緻にもそこそこ振り分けてあるのが救いだ。知力と感覚が一桁台っていうのが残念。これだとエコーロケーションも魔法も使えない。それに比べて花斗1等陸曹は元アーチェリー金メダリスト。アーチェリーという武器の性質上、敏捷と精緻だけじゃなく知力と感覚にもちゃんとポイントを振っていた。さらにサブウインドウを見てびっくり。ダンジョンに入る前のパーソナルアビリティボーナスの値が超人の域に達してた。さすが特殊作戦群。地獄の訓練過程といわれ、もっとも過酷な訓練と試験を突破して初めて得られる『レンジャー資格』と『空挺基本降下過程』のふたつを保持していることが最低条件。そこからありとあらゆるとんでもない教育と訓練を重ね、超人レベルのベテラン自衛隊員でさえ70%以上が脱落するという日本で最難関の関門をクリアしなければならない。極限状況での高度な状況判断力、自律的行動能力や長期孤立状態での精神的安定性、さらにストレス・疲労・飢餓状態下での冷静な思考力まで求められる。さらに脳筋には無理な外国語習得能力も必要になる。英語は必須で朝鮮語・中国語の習得まで推奨。おまけに機械・電気・爆発物・戦傷医療等の技術的素養まで求められるらしい。
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名前:旗島 統吾
【獲得経験値:915740】
【ステータス覚値:0/78】
筋力:23 敏捷:19
知力: 6 精緻:14
生命:10 感覚: 6
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名前:日向 颯真
【獲得経験値:885740】
【ステータス覚値:0/78】
筋力:25 敏捷:17
知力: 4 精緻:16
生命:12 感覚: 4
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名前:花斗 結那
【獲得経験値:897740】
【ステータス覚値:0/78】
筋力: 8 敏捷:20
知力:10 精緻:20
生命: 8 感覚:12
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「ありがとうございます。驚きました。みなさん個人的な能力が凄すぎて、全部のパラメーターにプラスの補正がかかってますね。それが覚値の振りわけの偏りを補正してます。でももう少し知力と感覚に振ったほうが戦闘時に有利になるのでお勧めです。花斗さんの振り分けはメインウエポンがアーチェリーという点からの配分でしょう。かなりいい感じになってます。知力のサブパラメーターにある『空識』は空間認識能力で、これがあがると戦闘全体が客観的に認識できるようになります。『情報』は情報処理能力で、これがあがると思考速度が速まって敵がスローモーションに見えてきます。そして『観察』は観察力ですから敵の筋肉の微細な動きまで観察できて動きの予測に繋がります。『心象』はイメージ力で、これがあがると周囲の状況が具体的な画像イメージとして捉えられるようになります。そして処理するための情報の取得器官として『感覚』の『視覚』や『聴覚』をあげる必要もあります。それにより精度の高い行動が可能になります」
旗島陸曹長が感心した目でボクを見つめる。
「花斗1等陸曹が弓を使えない状況の近接戦闘においても撃破数トップなのはそのため‥‥ということか」
「見切りやフェイントの読み、背後の気配察知、壁越しの気配察知能力とかがあがります。暗視能力もあがりますから暗視ゴーグルも必要なくなります。さらに聴力とイメージ力があがればエコーロケーションが使えるようになります。これは音の振動で空間を感知する能力ですから、床や壁の向こうも透過したみたいに感知できます。罠や隠し部屋の発見が楽になるのでボクたちは目より耳を使って移動してます」
自衛隊の皆さんは全員が魔道具の暗視ゴーグルを持っていた。魔道具だけに性能は飛び抜けている。ただし暗視ゴーグルは視えるものが視えるだけ。隠蔽されたものですら感じ取れるエコーロケーションには敵わない。それに軽いとはいえ重さがあるから、首に負担がかかってじわじわ肩が凝るんだよね。
「なるほど。アドバイスありがたく参考にさせてもらいます」
自衛隊の皆さんが暗視ゴーグルを着ける。ミカンさんも準備完了して暗視ゴーグルのスイッチを入れながら立ちあがった。全員ダンジョン突入の準備が完了した。
「B班の方たちは先に降りたみたいですね。ボクたちも降りましょう」
ボクが先頭を切って階段に入る。巨大な螺旋階段構造物だ。1段の踏み面幅が60cm以上と広いから、1歩で次の段へ降りられない。リズムが狂い地味に疲れる。階段の横幅は4mほど。4人並んでも悠々だけど、左手の先は垂直に切れ落ちた絶壁になっていて、縁に手すりもない。向こうの壁までなにもない空間が4m。シオンが縁まで行って下を覗き込み「ひええーっ」って声を出してた。虚無の奈落だったようだ。右側はどっしりした壁だったから、全員1列になって壁際を歩いた。ミカンさんを挟んでシオンが続く。自衛隊さんたちはシオンと2段分の間隔を開けて続いた。凄い。さっきまでと歩き方が変わってる。摺り足というか着地が踵からじゃなく足裏全体で地面を踏む感じだ。ほとんど足音を立てない。敵地の建物侵入時にドタドタ盛大な足音立てて踏み込む特殊部隊はいないもんなあ。プロですね。ボクとシオンもほぼ無音歩行。ミカンさんの足音は完全に抑えきれていない。現在練習中ではある。階段を降りていく間、自衛隊さんの先陣は花斗1等陸曹だった。アーチェリーに弓をつがえた状態で上方を警戒しながら降りている。ボクとシオンだけなら競歩並みのスピードで移動してるけど、ミカンさんがいるので移動速度は少しだけ早足レベル。降りても降りても階段が続く。全員無言。ミカンさんが沈黙に耐えられなかったようだ。
