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【連載版】お前を生涯愛することはない──当然ですわ!  作者: 昊ノ燈


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25 目を覚ましたら使徒と呼ばれました

 目を覚ますと、そこはテントの中でした。

 テントと言っても、最低限宿泊できる程度のテントではなく、将校用、いや大将が使っているのではないかという大きく、生地のしっかりとしたテント。

 テントに?と頭を傾げるような家具も置かれ、床には絨毯まで。

 当然の如くベッドもあり、そこに私が寝かされていたのです。



「お目覚めになりましたか、使徒さま」


 若い娘特有の弦楽器のような弾む声が、私に駆け寄ってきます。


 え、シトさまって?

 何?

 えぇと、私の名前は、ナタリア・ブロッサムスで、ミラ様率いる〝白と青の出版〟の唯一にして売れっ子作家。宰相補佐室の補佐官見習い。任務で国境付近の砦に来ていて、フレイマン様の調査をしている。一緒に派遣されたのは、ポール・トールテサイッツ様。────えぇ〜と、フレイマン様を尾行して、すんごい場面を見て…………追われて………………蛇に噛まれて……死んだ!


 はっ、私、死んだ!

 ひょっとして『シト』って、『死人』と書いて『シト』って読むの?

 分かりにくいわ!

 あ〜〜、それならここは天国か〜。テントの中の天国。しょぼいわ~。でも、地方の貧乏男爵家の娘の天国なら、身分相応かな。うう、天国まで格差社会。身分差別反対!


「もしもし、もしも〜し。使徒さま、聞こえていますか〜」


「あ、はい」


 あっ、つい返事しちゃった。

 見ると、声の主は十代半ば、いやもう少し若いかな、な女の子。大きく瞳に、小さな鼻、ポテッとした唇が可愛らしい。ボブカットに整えられた髪は、薄っすらとピンク掛かった銀髪。同じ色の瞳と相まって、神秘的ですらある。総称して、可愛らしすぎる少女。

 その少女の手には、イリヤ様の(イラスト)が印刷された薄い本。両手で抱えるように胸の前に。


「ダメ〜〜〜〜〜!」


「え?」


 駄目よ、駄目ダメなの〜。そんな可愛い顔でキョトンとしないで。でも駄目!

 その本は、淫らなのよ。子供には、早いわ。早すぎるの。書いてる私が言っちゃあ駄目だけど、ちゃんとした性教育を〜〜〜。

 はっ!

 私の鞄。

 視界の端には、開かれた鞄と並べられた薄い本たち。バックナンバー順にキチンと並べられてるわ。几帳面な子なのね──って、逃避したい。


「使徒さまが、ナターシャ先生なのですか?」


「へ。いや、な、何、を」


「すいません。手帳も拝見させていただいてしまいました。ネタ帳ですよね」


「い、いや、私は、ナタリア。ナターシャなんて名前じゃないわ……よ」


「ナタリアとナターシャって、ポノ語ではスペル一緒ですよね」


「あ…………」


 バレました。

 バレてたのかもしれません。

 全てが今更です。手帳を見られた時点で終わりですよね。自分でもヤバイと思うくらい、狼狽えていましたし。


 隠し立てできないと項垂れた私に、少女は一冊の本を見せてきた。

「これを」


 それは、〝白と青の出版〟で白シリーズ、青シリーズを刊行する前に出していた薄い本。

 予言書『襲撃体勢万端です──青白き焔を燃やす騎士達』を再編集加筆した、幻の分冊版の記念すべき第一話の初版本。僅か二十冊しか製本されなかった初版本が何故ここに。


「やっぱりご存知なんですね。これは私の聖書(バイブル)なんです。この本に出会えたから、今の私があるんです。この本に出会えたから、騎士団に興味を持ち、皆んなを癒したいと思えるようになったんです。この本を創り上げてくださった〝白と青の出版〟は、私の信仰すべき神であり、その執筆をなされているナターシャさま、いえナタリアさまですね、ナタリアさまは神の使いなのです。ありがとうございます、使徒さま」

 深々と頭を下げる少女。


 って、良い話にしてるけど、その本は腐女子を世に生み出したアンダーグラウンドの本だからね。そりゃあ、一部の熱狂的なファンには、バイブルって呼ばれてるけど、本当の聖書じゃないよ。そんなの神様に怒られますよ。そんなに大事そうに抱える物でもなくて、枕の下に隠して、グヘヘヘとか言いながら見るものですよ。



「失礼します。聖女様、使徒さまのご様態は如何ですか」

 テントの外から声がする。


 程なく入ってきたのは騎士さん。

 紛うことなく、あの時、私を追ってきた騎士さんです。

 私は息を一呑みして、前に出る。


「命を救っていただき、ありがとうございました」


 丁重にお礼した。

 社会人として当然である。

 どうだこのキレイなお辞儀の角度は。潔さは。騎士さんも、言葉を失っているではないか。

 その騎士さんが、突然、笑い出した。

「ブッ、ハハハ。命を救ったか。俺はあんたを運んだだけだよ」


「いや、あの時、私は毒蛇に噛まれて」


「あぁ、あの蛇は毒なんて無いよ」


「嘘です。極彩色の蛇は毒があるって」


「それはリトルレッドバイパーだよ。あんたの足を噛んでたのは、リトルレッドバイパーモドキ、毒も何にも無い蛇だ」


「えっ」


「毒も何にもない蛇に噛まれて失神か。なあ、聖女様、これ本当に使徒なのか?」


「間違いありません。この方は、使徒ナターシャさまです」

 



 


【昊ノ燈】と申します。


読んでいただき、ありがとうございます。

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