強制起動
「もしかしたら石が来るかもしれない。油断するな」
リューオスの言葉に、メノウは不安そうに周囲をきょろきょろ見回す。
「どこかに街は見えるか?」
メノウは高く飛ぶ。
「あ、あっち! あっちにあるよ」
メノウは前方を指さした。ということは、リューオスの進んでいた方向は間違ってなかった。
「もう一息だ」
メノウは、リューオスの手をつかんで前方へと飛ぶ。
手を引かれて歩くとかなりラクだった。
* * *
水鏡を見ていたタツキは、リューオスが間もなく居住区に着きそうなのを見て安心していた。
「あ! シムに電話するんだった」
それを思い出すと、水鏡の映像は切り替わった。
シムがいるのは地上の居住区。
魔力の強いタツキは知り合いの映像を水鏡で見ることができた。
だが……
「あれ?」
水鏡は真っ黒なモヤみたいのものが映っている。
「シム?」
タツキは意識を集中する。魔力を込めて再び水鏡を覗いてみた。
黒いモヤの向こうにシムが見えた。
だが様子がおかしい。
「寝てる?」
シムは床に横たわっていた。
「シム」
タツキは思わず、名前を呼んでいた。
寝てるにしてはベッドじゃなく床に寝てるのはおかしいし、何かやばいことがシムに起こったんじゃないかと不安になった。
「……シム!」
そこでシムはむくっと起き上がった。
何故かきょろきょろ辺りを見回し、魔導電話を取った。
耳をそばだて、やがて受話器を置く。
シムは自分がどうして寝てたのかわからないようだった。
「あ、よかった。起きた」
なんて話しかけてもも水鏡の向こうに声が聞こえるわけではないので、電話をかけなきゃ。
そう思ったタツキはリューオスの家へと向かうのだった。
* * *
メノウに手を引かれ、リューオスはとぼとぼ歩いていた。
その目に栗色の髪の青年が現れる。
「あ、シュミット」
と、メノウが指さして言う。
知り合い?
リューオスは意外に思ったが、よくよく考えてみれば同じテッドの舟の住人だから互いに知り合いでも不思議でも何でもなかった。