「ミナトさん。あの‥‥。次の階層の魔物ってコボルドっていう魔物ですよね」
「そうですね。他にもトレント、グレムリン、カッターコウモリなんかが徘徊してますけど、圧倒的に遭遇頻度が多いのはコボルドみたいです」
「コボルドって犬みたいな顔して‥‥。強いんでしょうか?」
「いままで相手にしてきたゴブリンと比べたら強いです。知能も高いし。体格も違います。ゴブリンが小学生レベルの身長だとすると中学生レベルですかね。160cm前後。2足歩行の犬型魔物ですね。臭覚や聴覚が抜群によくて、人間パーティの接近を遙か手前で感知できちゃいます。で、知能も高いので待ち伏せ攻撃を仕掛けてきます。武器は弓と蛮刀。ゴブリンよりもっと集団で行動しますから、取り囲まれて弓矢の集中攻撃を受けると厄介です。でも、そもそもコボルドってドイツの伝承に出てくる『小人の妖精』がルーツで、もともとは犬顔じゃなかったんですよね。それが最古のテーブルトークRPGの『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の設定で『小柄で犬に似た頭部を持つ、無毛の人型生物』って設定が記載されてから、犬顔のイメージがついちゃったっていうか。この世界のダンジョンの創造者は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を参考にしてダンジョン創ったんじゃないかと。結構安易な創り方‥‥」
シオンがいつの間にかミカンさんを追い越して、ボクのお尻を蹴った。
「こら。ミナト。コミュ障出てるぞ」
「あう」
「ついでだから他のモンスターについても説明してよ」
そういい置いてシオンがミカンさんの後ろの位置に戻った。
「あー。うん。トレントは動く立木です。狩猟用スリングショット並みの弾速でドングリみたいな実を飛ばしてきます。それと地面に潜ませた根を槍のように突きあげて攻撃したりします。木立や植生に紛れてカモフラージュしてますけど、エコーロケーションでスキャンすれば見つけられます。カッターコウモリの羽は前縁がカミソリみたいに鋭くなってます。飛び回って狙いを定めると突っ込んできます。突撃時はかなり速いので要注意です。グレムリンは身長20cm程度の子鬼です。100匹以上の集団で人間を襲い、痺れ毒の塗られた針で刺してきます。まとわりつかれる前に倒したほうが無難です。魔法で広域掃討するのが吉ですね。えっと。他にも稀にですけどボルトスライムっていうのがプヨプヨしてますが、コイツがかなり危険です。ボルトスライムは核が帯電した電気ウナギ的なスライムです。中心核を一撃で潰さないと放電喰らいます。運が悪いとショックで心臓が止まります‥‥」
そこまで話してボクは足を止めた。ミカンさんが驚いた顔でつんのめるように止まる。ボクは振り返り「何ごと」って顔のミカンさんに手を添えてしゃがませた。その後でシオンが同じように膝を突き、後の花斗1等陸曹を見あげている。花斗1等陸曹はやや身体を開いたオープンスタンスでアーチェリーを引き絞っていた。狙いは真上。ボクですらようやく聞き取った羽ばたき音をしっかりと補足している。ミカンさんにはなにも見えていないだろう。階段周りの奈落空間。遥か上の壁から飛び立ったカッターコウモリが発する超音波が聞こえる。間を置いて別の羽音。シュフっという吐息のような弦の音とともに暗闇に矢が吸い込まれた。同時に上からトスッと胴体を貫かれた音が響く。立て続けに3本の矢が放たれた。ギッと1匹がひと声だけ発しただけで、3匹のカッターコウモリが落ちてくる。2匹は階段に、1匹だけ壁に当たって奈落の底に落ちていく。シオンが音を立てないエア拍手で褒め称える。ボクはハンマーで軽く壁を叩いてエコーロケーションに集中した。カッターコウモリは3匹だけだったようだ。2匹の死骸が昇華し2本の矢を残す。シオンがボクの前に出て矢を回収した。
「凄いっす。惚れちゃいそうです」
そんなことをいいながら矢を手渡していた。花斗1等陸曹はうっすら微笑んで頷いただけ。そこからはなにごともなく、階段が地面に着いた。幸いにも奈落に落ちて失われたと思った矢が階段の出口前に落ちていた。魔石も落ちていた。戦利品は謹んで自衛隊さんに譲る。階段から床面に足を着けると目の前に巨大なアーチ型の出口がぽっかりと口を開いていた。外は薄曇りほどの光量があるようだ。薄闇に慣れた目には充分なほどの光が差し込み、出入り口をぼんやり白く浮あがらせている。エコーロケーションで周囲を窺い、敵性生物やおかしな仕掛けがないかチェックした。異常なし。脚を忍ばせて外に出る。広大な洞窟空間が目の前に広がった。洞窟と呼んでいいのかわからないほど広い。東京ドーム10個分以上ありそうだ。赤茶けた砂利に覆われた荒野。人の身長より大きな巨石が見渡す限り転がっていた。遥か彼方に天井と地面を繋ぐ巨大な柱が聳え立つ。振り返ると、ボクたちが降りてきた階段もそんな巨大な柱の中をくり抜いて作られていた。
