21.酔っ払いと酔っ払い
「あー、風呂ゆっくり入ったの久しぶりかもー」
「外だと体拭くぐらいしかできないもんね」
「快適な冒険なんて幻想だったんだ……」
「現実を知ってしまったにゃ」
風呂から出てきて寝室に集合
「あ、出てきたのね。飲み物いる?」
カラオケのドリンクホルダーみたいなのに乗って出てきた飲み物をありがたくいただく。
琥珀色でいい匂いだ。
いい匂いなんだけど、嫌な予感もする。
それを三人に伝えようと口を開いて、閉じた。
飲み物をグッと煽る三人に手遅れ感を感じたから。
「………………リブロちゃん。」
「何?」
「これ、なんの飲み物?」
「私たちの世界では果実酒と呼ばれるものね。確か昔の文献には……ウイスキーって書いてあったきが」
「ええええええ?!み、水で薄めた?」
「いや、原液で飲むのが普通でしょ?もしや匂いで酔ったとか言わないわよね」
「私たちの世界では二十歳未満の飲酒禁止だから!」
「あ、そっちの世界には魔力がないものね。こっちの世界ではあらかじめ魔力が備わってるから16歳からの飲酒が可能で……」
「へー……そうなんだ……ってそうじゃない!というかウイスキーってアルコール40%くらいあるものじゃ……」
「にゃ、キョウ…………」
背中に重みが加わる。
途轍もなく嫌な予感がして振り向く。
「………………あー、もしかしてあたしヤバいことした?」
「うーん、リブロちゃん、水、水持ってきて!」
「リブロにゃー行っちゃうのにゃ……?」
「え、あえ?ぎ、ぎんぱつ!ここにいたらマズい気がするわ!水は階段に置いとくから勝手に飲ませて早く寝て!」
そう言ってドタバタと階段を降りていったリブロちゃん。
私を置いてくなんてなんちゅー薄情者!
終わりを覚悟しながら向き直る。
…………やっぱ逃げない?
え、何?個性的な酔い方しないと死ぬ呪いにでも罹ってんの?
明らかな地獄絵図。
私の背中にもたれかかって赤ら顔を晒すマル君。
ベッドの上でその光景に笑い転げるアイ。
そのアイに対してずぅっと謎の言葉を並べ立てるジン。
…………できあがってますねぇ。
卵蛇を召喚するわけにもいかんしグリモアは多分リビングで面倒ごとには関わろうとしないと思うからガチで助けてくれる人がいない。
「ほら、マル君もアイもジンも寝るよ!」
「えー、キョウお母さんみたーいー!ウケるー!」
「キョウ、成長したな……いつの間にか遠い存在になっちまって……」
「キョウー、一緒に寝るにゃ……一人は嫌にゃぁ」
「アイは何に笑ってるの??ジンはどこ目線?私のお父さん?マル君はジンがいるでしょ!自分が可愛いのわかって甘えてんの?!暴れたら狭いんだから早く横になりなさい!」
酒まわんの早すぎでしょ!
ウイスキーいっぱい飲んだくらいでこうなんの?
一気したからか!アル中になんなくてよかったね!!はよ寝ろ!!
隣にジンが寄ってくる。
手を握られギョッとして何を言い出すか身構えておく。
真顔でジンが言い出したことは……
「キョウ……お前があの崖から飛び込んだ瞬間、俺は心が震えたんだ、やっぱり仲間想いのいいやつだなぁって」
「ぶははははーその後死にかけたこと忘れてらっしゃるー?今いうのおもろいしちょーニマニマでウケるー!」
真顔だったのに言葉を重ねるうちに顔が崩れてにへらーってなっていくのがちょいと可愛い。
なんだこいつ!
というかアイはベッド叩きすぎ!
笑いすぎでヒューヒュー言ってるけど大丈夫?!
とりあえず落ち着かせなければ。
「キョウにゃ……」
「マルト!可愛いやつだなお前は本当に!」
「アイ少し落ち着いて!ジン、マル君のこと引き剥がして!」
マル君の頭をワッシャワッシャかき混ぜるジンにマル君を任せてアイのところに行く。
笑いすぎて咳き込んでもまだ声にならない笑いをずっと漏らすアイをおちつかせる。
咽せてるのは治って普通に笑い出したアイに水を飲ませるため階段まで走り、ドリンクホルダーの水をジンに飲んでと言う。
ジンは酒かーと言いながら飲むとマル君ナデナデを再開した。
マル君はまあ後ででいいか。
「アイ!ほら、水ゆっくり飲んで」
「えー、キョウおかーさんみたーい!」
「うんうんお母さんでもういいから、もう寝よ?」
「えー、こんなにウケてんのにー?たのし〜よー」
「…………じゃあ、アイの黒歴史暴露でもする?」
まあ特に思いつくものはないんだけど。
それでも心当たりがあるのか数秒笑いが止まって静かに水を飲み干した。
「アイ、ありがとう。じゃあ大人しくベッドに寝っ転がって」
「えー?やだやだやだやだー!まだ遊ぶー!」
精神年齢何歳の方??
まあとりあえずマル君にも水を渡さんと。
「マル君、いい子だから水飲んで」
「んにゃー、キョーが飲ましてにゃぁ」
「はいはい、また今度ね」
酔っ払いの対応ってこんな感じでいいのか?
飲みたくないよーと背中に縋り付くマル君をとりあえずベッドに誘導する。
…………あー!もう全員うっさい!
「よし、もう拳でいいか!」
元気よく宣言した瞬間ピタッと静かになった三人。
目を閉じて寝たふりするやつらにため息をついて魔力灯を消す。
水をドリンクホルダーに戻してベッドに滑り込んだ。
すると、がっしりした腕にホールドされる。
「んん、キョウ……おやすみにゃ」
「はいはい。明日苦しんでくれ……おやすみ。」




