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11.休憩と頂上

「……アイは怒らせちゃダメだな。」

「うん、めっちゃ怒ってる……」


 段々かわいいからグロいに変わっていく可哀想なハーピィから目を逸らす。

 アイの気が済むまでゆっくりさせてあげよう。


「というか、少し休ませて。」

「お疲れ様にゃ。蛮族」

「黙って?今蛮族なのどちらかというとアイでしょ」

「それはそう。だけどアイを持ち上げんのすげぇって思っただけでな。」

「キョウ、少しこっちくるにゃ。」


 手招きされるがままにマル君に近寄る。

 すると脇に手を入れられて持ち上げようと……


「あの、演技なら死を覚悟した方がいいと思うよ?」

「まだ何も言ってないにゃ!」

「嫌だけど今思ったでしょ!『この女重いな』って。しょうがないじゃん昨日のご飯美味しかったんだよ?!」

「待って待って待って待って?!そんなに怒るにゃ?!」

「女子の前で体重の話していいと思ってんの?」

「まあまあ落ち着けキョウ………………俺も挑戦していい?」

「いいけど必ず持ち上げてね?」

「………………」


 ワキワキと動かしていた手をスッと引っ込めたジン。

 素早くジンに近づいてコメカミに手をかける。


「アイアンクロー!!!」

「うおわあぁぁぁ?!いっぅだ」

「どういう声にゃ?」

「ちょちょちょキョウやめてくれ頭割れる!」

「乙女心になんて酷いことをするの??消し炭にするよ??」

「キョウ、疲れてるにゃ。少し休憩落ち着いてにゃジンが壊れちゃうにゃ!」

「…………少し寝る。」


 なんかダメだ。

 山を登ってから急激に調子が悪くなった。

 酸素が少ないからかな、気圧の関係かな。

 全然わからないけど、無性にグルグルする。

 気が尖ってるというか、ね?

 わかんないけど、一回寝て元に戻さないと。

 

 硬い岩肌に寝っ転がる。

 寝心地最悪だし体も痛い。

 少し休憩しないと本当にもう動けない……


「え、本当に寝るにゃ?!」

「まあニ回分登ってるからな。」

「んー、キョウどーしたのー?」

「少――憩す―――いだ。」

「あ――張ってく――――ねー」

「俺―――――むにゃ。グリモア、――で出――――にゃ?」

「…………護――――?やり――――――――さい。今日だけで疲―――――――――――――になっ――す。」


 意識が途切れ途切れになる。

 だけど、これだけは鮮明に感じた。

 隣にいる暖かい体温、それが自分のやり切ったことに確信を持たせてくれた。


ーーーーーーーーーーーー


 少しの休憩後――少しといっても目を覚ましたのは次の日の朝なんだが――目を覚ました私たちはリュックに入れてある非常食(魔物の干し肉もどき)を食べて頂上に出発した。

 別に頂上まで行く必要はないのだがここまで来ていかないのは最早山への冒涜だろってことで登った。


「あー、やばいーキョウおんぶー」

「ごめん無理。こっちが背負って欲しい。」

「あ、試してみたいことがあったんだった。アイこっち来い」

「えー?大したことなかったらぶん殴るからねー?」

「え怖」


 ちょこちょこと寄ってきたアイの脇に手を入れたジンは持ち上げようと…………


「え、は?嘘だろ?」

「…………」


 無言でジンから離れたアイは私の腰にある鞘に入ったままの剣を取ると思いっきり振りかぶってジンの背中に叩きつけた。


「いっでぇぇぇ」

「はははははくたばってー」

「なんか昨日からこんなのばっかりだよ。」

「もう一回逝っとくー?」

「遠慮しておく」

「失礼なことはしないことー。ねーキョウー!」

「うん。アイおいで!」


 タタタッてかけてきたアイをそのまま受け止めて持ち上げる。

 そのまま勢いをつけてクルリと一回転して下ろした。


「きゃー、キョウかっこいー!」

「棒読みじゃないんだろうけど口癖のせいで棒読みにしか聞こえないにゃ」

「というか強すぎないか?一応前衛みたいなところはあるが……」

「なんかね、私もここまで強いとは思わなかったわ。ジンもやる?」


 腕を広げて待ち構える。

 かぶりを振られた。


「遠慮しとくぜ。これで持ち上がったら嫉妬する」

「流石に無理だと思うけどね。そうじゃないと自分で自分にドン引く。」

「なにが影響してるにゃ?動物化?普通だったら男の方がパワーあるはずにゃのに」

「というか本場前衛職の戦士よりパワー強いテイマーって何?」

「笑えるー」

「笑えねー、俺の立つ瀬がないじゃねぇか。」

「多分ここでキョウが死んだら俺たちも全滅するにゃ。テイムも力も剣技も全部キョウが持ってるにゃ」

「強すぎるっていうのも問題だねー」

「だけど人間味があるからまだよかったよな。これで殺戮兵器みたいに感情がなかったら……」

「おー怖。どういう会話してるんだろうちら。私に失礼なこと言ってる暇があるなら。」


 クルリと半回転して3人の顔を見る。


「この景色見た方が得だと思う!」


 朝日が徐々に登る。

 山が多いからまだ海は見えないけど地平線から紅い光が漏れ出る。

 イヴの鱗みたいな色だ。

 一陣の風が吹く。

 思い出したかのようにグリモアとイヴとヌーンと卵蛇を瓶から出した。

 飛べるかな、どこに聖女様はいるのかな。


「もう少し休憩したい……」

「この世界で満足いくまで休憩するのは無理だと思うぜ?」

「知ってる、早く戻ろう。そのためにも…………」

「聖女様を見つけにいく。」

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