「真っ白で見えません」
後ろからミカンさんの声。
「暗視スコープが光量オーバーでブルーミング起こしてるんだね。補正機能はついてないのかな」
「あ。急に視えるようになりました。補正されたみたい」
「この階層は明るいから、ゴーグル外していいですよー」
出口から出てきたシオンが声を掛けた。後に続く自衛隊さんたちもゴーグルを外し始める。
「荒れ果ててますね」
ミカンさんが景色を見渡してそういう。第6層も広大だった。
「こんな明かりでも植物は根づこうと頑張るのねー」
シオンがところどころに散在する灌木や羊歯っぽい茂みに目をつける。この階層はあちこちで希少鉱石が採掘できるため、人の出入りが多い。こんな荒れ地でも2年に渡って人が踏みしめた網目のような道ができている。ボクは脳内地図を照合し第7層への階段を目指す道を進んだ。左右奥から鉱石を採掘するツルハシの音が聞こえてきたけど、人影は見えない。途中踏み分け道が不自然に迂回している場所があった。立ち止まり地面に耳をつけてハンマー反響音を聞いた。
「どうしたんですか?」
ミカンさんが声を掛けてきた。ミカンさんの感覚ステータスは魔装備の腕輪で+5されてるし、覚値も+7振り分けている。もともとの音感素養も相まって微音感知が17、音紋分析が16に達していた。ボクはミカンさんに場所を譲り、耳を地面につけて聞いてもらった。ちょっと離れて地面をハンマーで叩く。ミカンさんの知力の心象ステータスは18。充分イメージが視えるはず。
「あ。地面に‥‥これって、穴かしら。‥‥穴がありますね。穴の底に尖ったモノ。まさか。落とし穴ですか?」
「そうです。単純な落とし穴ですけど。落ちたら大怪我じゃ済まないかも」
ボクたちの周りに自衛隊さんが輪を作っていた。
「その方法って自分たちでもできるものなのか?」
そう聞いてきたのは紅2点のうちのひとり姫宮瑠香2等陸曹だった。彼女の主武器もアーチェリー。花斗1等陸曹と同じだから覚値の振り分けも似ているだろう。
「知力と感覚にポイントを振っていればできます。パーソナルアビリティボーナスっていう各項目に付与されるダンジョンに入る前の修練や個人的能力などのボーナスポイントにもよりますけど。もしよければですけど。ステータスを閲覧させてもらってもいいでしょうか」
「隊長たちも見せてたし。構わないよ。ステータスオープン」
ステータスパネルが開く。
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名前:姫宮 瑠香
【獲得経験値:812740】
【ステータス覚値:0/76】
筋力: 7 敏捷:19
知力:10 精緻:20
生命: 8 感覚:12
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サブ項目を見るとパーソナルアビリティボーナスが軒並み10オーバー。20に達している項目まである。この人たちは超人か。自衛隊でレンジャー資格を持っていると聞くとスーパースターを見る目で見られる。ところが、そのレンジャー資格を持っていることが最低条件という、とんでもなく過酷な選別をクリアしなくちゃならないのが特殊作戦群という秘密部隊だ。全員超人レベルなのはあたり前なんだろう。姫宮2等陸曹の心象ポイントは26。微音感知ポイントも26。音紋解析ポイントは22。なんの問題もなく聴音できるレベルだ。
「耳あててみてください。最初は目をつぶると感じやすいかも」
姫宮2等陸曹が四つん這いになった。引き締まったいいお尻している。地面をハンマーで叩くと姫宮2等陸曹がピクリと反応した。
「こ。こんなに鮮やかに視えるのか!」
「隊長さんたちもそこまで鮮やかじゃないでしょうけど、罠があること程度は充分感知できるはずです。エコーロケーションも使えるはず。数値的にはもうちょっと感覚や知力をあげたほうがクリアになりますけど。進行方向になにか違和感を感じる程度には使えます。ちょっとだけコツがあるんで道々教えますね。そしたら暗視ゴーグルもいらなくなります」
道中、エコーロケーションで使う舌打ち音を練習しながら歩いているとミカンさんが真っ先に気がついた。続いて花斗1等陸曹。姫宮2等陸曹は列順のせいで遅れた。
「あの。右手。灌木のあるあたりでなにか質感が違うみたいな」
ミカンさんを受けて花斗1等陸曹がつぶやく。
「確かに。周囲となにか違う」
「ミカンさん、花斗さんグッジョブー。あれがトレントってやつじゃない。なにか飛ばしてくるんじゃなかった?」
シオンが手を叩く真似をしていう。音は出さない。ご指名なのでここぞと知識を披露したけど、自衛隊さんはプロ中のプロ。釈迦に説法だった。恥ずかしい。
「ドングリの実のような塊を飛ばしてくるらしいんだけど。動画とかだと正確な射程距離がわからないんだよね。有効射程って拳銃でも弓矢でもだいたい50mなんだけどさ。けど、どういう仕組で実を撃ち出してるのかわからないから確定できないのよね。発射器官にライフル機構が組み込まれてたら1000mだってあり得るからね。あ。ライフル機構っていうのは銃身の中に螺旋の溝を掘ることで弾に回転を与えて、回転する独楽がブレないで真っ直ぐ立つように弾丸をブレないようにして真っ直ぐ飛ばす仕組みね。あの灌木までざっと120m。この距離でドングリ弾が飛んでこないところをみると、ライフル機構はないみたい。やっぱ射程は100mから50mって感じかな。えと。ミカンさん。腕のシールド起動してください。今後のために射程距離を確かめてみましょう」
