22.二日酔いと激まず薬
次の日…………
目が覚める。
ふかふかベッドの誘惑にやられて二度寝を享受しようと目を閉じた時、肋骨が折れるのではと錯覚するような痛みに苛まれた。
いや痛い!なんやねん!眠気吹っ飛んだじゃん!
動こうとしても何かにホールドされてて動けないから首を動かして辺りを見る。
まず正面にはこっちを見て赤面して固まるマル君。
…………ノーコメントで。
下を見るとベッドの足元の方に掛け布団にくるまっている大きなミノムシ。
布団から出てる顔の表情筋はぴくぴくと痙攣している。ちなみにアイだ。
…………ノーコメントで。
そして最後に上。
私をホールドしている張本人。
上向いた時につむじが超至近距離にあってびっくりしたから死刑かな。
私を強い力で締め付ける腕がプルプルしている。
おもろい。ザマァ見やがれ。
まあ、痛い目見させますか!!
「……ジン?いつまでそうしてるつもり?」
至近距離にある耳に向けて囁く。
「起きてるよね?反応しないなら…………」
2、3秒程待つ。返事がない。
あーらあら?もう、やるしかないじゃん。
自慢の怪力でジンの腕を引っぺがす。
力が強すぎたのかヘブって言いながらベッドの反対側まで転がったジン。
あらごめんなさいね?
スッと起き上がって大きく深呼吸。
もーいっかい吸ってー?
「起きろぉぉぉぉぉ!朝だぞぉぉぉぉぉお!!!」
塔に響きわたる声に三人が大きくびくりと震え、頭を抱えた。
「おはよ、おはおはおはおはよう?!キョウ頭痛いぜマジで何があったってんだよ!昨日の夜から記憶がないんだがいででででで」
「……っ、あ、頭に響くにゃ、キョウ……大きい声はだめ、にゃ……」
「あー、顔痛いー、筋肉つー何があんなに面白かったんだよー……」
「はいはい黙る!確かに酒飲んだのは君たちのせいじゃないけど酔ってウザ絡みは許さん。」
悶絶するジンと頭を抱えて本物の猫みたいに丸まるマル君、虚無顔でブツブツと文句を言うアイ。
多分ジンは昨日の記憶ないけど二日酔いの頭痛がヤバい人。
マル君は昨日の記憶もあるし二日酔いもきてる可哀想な猫。
アイは記憶はあるけど二日酔いはない。だけど顔が笑いすぎで筋肉痛になってる。
うーん。飲まなくてよかった。
少し放置するかー、リブロちゃんに二日酔いに効く薬とかないか聞きに行こ。
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物音がするキッチンに顔を出すと小さい淡黄色のローブちゃんがちょこまかと走っていた。
私が見ていることに気づいて近寄ってくる。
「あら、おはよう」
「おはよ、リブロちゃん」
「朝から元気ね、呆れるわ」
「ごめんごめん。まあ昨日私のこと見捨てたのとトントンということで。」
「はいはい。悪かったわね。」
「ん、二日酔いに効く薬ない?」
「あたし、一応薬師じゃなくて錬金術師なんだけどね…………あるわよ。というかちょうど完成したわ。」
私を狭いキッチンに招き入れたリブロちゃんは煮詰まっていた鍋を火から下ろして中を見るように言った。
「うわ、……本当に効くの?これ」
「効くわよ。あたしの主のレシピなんだから。」
「食欲がなくなる見た目してる……」
「味も想像通りよ。だけど丁度いいでしょ?」
「あー、まあね?私は困らせちゃいけないってちゃんと教えてあげないと。」
お仕置き、Part2❤︎
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面白そうと言って着いてきたリブロちゃんには階段から覗いてもらうことにして、私だけ部屋に突入する。
その手には冷めた土色の液体を持って。
ドリンクホルダーに入ったそのコップは正にギロチン。
飲んだら舌細胞が死ぬし、匂いもヤバい。
一番最初に気づいたのは鼻がよくなるスキル持ちの狼、ジン。
「あの、そのキョウ……?」
「…………みんなー?リブロちゃん特性の『二日酔いに効く香草茶』だよー?」
事実だけど他責!とでも言いたげな視線を背中に感じながらこちらを見る三人に対して満面の笑みをつくる。
この世の終わりのような表情を作った三人。
「それ、薬の皮被った兵器にゃ!」
「キョウ、俺が悪かった。何をしたか覚えてないけど全面的に俺が悪かったからその液体ひっこめ」
「はい、ジンあーん。」
壁の端に追い詰めたジンの顎を掴んで口にコップをつける。
観念したように目を瞑り、喉を動かした瞬間咳き込んだ。
「ごはっ、ゲホッ体が拒絶してる!人が飲んじゃいけねぇヤツだ。」
「うんうんよく飲めましたえらいえらい」
「グッ……俺はもうダメだ、マルト、アイ。お前らだけでも逃げるんだ!この鬼は俺が止めるから」
「なーに言ってんだ」
逃げようとしてたアイを捕獲したリブロちゃんが薬(笑)をアイの口に突っ込んでる。
覚悟したような顔のマル君にも近づく。
「さあ、マル君。昨日は『おやすみにゃ』って可愛く言ってくれたもんね? ほら、ご褒美だよ」
「ひゃ、ゃ……! 記憶の暴力はやめてにゃあああ!」
悶絶するのを押さえつけて液体を飲ませると、グッタリとして私にもたれかかったマル君。
「はぁ、よかったよかムグ?!」
「…………キョウ、やってくれたな。」
うわ、気づかんかった。
私の口にはコップがついていた。
残っていた液体が入ってるコップ。
つまり私の口内にはこの世の終わりみたいな味が広がる訳でして…………
「ぁあぁあああ?!にっがいかっらいまっずい何どう言う味?!死ぬ死ぬ死ぬ!!」
悶絶してる私の横でマル君がジンにつかみかかって「おま、間接キ」「隙ありなのが悪い」みたいな会話してたけど頭に入ってこない。
「…………あんたら、本当にバカね。早く行くわよ。…………それとも?もう一杯、いる??」
「「「「いえ遠慮しときます」」」」
即答した言葉はぴったり揃っていた。




