7.疑いと休憩
「完全に扱いが便利屋なんですよね……この姿をえた時からなんとなく想像はついてました。」
「ごめんごめん」
「あの、本当に僕が決めていいんですか?多分元の世界に戻るまで使う可能性があるやつですよ?」
「あー、自分で決めた方がいっか。グリモアありがとう」
「じゃあ……俺は『ガイ』だな。ニュアンスが似てる」
「私は『リース』?いや本当になんとなく」
「私はー……うん、『ベル』だねー二文字じゃないと覚えらんないやー」
「それは容量が小さすぎるのでは?」
「よし、俺はガイ、俺はガイ……」
「ボロ出さないように気をつけなきゃ。」
「マルトの名前はアドリブかなー」
「これマズイな……間違えたら終わる」
「まあやってみるしかないよね。」
素晴らしい偽名(笑)も得たことだし、マル君の方に向かう。
マル君が私が近づいてきたことに気づいたのか、こちらを振り向いた。
自然に手を握って……なぜ握った?
ま、まあそういう日もあるのか?
「…………やっと落ち着いた、」
「よかったわ。改めて、名前教えてもらえる?」
なんでこんなに名前に執着するんだろ。
もしかして、もう顔立ちとかで疑われてるのかな。
「私の名前はリース!」
「俺はガイだ。」
「こっちはベルだよー」
「?!俺の名前は…『シエル』にゃ」
「本当に助けてくれてありがとうございました!」
「リースさんガイさんベルさんシエルさん……うん、人違いだったみたいだね。」
「…………どうかしましたにゃ?」
「いえ、知り合いに似てたので。」
あ、あぶな。
やっぱ怪しまれてたみたい。
マル君達の顔も笑顔のまま少し固まった。
というかよくあの一瞬で名前決めたなマル君。
「こんなところで何しようとしてたんですか?」
「あ……少し山登りをしてみようかなと。」
「頂上の景色に興味があるんだよねー」
「なるほど、この山の頂上ですか。向こう側に行くだけなら通路の案内ができたのですが……」
なにやってるんだアイ!
ジンがアイをこづく。
言っちゃったもんはしょうがない。
「助けていただきありがとうございましたにゃ、多分そちらも忙しいと思うのでここら辺で失礼しますにゃ」
「そうですね。またご縁がありましたらお会いしましょう。」
「俺ら聖女探してるんだよね、見た?」
「残念ながら見てないぜ」
「そー、まあ見てたら困るけどね」
何かツボに入ったのかゲラゲラと笑うアサヒさん。
というかこの人たちも探すのに駆り出されてるのか。
先に見つかりますように!
「では、さよなら」
またねー、とアイが手を振る。
ナシさんたちは私たちに背を向けて歩いて行った。
私たちも逃げるようにその場を去った。
歩くときもマル君との手は繋ぎっぱなしだった。
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「ッはー、まじ緊張した……」
「キョウ、生きてるにゃ?」
「生きてる!死ぬかと思った」
「乗りきれてよかったぜ……怪しまれてたな。」
「まあ異世界だからねー、髪とか目とか年齢とか種族とか変わっててもおかしくないって思われてんじゃないー?」
「少し休憩しよ?」
背後は岩壁、この休憩が終わったら登ることになるはずだ。
岩壁に体を預けて座り込む。
さすが魔物を特に嫌うレイズ教の本拠地だ。
魔物とはここまでで一回もエンカウントしてない。
「これ、登るのか……」
「キョウ、ここからは行動するときは誰かと魔力の糸でどこか結ぶにゃ」
「もう手ごと固めないー?」
「それもありだけどな、登る時に二人とも落ちるぞ」
「ちょ、過保護すぎだって。まあ私も怖いけど」
「キョウがいなくなったらマズイにゃ。パーティーの蛮、アタッカー筆頭にゃんだから」
「しばき回すよ?」
「おちつけもちつけぺったんぺったん」
「はー?喧嘩売ってますかー?」
「その地雷はわからんて」
「ずっと張り詰めてたからキチゲ解放タイムになってるにゃ」
「いやここで発散しないでいつするの?もうここからふざけられないんだよ?」
「え何で怒られてるにゃ?」
「それにしても、ガイ、ガイ……やばいぜ、俺の名前はジン!」
「やばすぎ……日本で平穏な暮らしをしてた私たちが偽名、偽名だって!すごい!『リース』って何?!リンスインシャンプー?!髪の毛サラサラにする?!」
「キョウはまだいい方だろ!『ガイ』だぞ?ニュアンスは似てるけど!ガイはguyだぞ?!英語で男だ!我ながらネーミングセンスが!!」
「こっちは天才にゃ、シエルって!よく思いついたけどオシャレすぎるにゃ、」
「シエルだとエル君って呼ぶことになるかな」
「エル君?L?!デスノートに名前書くのにゃ?まだ死ぬには早いにゃ!お願いアサヒたちに俺がマルトだってバレませんようにバレたらデスノートに名前書かれるにゃ!」
「こっちはベルベルって思ってたら頭の中にベルゼブブ様が出てきたよー、そしたらアサヒの顔がハエに見えてねー!私は虫苦手だけどー、ベルゼブブ様には笑いを堪えるのに必死だったよー」
「罰当たりすぎるぜ」
「というかおちつけもちつけペッタンぺったんて。少し古いにゃ!ジン何歳にゃ?」
「安心しろお前らと同い年だ。というかお前ら嘘つくの下手すぎだろ!アサヒが聖女について言及した時、全員目ぇ泳いだよな?!」
「気のせい気のせい!あーもう登る前から口が疲れた!ジンこっから背負ってって!」
「そんな機能ねぇよ!頑張ってくれ」
「やばいねー、IQがなさそうな会話してるわー」
「いやいや、復活するよ?」
「そろそろ出発するにゃ!山越える前に日が暮れるにゃ!」