ボクがいうとミカンさんだけは真剣な顔でうなずいてくれた。素直なミカンさんがいてくれて助かる。プンっと青白いシールドが正面に展開される。直径3mはあって下は地面に食い込む湾曲したシールドが張られる。ふわっと松脂のような臭いが鼻を突いた。後ろを見ると花斗1等陸曹と姫宮2等陸曹が矢の先端になにかジェル状のものをまぶしていた。
「射程距離がわかったら攻撃しても大丈夫かな?」
花斗1等陸曹が聞いてきた。ボクはうなずく。ミカンさんを先頭にゆっくりと灌木の茂みに近づいていった。約60mの距離でドングリ弾がシールドに砕け散った。ミカンさんが首をすくめる。
「射程距離60メートルですね。攻撃してくださって結構です」
カシュッと擦過音。日向1等陸曹が100円ライターで2人分の矢の先端に火を点けてた。ジェルが燃えあがる。まるで舞のように優雅な動きで弓が絞られ‥‥タンっと発射された。立ち並ぶ灌木の左から3本目。それがトレント本体だ。音でスキャンすると灌木に比べて柔らかくてスカスカだ。火矢が2本も飛んできているのにトレントは動かない。地面の振動で周囲を感知しているからだろう。ふたりの放った矢はほとんど落差なく飛翔し、トレントの胴体に吸い込まれるように命中した。瞬く間にトレントが燃えあがる。のたうって触手みたいな枝を振り回した。地面に潜ませていた根の杭が突き出す。声なく悶えて茂みから転がり出た。よく乾燥したいい薪なくらいガッツリと燃えてる。途中で命が尽きて昇華した。
「お見事ですー。かっこいいー」
シオンのミーハーな絶賛。大きめの魔石は回収できたけど、火矢は焦げて回収不能だった。階段途中のカッターコウモリ3匹とトレント1体で経験値900と450。合計1350。微々たるものだけど行きずりの遭遇で覚値を稼ごうなんて思っていない。トレントの隠れていた茂みは焦げたけど燃あがりはせず、無限水筒の水でしっかり消火しておいた。そこから5分も進まないうちに大量の経験値を稼ぐチャンスが訪れる。足を止め地面に耳をつけて聴音しているボクらに旗島陸曹長が声を掛けてきた。
「どうしましたか。また罠ですか?」
ほぼ同時にミカンさんがつぶやいた。
「あ。なにか。わかります。この先にとても広い空洞がある」
花斗1等陸曹が地面に膝をつき耳を当てた。サバイバルナイフを取り出し柄の部分で地面を叩く。
「先の緑地の地下です。確かに。巨大で大きさが掴めない。底で動くものがあります」
総括してシオンがまとめる。
「花斗さん。もうエコーロケーション使いこなせてる。凄ーい。で。旗島さんのいうように、罠といえば罠ですネ。ウチらはモンスターハウスって呼んでます。この階層だと地中にあるのね。地下の空洞にコボルドの集落があると思われー。集落っていえるのかな。ゴブリンもそうだけど女子どもや乳児がいないんですよねー。戦士クラスしかいないから集落っていうより前哨キャンプっていうべきかな。数にして100匹以上いますねー」
ボクは高さ3mほどの灌木が3本集まった茂みの中に足を踏み入れる。灌木の前に茂みのない2mほどの正方形の砂利面があった。その前に座ってノックし、鍵穴を探る。ゴロゴロと転がっている大きめの礫をどかすと鍵穴が現れた。
「この扉を開けると、2m下に壁に沿って設けられた階段の踊り場があるよ。そこにそっと降りて、そっからスピード勝負。地面は15m下。ここは密閉空間じゃないので火で行くね」
ボクが地面にカモフラージュされたドアのロックを外しながらいう。シオンもミカンさんも頷いたけど、旗島陸曹長が慌てて制止してきた。
「まさか、君たちだけで行く気か。無理があるだろう。我々が先に行く」
「それだと奇襲になりません。前に人がいたら広域魔法も使えませんから、100匹全部を相手にしなくちゃいけなくなります」
「魔法。魔法か。ううむ。地上がそれで大騒ぎになっていることは聞いたが‥‥」
この自衛隊さんたちずっとダンジョンに潜ってて、ボクたちがアップした動画を観てないだろう。魔法っていわれてすぐ頷けないのもしかたないかも。自衛隊さんにもメンツってものがあるだろうし、妥協することにした。
「じゃあ。ボクたちが先制で魔法をぶっ放しながら突っ込みますから、みなさんは援護であとから降りてきてください」
自信満々なボクらを見て旗島陸曹長が折れてくれる。プライドばかりで我を通すわからず屋タイプじゃないのが助かる。
「わかった。だがちょっとだけ準備させてくれ」
そういって旗島陸曹長は後を振り返り、全周を警戒している部下たちに命令を下した。
「ファストロープ降下だ。エキストラクションロープを2本降ろす。花斗1等陸曹と日向1等陸曹、続いて自分と姫宮2等陸曹、柾木2等陸曹と和楽2等陸曹はこの降下点を確保」
了解との声で柾木2等陸曹と和楽2等陸曹のふたりが灌木にロープを結びつけ始めた。普通のロープとは違い、ずいぶん太くて真っ黒に塗られている。
「あのー。ファストロープ降下ってなんですの?」
