20.肉塊と剥奪
「え、これなんだ?」
私が作った料理に胡乱げな目を向ける一同。
正直私も美味しそうには思えないけど料理がほぼできないのにここまでできたのはすごい、と言ってもいいはずだ。
その見た目は肉塊。
ステーキのように一枚二枚と数える感じじゃなくて一個二個で数えると思う。
「……岩が埋まってるにゃ、これは……岩塩かにゃ?」
「おお!そうそう!どうやって使うのかわからなかったからとりあえず潰したけどそしたら大きさがまばらになっちゃってね。」
「えー、色々突っ込みたいことはあるんだけどー、さっき上から聞こえてきたやばい音は岩の断末魔だったんだねー」
「キョウ、調理実習の時どうしてたんだ?多分俺が作った方がまだマシだぞ?」
「……正直なところ私も美味しそうとは思わないけど、食品ロスするわけには行かないから、ね?」
「調理実習?についてノーコメントなのね」
「リブロちゃん。世の中には触れるべきではないことがある。」
スッと目を逸らしたリブロちゃんには申し訳なく思いながらも棚に詰め込んであった箸で慎重に食べれなさそうな岩塩を取り除いていく。
「肉、生焼けなところあるにゃ?」
「おおう、何をする気だよ」
「いや少し手を加えようと思うにゃ」
「…………多分ある。塔燃やさないように……」
「え、何を言って」
あ待って。
この地域魔法無理なのでは
「『ファイア』にゃ!…………あ、そうだったにゃ」
ぷすんと煙を上げた手のひらを見てため息をついたマル君。
流石に生焼けはまずいよね。
多分レアすぎて食べたらお腹壊すと思うし。
「あ、僕も一応魔法使えますよ。」
「おおー!確かグリモアはいけるんだよねー!」
「そうね、先に使える魔法の種類を」
「えあ、え?マズイマズイマズイ!」
確か入手した属性の魔法のみ成長するんだよね?
つまり炎は入手してないから初期魔法である『あの』魔法しか使えないわけで……
グ、グリモアはそんなことしないよね?
そんなことしたらこの塔が燃え尽きるよ!
「『精霊魔法:炎 フレイムリング』!」
この呪文を聞くのは転移してスライムと戦ったのが最後だった気がする。
あの魔法は炎の不定形なリングが大きくなったり小さくなったりして対象を締め上げて範囲内に赤い炎柱が立ち上る。
そして周りは火事になる。
そういう魔法だ。
「にゃ、やっばいにゃこれ。」
「死因一酸化炭素中毒ってまじー?」
「呑気だなこいつら!なんとかして消火……!」
「すみませんすみません!僕としたことが考えがそこまで回りませんでした!」
「だだだだだいじょうぶ!とりあえず卵蛇……はここに出すと魔力不足で死ぬしヌーン……は外だし」
「グリモア、もう一発いけるにゃ?」
「フレイムリングが着弾しないと無理です!」
わったわたとする私たちを嘲笑うかのようにフレイムリングが最後の縮小をしようとする。
そんな時にリブロちゃんが口を開いた。
「——ッ主!『個体名グリモアの魔力活動を一秒間停止』!」
空に向けてそう叫んだ直後にグリモアの動きが不自然に止まる。
そして炎の輪が溶け消えた。
たった一秒後、グリモアの硬直が解けて困惑した表情をする。
「、何が…………」
「あなたたちの言う煌竜にお願いしたのよ。ここでの魔力は私たちが握ってるからね。」
「…………どういうことー?」
「つまり煌竜がグリモアから魔力を一秒間だけ剥奪したってことだ。俺たちは今永久剥奪されてる。」
「んー…………まあだいじょーぶってことかー」
「もうそれでいいわよ。グリモア、注意して動いて。一秒くらいならできるけど魔導書の魔力を長い時間取るのは無理だわ」
「ほんとにすみません…………」
しゅんとしたグリモアを見て話題を逸らそうと思ったのかマル君が思いついたような顔をする。
「……お肉、余熱で焦げ焦げにゃ。食べ物からまた遠ざかってる気がするにゃ」
視線を追うと、そこには黒く縮んだ塊があった。
中まで火が通ったか確認するためにステーキナイフを入れようとジンが肉に手を当てるが、奇妙な顔をした。
「なんか、触り心地が石なんだが。これ切れんのか?」
まあ切れるわけがない。
石をナイフで切るなんて無理だ。
じゃんけんでチョキがグーに勝てないのがよく物語ってる。
カツンカツンと最早小気味のいいとも言える音を立てた肉と言いたくない塊。
「どうするー?夕飯抜きは勘弁願いたいねー」
「…………とりあえず、リカバリーするにゃ」
長袖を捲り上げたマル君。
「レシピを検索にかけてきます!」
そして意気込むグリモアを手伝って美味しい肉料理ができた!
料理と工程は正直なところよくわからなかった。
だけど肉を切り刻む作業は手伝えたから何もしてないわけではない!
というかマル君普通に料理できるんかいな。
レシピ持ってきたマル君とグリモアがキッチンに常駐して私が肉を切る作業見守ってたりしたけど、その間も手際よく使い終わったもの洗ってたりしてすごかった。
これが家庭科系男子?!
「いやー、美味しかったー」
「すごいな。俺も料理できるようになりてぇな……」
「うん、女子力高いなぁって思ったわ。」
「まあ、順番に風呂入ってちゃっちゃと寝るにゃ」
順々と解散した私たちはのちに起きる事件を想像すらしていなかった。




