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29.雷地帯と魔物球

 チカッ…………ゴロゴロゴロゴロ……

 さっきからなり続ける雷鳴が少しずつ大きくなってる気がする。

 光ってから音が鳴るまでの時間が短くなっていってるから源に近づいているのは間違いない。

 

「どこだ、どこに、コアが……空気の揺れ的に絶対こっちなはずなのに……」

「きゅあ、きゅっあ」

「うん、近づいてるはずだもんね。ありがとうイヴ」


 何か励ましてくれてる気がするからお礼を言う。

 イヴにもう少し頑張ってもらわないと、あともう少しだから。


「……!何か、来るよ!!」


 雷鳴が止む。

 静寂に包まれた世界はきっととても短いはずなのに、とても長く感じる。

 静かで揺れない空気、ピリピリと静電気で痛む頬、逆立つ毛先。

 これは………


「左翼畳んで!!」

「きゅあっ?!」


 とっさの声に反応し、イヴの左翼がこちらに寄ってくる。

 その次の瞬間。

 白い光に視界が満たされた。

 極太の白線が私たちの左を通り抜ける。

 まぶしい、目が痛い。感覚がないはずの髪の先が熱い。

 何も見えない!!雷が落ちてくるゾーンに突入したんだ、コアは近い。


「イヴ、目は大丈夫!?」

「きゅぅぅぅう、きゅい~」


 無理とでも言いたげな声が聞こえた。

 ただでさえ片方しかなくて見えにくい視界が完全につぶれたらどうしてくれるんだ!さすがに両方失明したら冒険はもうできないだろう。

 さすがに、私もイヴも雷に直撃したらひとたまりもない。さあ、ここからどうやって避けようか。

 視界が回復するのを待つ間に降ってきたらどうしよう。

 だけど、それは私たちしかいない場合だけだ。


「卵蛇、グリモア!ヘルプ頼んでいい?」

『ようやく出番ですね、僕にお任せください』

「キシャー!」


 頼もしい声と威嚇音が返ってくる。

 少しずつ白飛びした視界が戻ってきて見えたのは左腕に巻き付く卵蛇。心強い。

 そして左側を見ると、紅く美しいイヴの翼の先が茶色く焦げて……


「い、イヴ!翼が…」

「きゅあ、きゅっあ!きゅーきゅくきゅーきゅっきゅ!」

『「キョウ、大丈夫!キョウは僕が飛ぶ方向を指示して!」とのことです。マスター、早く抜けてイヴの治療をしましょう。』

「うん、わかった。イヴもうちょっと頑張って!」

『マスター、僕ができることなんですけど、直上から雷が降ってくる三秒前にお知らせすることができます。』

「なる、ほど。わかった。じゃあ卵蛇は私と視界を共有して交代で回りを見よう。多分目が痛いと思うけど少し、協力してくれる?」

「キシャー!」

「ありがとう!じゃあ、イヴは翼畳むこととか支持するからもうしわけないけど頑張ってくれ!」

「きゅぅあ!」

『マスター!早速です!』

「わかった!イヴ!右側に飛んで!」


 指示を出す。

 雷が降るであろう場所には魔力が通ってることに気づいた。

 イヴの体だと通り抜けられない場所も多いから、なるべくよけながらグリモアの予知に助けてもらう。

 私の目が雷にやられて役に立たなくなったら回復するまで卵蛇の視界を借りて指示を出し続ける。

 先に、進み続ける。


『マスター、二秒後に通過する地点!』

「りょ!イヴ左寄りで通り抜けて!」


 雷がグリモアの予測した通りの場所に落ちる。雷光が目に突き刺さり視界が消えたと認識した時には卵蛇の視界を借りる。

 魔力でつながれた視界で雷が落ちなさそうな経路を通ろうとイヴの角を強くつかんで傾ける。


「!あれ、コア……じゃない!!」


 黒くて丸い塊が向かう先に現れる。そこから強い魔力を感じた。

 しかし、それはコアじゃない。いや、コアではあるのだけどコアの周りを魔物が隙間なく囲んでいる。

 うぞうぞとうごめくほどに多い魔物に思わずのどが変な音を立てる。

 コアが近づいているからか魔力がすごく濃く感じる。

 雷が降る時間の間と場所の間がどんどん縮んでいる。

 近づいた時にはどうなるかわからない…


「グリモア、卵蛇と協力してイヴの指示だしできない?」

『できますけどマスターは何を……ッ!』

「さすがグリモア!察しが速いね!」

『さすがに危険すぎます!』

「大丈夫だよ、グリモアが言ってくれたじゃん。『本当に危なくなったら、この場にいないテイムモンスターの名前でも読んでみてください。』って。私たちには『主従の絆』があるんでしょ?」

『言いましたけど…ほんとに発動するかはわからないじゃないですか』

「それでも、彼らなら答えてくれるはずだよ。さあ行こう、会話してるうちにも落ちてきてるし!」


 大きくイヴに旋回してもらう。目の前に急に落ちてきた雷を避けるため。

 ちょっとぎりぎりだった…。

 次、私の視界が回復した時に作戦を決行しよう。


『………わかりました。イヴ、卵蛇。ぼくと頑張りましょう』

「きゅあ!きゅあ、きゅぅあきゅっ!」

「シャー…キシャ!」


 いつの間にか黒くうごめく魔物球の真上だ。

 怖いなんて感情はジェットコースター乗ってきたときに使い切っちゃったよ。


「グリモア、コアは私が壊す。そしたら雷は収まるはずだから卵蛇とイヴと力を合わせて逃した魔物殲滅してね。」


 こくりとうなずいたグリモアを見た私はイヴの上に立ち、勢いをつけて飛び降りた!!

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