シオンが臆面もなく姫宮2等陸曹に聞いていた。クールビューティの花斗1等陸曹より庶民派可愛い系の姫宮2等陸曹の方が話しやすいみたいだ。
「いま柾木たちが結索しているのがエキストラクションロープっていうの。普通より太く、編み込みになってて引っ掛かりを大きくしたロープ。それを手で握り、足で挟んでブレーキをかけつつ装具も命綱もなしに降下することをファストロープ降下っていうの。降下したあとにハーネスなんかの装具を外す手間もないし音も立てない」
「なんか忍者みたいだ。かっこいいー」
自衛隊さんを交えて簡単なタイミングの打ち合わせをした。全員がなんの問題もなく了解する。ミカンさんだけ緊張で顔色が白っぽくなってた。打ち合わせに従い隠し扉の周りに集まる。隠しドアは観音開きになっていた。ボクとシオンが並んで膝をつき、長年の腐れ縁で見ずとも息遣いだけでわかる同調で同時に扉を開く。しっかり開ききって横の下生えに扉を寝かせた。無音。内と外の僅かな気圧差で緩い空気の吹き出しがあっただけ。下のコボルドの群れが察知した様子はない。流体のようにシオンが穴へ飛び込んだ。2m下の踊り場へ音もなく降り立つ。攻殻機動隊風3点着地ってやつだ。その横にボクが降り立ち、続いてミカンさんに手を貸して降りてもらう。ミカンさんの足が地面に着いたと同時に、自衛隊さんの先鋒ふたりが重りのついたロープ束を抱えて背後の壁際に降り立つ。踊り場は満員状態。ボクは喉奥で声にならない声による呪文を唱えた。
「瞋恚の焔。顛動する赤光。灼熱の軋轢。焦熱の凝縮たる紅蓮の種子よ、地にて咲き誇れ」
最後の1行を圧縮と爆散のイメージに変えると火魔法が強烈な火炎魔法になる。ボクが差し伸べた手から湧き出たファイアーボールが、下でうろつくコボルトの群れの中心へ飛んだ。ふわっと風が起きて横にいたシオンの姿が消えた。残像が残るほどのスピードで階段を駆け降りていく。同時にミカンさんが腕のシールド発生魔導器を作動させた。後に控えていた花斗1等陸曹と日向1等陸曹がロープを投げ降ろす。ロープの揺れも収まらないうちに、ふたりは空中に身を投げだしていた。力を抜いて投げたゴムボールほどの速度で火球が飛んでいく。秒速20mほど。着弾まであと1秒。その間にボクは別の呪文を唱え始めた。
「自在なる天の羽毛。軛を絶つ。和らぎと流転‥‥」
呪文を唱え終える前にボクはミカンさんの背に腕を回しベルトを掴んで身体を密着させる。そのまま前方に飛び出した。ふたりの身体が9.8m毎秒毎秒の加速度で落ちていく。地面に激突するまで1.75秒。その直前に呪文を唱え終わる。
「‥‥揺蕩ふ舞い。波打つ束縛から解き放て」
下から風が吹きあがるような感覚。エアクッションに乗ったように落下速度が落ちる。地面まで1cmを残して完全に身体が静止した。呪文の効果が霧消すると同時にストンと身体が落ちる。そこで前方、うじゃうじゃ集まってるコボルドの群れのド真ん中でハリウッド映画並みの大火球が炸裂した。中心部にいたコボルドは身体を分断され炭化するほど黒焦げになって噴き飛ぶ。その周囲の個体は一瞬で身体より脳がウエルダンになって絶命した。さらに周辺部の数十匹が半身に大火傷を負う。もう1発の火炎魔法を撃ち出し、群れの右手前に着弾させた。ミカンさんも火魔法で1匹倒す。カン。カン。カン。横から花斗1等陸曹の矢が放たれた。右手前で生き残ったコボルドが、次々に頭を射抜かれていく。シオンが群れの左側に突っ込んだ。左上からも矢の発射音。階段途中の有利なポジションから姫宮2等陸曹が射掛けている。旗島陸曹長が横について、ようやく始まったコボルドの弓による反撃を叩き落としていく。ミカンさんのシールドにも数本の矢が当たった。
「ミカンさん。弓のおふたりをよろしく」
ボクは背中の『霧雨』を抜き放ち、魔力を通した。ミカンさんが火魔法の攻撃を止め、魔力をフルに注ぎ込んでシールドを最大範囲で展開する。直径3mにまで拡がったシールド面。その陰に花斗1等陸曹が入る。遅れて階段をくだり、最後は飛び降りた姫宮2等陸曹が駆け込んだ。姫宮2等陸曹のカバーを外れた旗島陸曹長がシオンを追うように駆け出す。右手では日向1等陸曹が剣を抜いて突撃を開始した。左手前のコボルド12匹は瞬き数回でシオンに切り倒されている。動きが半端ない。さすがは元女バスのキャプテン。接近混戦においてはステータスの数値以上の動きをする。左正面のコボルド群は全滅したけど奥にまだ12匹残っていた。その集団とは別にシオンを側面から仕留めようと回り込みつつあった最左翼のコボルド群が8匹。そこへ旗島陸曹長が突っ込む。豪快な斬撃。コボルドの斬り飛ばされたパーツが宙に舞う。
日向1等陸曹は右翼のコボルド群30匹を牽制してボクの側面を守ってくれた。足止めを食らった右翼のコボルド群に連続して花斗1等陸曹の矢が突き立っていく。コボルド語の喚き声や吠え声が錯綜して、コボルドの弓兵15匹の狙いがミカンさんのシールドに向けられた。コボルドの弓は粗削りで威力も弱い。ボクとシオンに同行することで急速に獲得した経験値に加えて、魔道具の腕輪で補強されたミカンさんの魔力は19ポイントにもなっている。花斗さんの放つ矢の半分にも満たない威力の矢など、あと100発受けても大丈夫だろう。弓を捨て蛮刀に持ち替えた残りの15匹が日向1等陸曹を狙って押し寄せる。
「こっちは任せろ」
