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6.落下と偽名

「キョウ!危ないにゃ!」

「え、」


 何事と思った時には色々遅かった。

 左目があったら絶対にこんなミスしなかったのに!

 踏み抜いた地面が脆く崩れ人間一人くらい余裕で飲み込む穴になった。

 まあ、落ちますよね。当たり前体操。

 

 お、終わったーーーー?!やばい、私浮遊恐怖症!ジェットコースターまじで無理なのに紐なしバンジーってなに?!いやだよ死因が落下死とか最悪だよ!イヴ、イヴイヴイヴ!助けて!あ、だめだ流石にイヴだせる隙間はない!え、落ちるしかないってコト?!下とか見たくなかったけど見ちゃった時そこ見えなかったんですが!明らか死ぬやん!というかこういう穴ってだんだん細くなっていって途中で体が挟まって抜け出せないって聞いたことがある!え、え、そこで餓死とかほんとにいや!むり!一生の不覚!せめて故郷で死なせて!誰かに看取られるくらいハッピーエンドじゃないとやだ!マル君アイジン助けて落ちたら死ぬ!運良く助かっても落ちたらメンタル死ぬ!眼球取り戻すだけで


「キョウ!うっかりしすぎだぜ!」


 ぐんっと体が止まる。

 がっしりとした大きな手が私の手を掴む。

 ジンだ。

 安定感はないが一瞬死の危険から逃げる。

 脆く崩れやすい岩が足を踏ん張らせないのかなかなか持ち上がらない…………え、私そんなに重い?

 ジンの腰を支えるようにマル君とアイも後ろから引っ張っている。

 私が重いのか?確かに昨日いっぱい食べたけど!


「!ジン、足場が……」

「やばいにゃ、だけどキョウを諦めるわけにはいかないにゃ」

「このグラグラだとすぐ崩れちゃいそー」

「クソっ、少し下がれるか?」

「え、それは」


 崩れそうだった岩から急に重さがなくなったらなのか。

 岩が落ちてくる。

 あまり大きくないが、手に直撃して繋がれていた(命綱)が解ける。

 支えがなくなった私の体はいとも容易く穴に吸い込まれていく。


「キョウ!」

「魔力の糸……間に合わないにゃ!」

「神様仏様魔王様ー!助けてー!」


 何がトリガーになったかはわからない。

 体がふと浮いた気がした。

 落下スピードが下がった?

 落ちる岩が私を避ける。

 だけど、このままじゃ落ち……


「っどいて!『アイスプラント』!」


 きれいな声が響き、手首に痛さを感じるほどに冷たく刺々した紐が巻き付く。

 ツルツルとしていることと、上から響いてきた声からして氷なんだろう。

 上にギュッと引っ張り上げられて持ち上がり、穴から脱出して地面に叩きつけられる。

 多分悪意はない。


「だ、大丈夫ですか?」

「…………崩れやすい岩に足を踏み入れちゃったのね。」

「この角……作り物なの?すごいねぇ、この里で魔物の象徴のドラゴンに似た角の飾りつけるなんて度胸あるねぇ」


 悪意は、ない。

 だけど、その声にも見た目にも性格も口調も全部。

 知ってるものだ。

 だってこの人達は……


「自己紹介がまだだったわね。私はナシ。レイズ教の助祭よ。」

「あ、ユズって言います!レイズ教で司祭やってます!」

「俺はアサヒ。聖騎士だ。…………なぁんてね!こんな堅苦しいのはやめて仲良くしよーぜー!」


 やっぱり……

 見た目も変わらず12歳のまま。

 だけど、髪の色だけが花葉色に変わっている。

 私たちに敵対の姿勢を見せていない。


「助けてくれてありがとう。ナシさん、ユズさん、アサヒさん」

「お名前教えてくれるかしら。」

「…………」


 これ、私たちだってわかってない?

 まあそっか。

 クラスでもあんまり関わりなかったし。

 髪も目も年齢も種族も全部変わっちゃってほぼ顔立ちでしかわからなくなってるもんね。

 じゃあ……どうしよう。

 普通に名前を告げたら気づかれちゃってまた敵対だよね。

 だけど、名前なんて簡単に考えつかないし……


「…………仲間を助けてくださり、ありがとうございましたにゃ」

「いえ、レイズ教は助け合いが基本ですから。ナシちゃんの咄嗟の判断も教えに従った結果です。」


 マル君とナシさんたちがかった苦しい会話をしている間にジンが私の首根っこを掴み、回収する。

 アイとジンに顔を覗き込まれて安心する。


 あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!

 まじ怖かっだぁぁぁぁぁ!


 叫び出したらただの変な人だから我慢するけど心の中で発狂する。

 落ちる時の内臓が浮く感覚とかやばい!

 ジェットコースターの百億倍怖かった!

 いきてるぅ…………


「おーおー、怖かったねー、よしよしー」

「おかあぁ」

「誰がおかあじゃー」


 アイにムギュうと抱きついて安心パワーを受け取る。

 ジンも頭をわしゃわしゃーってしながら私に話しかけた。


「あの様子だと気づいてねぇみたいだな。」

「うん、まあ気づかないでしょ。こんなに見た目変わってるんだから」

「どうするー?敵対すると借り一になっちゃうけどー」

「申し訳ない!」

「まあ視界悪いのに頑張ってるからな。許す!」

「あざます!騙すのなら名前そのまま言うと気づかれるよね。」

「偽名ねー、考えるのー?」

「そうなるな。ボロが出ねぇように気をつけねぇと……」

「どうする?呼びやすくてよくあるやつがいいよね。」


 小さい声で呼びかける。


「あ、あーグリモア?クローズのまま喋れたりとかする?」

「…………しますよ。マスター、名前決めて欲しいとかそういうのですか?」

「うん、ご名答!」

「完全に扱いが便利屋なんですよね……この姿をえた時からなんとなく想像はついてました。」

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