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15.雲海と賭け

 歩いて歩いて歩いたあと。

 バリアから出たから、イヴとヌーンに乗って山を数個登り降りして休んでを繰り返し、とうとう別の風景が見えてきた。


「な、なんでこんなに時間かかったの?」

「西の住処は平坦だったから時間かかんなかったが、ここはアップダウンが激しいからな。」

「途中休んでるのに疲れが取れないにゃ……」

「老化ってやつー?」

「ぶちのめすにゃ??」


 ストレスのせいかわからないけど、最近アイとマル君がずっとバチバチしてる。

 喧嘩ふっかけてそれを買ってやり合いだす。

 雰囲気が悪いわけではないけど戦闘中にやりだすのはやめてほしい。切実に。


「こら喧嘩すんな。お、あそこの山で一区切りつきそうだぞ。」


 切り裂くような風が音を立てる。

 それが一層大きく高く鳴った次の時には何かが違った。

 音がなくなり、空気の抵抗が減った。

 緩やかに山頂に降り立ったイヴとヌーンにお礼を言ってクローズする。

 降り立った衝撃で起きていた土埃を風がさらっていく。

 そして目に入ったのは、想像を絶するものだった。


「こ、これはすごい……」

「わァ…にゃ…」

「泣いちゃった!!」

「ち⚪︎かわ構文やめてー?だいぶ古いよー」

「ぶちのめすにゃ??」

「さ っ き も 見 た ぜ」

「なんでこの状況で漫才するの??」


 そういう人たちだからか。

 まあいい、見える景色は壮観のひと言だった。

 それは雲海だった。

 飛行機の窓から見る景色はこんな感じなのかもしれない。

 曇りや雨雲のような灰色は全くない、純白の雲が眼下を支配している。

 真上に広がる突き抜けるような青空とのコントラストで美しさが倍増していた。

 途中で大きく空に登るような雲があるせいでどこまで続いているかは全くわからないが、とにかく果てしない。

 私たちが立つ山は山脈のように緩やかなカーブを描いて延々と繋がっている。

 きっとこの山脈でこの雲海が囲まれているんだろう。

 そして、もっとも特徴的なのはここだ。

 雲の中にポツポツと浮かぶ浮島。

 いや、本当に浮島なのかはわからないが。

 雲の中から顔を出す平面状で灰色の地形。

 近いものでもすごい小さく見える。

 じゃあ一番遠くのものはどのくらい小さいんだろう。

 空に登る雲に埋もれるようなものが見える。

 竜の目でもぼんやりとしか見えないそれは少し細長く感じた。

 明らかに他のものより大きい。

 だって他のものはそれくらい遠いともう見えないから。


「…………アイ、あの一番奥の細長いの見える?」

「んー、ぼんやりとー?」

「無能鳥にゃ?」

「黙れー??マルトじゃ見えさえしないよねー?」

「うんうんそうにゃねーすごいにゃー」

「めっちゃ棒読みで草」

「なんというかねー周りの島はまあまあよく見えるからー、そこだけ視界が邪魔されてるみたいなー」

「なるほど…………ここらへんに聖女様がいるって狼の勘が言ってるぜ!」

「頼りになる?それ、」

「喧嘩売ってんのか?じゃあ賭けようぜ!勝った方がいうこと聞くってやつで」

「えー?私不利では?」

「お?降りんのか?」

「受けて立とうじゃないか狼が竜に勝てると思うな」

「え……その賭け本当に大丈夫にゃ?」

「大丈夫大丈夫。東の住処は広いからそんなピンポイントでこんなとこにいるわけないでしょ」

「それはー……フラグだねー」

「気にしたら負けよ」


 まあ行ってみればわかるってもんよ。


「どうする?降りるか、浮島までどうにかして飛ぶか」

「後者の現実味がなさすぎる。イヴとヌーンは少し休んでからじゃないと」

「まあ少し休憩でもいいと思うにゃ」

「ねー、フラッシュ合体モードで行ってみよーか?」

「あー、アイ竜で?いいんじゃない?」

「おっけーフラッシュ合体モードで地面があるかみてくるー。」

「おう、アイ竜いってらっしゃい」

「………………フラッシュ合体モードねー?」

「いやアイ竜にゃ」

「フラッシュがっ」

「「「アイ竜」」」

「めんどいよーこいつらー!」


 小っ恥ずかしいセリフをサラッと唱えたアイはフワッと羽を器用に動かして雲の海に潜り込んだ。

 変身の際に舞った金木犀の花が完全に落ちるのを見届けてから休憩に入る。


「あー、疲れだ」

「がんばって。見つけたら終わりじゃないんだから。というか計画では大分序盤の工程。」

「うげ、そうだったにゃ。」


 何ラリーかの会話をした後、話すこともないし少し黙り込む。

 といっても見るのはおんなじ方向だから個性的に座りながらシュールに前を見るだけなんだけど。

 膝を抱えたままぼーっと時間だけがすぎていく。


「…………ていうか、遅くない?アイ。飛んで少しみてくるだけなんだよね?」

「そう、なはずにゃ」

「というかなんでそんなアイと仲悪いんだよ」

「なんでと言われてもにゃ。別に仲悪くしてるつもりもにゃいし。」

「え、え?あれで仲悪くはないの?」

「あー、ケンカップルとか喧嘩するほど仲がいい的なやつか?」

「アイとカップルとかまじ無理にゃ。冗談でもそういうこと言うのはやめるにゃ」

 

 まあ目立ったところや戦闘中に罵り始めたりしなければなんでもいいよ。

 戦闘中は知らない人のフリするけど。

 まあそれでも仲悪くはなったよね?

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