日向1等陸曹が不敵な笑みでコボルド集団に突っ込んでいった。コボルドとは何度も戦闘し、その力量も弱点も熟知しているそうだ。任せても大丈夫だろう。ボクは中央のコボルド群に集中する。コボルド集団の中央はボクの火炎魔法で全滅していた。ボクに向かってくる生き残りはわずか6匹。ボクの正面左寄りに4匹のコボルドが1列になって突撃してくる。さらに右寄りから2秒遅れて2匹のコボルドが向かってくる。先に相手すべきは左寄りの4匹。いちばん奥の1匹が弓をつがえようとしていたので半歩分、30cmほど横にずれる。これで前を走る仲間が邪魔して弓コボルドがボクへの射線を取れなくなった。先頭の1匹と接触する直前、ボクは左手を後ろ手に回し背負った魔剣『霧雨』の柄尻を握る。押しあげて柄を肩から前に傾け、右手を添えて抜刀した。抜いた勢いのまま袈裟懸けに斬りおろす。
最初の1匹でもたついたら取り囲まれてしまうので1撃必殺を狙う。あえて半分の速度で刀を振った。コボルトにはそれでも目に見えないほどの剣速だったろう。反射的に剣で受けようと横に持ちあげ足を止める。受けの体制を取らせるための緩め振りだったわけで。騙したみたいで申し訳ないんだけど、魔剣なんだよね。魔力は抜刀と同時に通してある。鋳鉄だろうが鋼だろうが魔剣にとっては薄紙と同じ。真っぷたつになった刃がふわっと浮き、肩口から入った刃がコボルドの胸を上下に斬り分けた。コボルドの上体がゆっくり回転しながらずれていく。まだ斬られたことを認識してない表情をしていた。横を通り過ぎる瞬間。かろうじて立っているだけのコボルドの下半身を肘で軽く押す。上半身とのズレが大きくなった。切断された心臓から噴き出す血を、続く2匹目の目潰しにする。目には入らなかったけど、大量の血を浴びせて狼狽させることには成功した。手首を返して2匹目を斬りあげる。
2匹目のコボルドがまだ自分の死に気づかず、ふらふら倒れようとしている横を抜けた。3匹目はまだ2歩先。そっちより速く、右寄りから突っ込んできていた1匹が蛮刀を振りおろす。振り降ろされた蛮刀を身体を開くだけでかわし、伸び切った腕を手首から斬り飛ばした。ステップを踏んで体を入れ替え、腕を失くしたコボルドの身体を肩で押す。ボク程度の体重でもコボルドより重いから、押された腕なしコボルドが駆けつけた3匹目に衝突した。横薙ぎに『霧雨』を振る。コボルドの首がふたつ放物線を描いた。腰を低くし、2匹のコボルドの体を盾にして弓の射線から逃れ続ける。右手を自由にして後腰に取りつけてあるサバイバルナイフを抜いた。後腰のナイフは魔剣じゃない通常品。抜いた勢いで1歩踏み出し、アンダースローで投げつける。弓コボルドが嘘だろって顔で喉に突き刺さったサバイバルナイフを見つめた。そいつが倒れるのと、首を飛ばされてもつれていた2体が崩折れるのが一緒だった。右手から来ていた最後の1匹はボクに襲いかかろうとした途端、脳を弓矢で貫かれて顔から地面に突っ込んだ。周囲に生き残りがいないことを瞬間で確認してから振り向くと、姫宮2等陸曹がサムズアップしてくれてた。
ボクが火炎魔法で47匹。5匹を斬殺で合計52匹討伐。旗島陸曹長の戦果はほとんどシオンが倒しちゃってたので、わずか10匹。ミカンさんが火魔法で3匹討伐。右にいて矢を射掛けていた15匹は花斗1等陸曹と姫宮2等陸曹の反撃で全滅。ふたりはそれ以外に14匹を倒していた。日向1等陸曹は腕に浅い傷を負いながら15匹討伐。で、突撃爆走娘シオンは左に集まっていた40匹のコボルドをすべて1撃でで真っぷたつに屠った。そして最後の最後。討ち取られたコボルドが赤い霧となって昇華していく中、いちばん奥まった位置にいたひと回り大きな個体の前にシオンが到達した。自衛隊さんが加勢したそうな顔をしていたけれど、旗島陸曹長のハンドサインで見守り体制に入る。シオンと大型コボルドは静かに対峙した。
先に仕掛けたのはコボルトだった。半歩踏み込み、横殴りに弓で払う。姿勢を低くしてかわしたシオン。けれど弓はフェイントだった。コボルドは左手に握り身体の後に隠していた蛮刀を真上から振りおろす。なかなかの策士だ。知能も高そう。けどシオンも百戦錬磨。ぜんぜん動いて見えないのにその刃は大きく斜めに逸れ、シオンの左手の地面にざっくりとめり込んだ。コボルドが不思議そうに足元を見る。踏み込んだ右脚の脛から下が横に転がり、血をしぶかせる斬り口を地面に突いていた。シオンは避けたのではなく、相手の片肢を斬り飛ばしてバランスを崩させたのだ。涎と唸りを噴き散らしながらコボルドは地面から刀を引き抜く。不自由な脚を支点にしてかろうじてシオンに向き直った。傷口で回転。ぐわあ。見てるだけで痛そう。コボルドの必死の抵抗も虚しく。あまりに遅すぎた。コボルドが最期の視界に捉えたのは、振りおろされる刃の煌めきだったろう。唐竹割りに斬り割られたコボルドが右と左に倒れ伏す。
拾い集めた5カラット魔石は149個あった。シオンが最後に倒したコボルドのリーダー格は8カラット魔石を残す。経験値はコボルド1体が400だという。149匹を掛けると59600ポイント。その前に階段で倒したカッターコウモリ3匹分とトレント1匹分の1350を加えて60950ポイント。ステータスを開いて確認すると61550ポイント増えていたから、リーダー格は600ポイントなのだろうと見当がつく。その他ドロップ・キーが4本手に入った。全部で8本も所持。モンスターハウス開け放題だ。
