喜怒哀楽
前方からシュミットが走って来る。
さっき笑って泣いたリューオスは、次になぜか怒りの感情が浮かんできた。
「リューオス、大丈夫か?」
そういうシュミットの胸倉を、リューオスはつかんでいた。
「……?」
シュミットはリューオスが元気そうなので安心したが、咄嗟の行動が理解できず数秒固まった。
「おい、リグ、なんで黙ってた? なんで初対面のフリした?」
「……は? え?」
シュミットはいきなりファーストネームで呼ばれ、面喰った。
シュミットのフルネームはリグ・シュミット。
子どもの頃はリグと自己紹介してたが、いつしかシュミットとのみ名乗るようになっていた。
「僕のこと、覚えてる……の?」
「当たり前だろ」
「……そうか。でも今はそんな場合じゃ……」
とシュミットが言い終える前に、リューオスはシュミットの方に倒れ込んだ。
「リューオス?」
「……疲れた」
「もう少しだけ頑張って」
シュミットは、リューオスに肩を貸し居住区へと歩き出す。
「……悪かったよ」
歩きながら、リューオスがそんなこと言った。
「昔、目のことからかったりして……」
「リューオス?」
シュミットはリューオスの顔を覗き込んだ。これは走馬灯が見えているヤバい状況なのかと危惧したが、リューオスの疲れてはいたがその表情はしっかりしていた。
「別に気にしてないよ」
「眼鏡は汗がこもる」
とシュミットは色付きのグラスを外し、胸ポケットにしまう。
青い瞳と赤い瞳のオッドアイだった。
「久々に見た」
リューオスはそんなこと言った。
* * *
居住区に着くと、リューオスは地面に座り込む。
「水……」
喉がからからだった。
ファッティが水を持ってきてた。その後ろにアッゼもいた。
リューオスに水を受け取ると、メノウに渡した。
メノウは戸惑ったが……
「子どもは遠慮するなって言ったろ」
それを聞いて、メノウは水を飲みほした。メノウだって喉が渇いていたのだ。
水を飲み干し、メノウは思った。
――なんて強くて優しいんだろう。
その感動が恋心だと気づくのにそう時間はかからなかった。