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名前:ミナト
【獲得経験値:123600】
【ステータス覚値:0/40】
筋力:5 敏捷:8
知力:12 精緻:6
生命:4 感覚:5
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名前:ミナト
【獲得経験値:185150】
【ステータス覚値:0/47】
筋力:6 敏捷:9
知力:13 精緻:8
生命:5 感覚:6
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名前:シオン
【獲得経験値:123600】
【ステータス覚値:0/40】
筋力:8 敏捷:11
知力:5 精緻:8
生命:2 感覚:6
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▼
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名前:シオン
【獲得経験値:185150】
【ステータス覚値:0/47】
筋力:8 敏捷:11
知力:7 精緻:10
生命:3 感覚:8
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名前:ミカン
【獲得経験値:123320】
【ステータス覚値:0/40】
筋力:4 敏捷:8
知力:9 精緻:8
生命:4 感覚:7
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名前:ミカン
【獲得経験値:184870】
【ステータス覚値:0/47】
筋力:5 敏捷:9
知力:11 精緻:9
生命:5 感覚:8
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さすがレベル6のモンスターハウス。経験値約60000ポイント増はおいしい。レベル40から一気にジャンプアップしてレベル47に。ボクたち全員が7ポイントもゲットした。ボクは6ステータスに1ポイントずつ割り振り、ちょっと低めだった精緻に残り1ポイントを追加する。シオンは今後の魔法使用に備えて知力を2あげ、精緻と感覚にも2ポイント振って低すぎた生命に1ポイント充ててた。ミカンさんはボクに習って全体を1ポイントずつ底あげし知力に追加してる。
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名前:旗島 統吾
【獲得経験値:977290】
【ステータス覚値:0/80】
筋力:23 敏捷:19
知力: 7 精緻:14
生命:10 感覚: 7
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名前:日向 颯真
【獲得経験値:947290】
【ステータス覚値:0/79】
筋力:25 敏捷:17
知力: 4 精緻:16
生命:12 感覚: 5
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名前:花斗 結那
【獲得経験値:959290】
【ステータス覚値:0/79】
筋力: 8 敏捷:20
知力:11 精緻:20
生命: 8 感覚:12
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名前:姫宮 瑠香
【獲得経験値:874290】
【ステータス覚値:0/77】
筋力: 7 敏捷:19
知力:11 精緻:20
生命: 8 感覚:12
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名前:柾木 理人
【獲得経験値:875790】
【ステータス覚値:0/77】
筋力:20 敏捷:16
知力: 9 精緻:12
生命:10 感覚:10
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名前:和楽 利哉
【獲得経験値:872830】
【ステータス覚値:0/77】
筋力:16 敏捷:12
知力:11 精緻:10
生命:16 感覚:12
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自衛隊さんたちは全員の覚値が1ポイント増えていた。旗島陸曹長はレベルアップ直前の経験値だったため1レベル飛ばして2レベルアップした。そのため覚値もひとりだけ2ポイント獲得する。みなさんボクのお勧めに従って知力や感覚にポイントを振った。全員が一度にではなくふた班に分かれて矢の回収や装備の手入れを行う。この世界では飛び散った血は本体の昇華とともに消えたりしないため、血糊の拭き取りや研ぎが必要になる。ボクは魔剣なので血糊の始末も研ぎも必要ない。なので怪我した‥‥といっても擦り傷引っかき傷といったバンドエイドレベルの傷がもっぱらだったけど‥‥人の傷にEグレードポーションを数滴垂らして回った。全員のポイント振り分けや装備点検、水分補給が終わる。シオンひとり乾燥肉を貪っていた。ではいよいよお宝ゲットタイムだ。コボルド・リーダーが座っていた岩の奥に扉があった。扉に触れる前に岩壁に耳を当て音を聞く。
「解錠にともなって発動する罠はないみたいですね」
ボクは身体で隠すようにドアを解錠した。横からぬっとシオンの顔が伸び出す。ろくろっ首かと思った。
「わお。おったから〜おったから〜♪」
「いままでの宝箱よりなにか大きい感じがしますね」
ミカンさんの声までする。危ないから離れてっていったのに。危なくはないけどフェムトマシンで解錠してるの見られたらいろいろ面倒でしょ。
「大きいのはいいことなのか、罠の仕掛けが複雑になってるのか‥‥」
つぶやきながら部屋に足を踏み入れた。ドアの構造を音波透視したときに奥の床の構造も視えた。圧力感知などの仕掛けはない。四角く壁と天井と床が光って影のない部屋。部屋の真ん中で床から伸びだした支柱の上に宝箱が鎮座していた。床に耳を当て金槌で叩く。音波解析で明瞭な透視画像が得られた。中に入っているのは50cmほどの湾曲した棒状の物体。そしてその周囲に複雑な短針発射機構が絡み合うように散りばめられていた。鍵の機構も複雑化している。解錠の難易度が数段あがっていた。ひとつでもミスを犯せば100本近い針が全周に発射され、解錠者をハリネズミにしてしまう。
「解錠できないこともないけど面倒だね。まだ4本残ってるから宝箱キーを使おう」
宝箱に入っていたのは透視で視た通りの湾曲棒。中心がやや細くなっていて握りになっているのだろう。全体に装飾華美なほどの魔法文様が彫り込まれていた。
「なんじゃこれ。健康器具かにゃ」
シオンが真ん中の握りを握って棒を振った。ミカンさんが乗っかる。
「ブルブル揺れるフィットネス器具ありましたね」
「違うだろ」
ボクが棒をひったくり、軽く魔力を流してみた。ブンッとため息みたいな音とともに棒の両端から魔力でできたアーチェリーのリムにあたる部分が伸び出す。物質なのか非物質なのかわからないけど触ろうとすると反発を受けた。
「弓だ、これ。『魔弓』ってやつだね」
伸び出したリム部分が伸び切ると、その先端と先端を結ぶぼんやり光る糸が見える。
「弦まで魔力製か。これで普通の矢が撃てるのかな?」
そういってなにげに弦に指を添えたとたん、微発光する幻じみた矢が現れる。自衛隊さんたちも部屋に入ってきていて興味津々で見ていた。
「上下対象なところはアーチェリー。でもスタビライザーもサイトもないのは騎馬民族の古式弓みたいな」
姫宮2等陸曹がつぶやく。
「試し撃ちします。みなさん部屋を出て」
ぞろぞろ部屋を出て巨大ドーム空間に出る。まずは手近な壁に向けて威力を確かめようとする。でもファイヤーボール10個分の魔力を詰め込もうとしても1個分しか入ってくれない。撃ってみた。光の矢というより1本のビームに見える。壁に吸い込まれた。当たったところに直径2cmほどの穴が開いている。そばに行って覗き込んでみた。奥行きが見えない。姫宮さんから矢を1本借りて差し込んでみる。矢の末端、矢筈と呼ばれる部分まで入れても穴の底には届かなかった。
「とんでもない貫通力だな。岩壁に80cm以上も」
ボクはちょっと考えて『魔弓』を花斗1等陸曹に差し出した。
「これはボクらが持つより自衛隊さんが持つほうがいいと思います」
遠慮するひと幕があったけど弓の技量はボクらより上。謹んで受け取ってもらった。
「姫宮2等陸曹が使いたまえ。自分はアーチェリーの方が馴染む」
そういって花斗1等陸曹が姫宮2等陸曹に『魔弓』を渡す。ボクは姫宮2等陸曹に声を掛けた。
「飛距離を測ってもらえませんか」
姫宮2等陸曹が了解していちばん距離のある方向に構える。弓のリムが伸び出し、魔法の弦が張られる。指を添えると矢が現れた。引き絞って撃ち出す。
「え」
「え」
姫宮2等陸曹だけじゃなく花斗1等陸曹も声をあげる。光の矢は残像を残し1直線に飛んだ。対面の壁まで200m。矢は反対側の岩壁に吸い込まれて消えた。ふたりが驚いたのは飛距離じゃなく、その軌道。
「直線だった‥‥」
「魔法の矢だから重力の影響を受けないってことかしら。慣れるまで狙いが難しいわね」
全員で階段を登る。天井の穴から柾木2等陸曹が顔を出していた。先に着いた自衛隊員がひとりずつ、柾木2等陸曹の伸ばした手を握り身軽に穴からあがっていく。ミカンさんがちょっとバタつきながら引きあげてもらい、シオンはちょっとはにかみながら柾木2等陸曹の手を握る。オマエはラウリ一途だったんじゃないのかよ。最後にボクの番。手袋した手をズボンで拭いて手を握る。引きあげてもらうまでもなく脚力で跳びあがった。穴から出て自衛隊さんがロープを回収し、隠し扉を閉める。立ちあがったとき、なにか‥‥音にならない音を聴いたような気が。風切音。鈍い音。立ちあがりかけた柾木2等陸曹が、重い呻きをあげて吹き飛ばされた。ボディアーマーに穴。出血している。
「敵襲!」
そのひと言で全員が反応した。
to be continued
この物語はフィクションです。そもそも時間線も違えばマルチバースにおいて宇宙そのものが違う世界です。そのため登場する人物・団体・組織・国家・名称などは実在のものとはぜんぜんまったくこれっぽっちも関係ありません。
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イラストはChatGPTで生成しています。




