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【連載版】お前を生涯愛することはない──当然ですわ!  作者: 昊ノ燈


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22/26

22 私は薔薇の中に乙女を見た。

 ハァハァ……ウプッ


 走っています。

 私史上最も本気で走っています。

 ハァハァハァ──動け、私の脚。

 心臓痛いよぉ。

 脚が重いよぉ。

 なんで鞄に、本を詰めてたんだろ。

 あぁ、お願いします、走ってください私の脚。



 私がこんなに走っているのには、理由があります。理由もなく走り回るのは、おバカな犬くらいのものですね。いやぁ、おバカな犬の体力が欲しい。

 もう走れないです。

 でも、走らないと、捕まってしまいます。

 だから、走るしかないのです。



 ◇


 王城勤務となったのを期に、口調にも気をつけようかと思いつつも、第二騎士団の守る前線の砦に来てから、四日が経った頃です。

 毎日毎日、色んな人と話し合いながら書類と格闘するポールさんはさておき、私は比較的ノンビリと過ごしておりました。

 元彼のカーライル様に会ったらどうしよう?どんな顔すれば良いのかな?なんて、ちょっとビクビクもしていましたが、何故か会うこともなく。逆に避けられているかのような感じ。

 まぁ、それはそうかもしれません。

 だってそうでしょう。同性である男性が好きなのを周囲から隠す為に付き合っていた女に、自分の性癖がバレて、逃げられてしまったんですから。私に合わせる顔が無いのは当然ですから。逃げているんでしょうね。


 そんなカーライル様の事は放っておくとしまして、私は、私の物語のファン(腐女子)達に囲まれております。

 彼女達は、本当に熱意に溢れ、勤勉に、私の記者活動を手伝ってくれています。まあ、私の物語に出てくる『フレイル』は、フレイマン様がモデルなのは読者の中では有名ですし、舞台が第二騎士団だというのも周知の事ですから。怖ろしい程の熱量で、私が来る前の騎士団の様子から、騎士団員のスケジュールまで報告に来てくれておりました。

 そして今朝、新しい報告タレコミがあったのです。

 それは、今日、フレイマン様が一人で調査に向かうというもの。

 本来、調査は二人以上の人数で行うというルールは、文官見習いである私でも知っております。なのに一人で調査に向かうというのは、何かある。私の記者の勘が『フレイマンを追え』と告げてきました。

 今思えば、私に『記者の勘』なんてある筈がないのですよね……。まだまだ下っ端です。ちょっと薄い本がヒットしてるからって調子に乗った半人前なんです。

 それに、記者じゃなくて作家だし。


 と、話がそれ過ぎて、パッチェロのケーキ店のテラス席でホルモン煮込みを注文するみたいになってしまいましたので、話を戻します。

 情報タレコミ通り、一人で国境付近の森に入っていくフレイマン様。私は、気付かれず、且つ見失わないギリギリを攻めながら尾行を開始しました。

 気付かれず、見失わない。


 見失わない。


 見失わない。


 見失いました!


 森の中。何の訓練もしたことが無い小娘が、騎士を追っていけるはずがないじゃないですか!

 その上、どっちから来たかも分からない。

 フフフ、万策尽きた(何の策も練っておりませんけど)。

 ハハハ、天は我を見放した(自業自得ですけど)。

 とにかく、右も左も分からない森の中で迷子になっております。


 途方にくれて彷徨う。


 ……………………「……な」


 何か聞こえました。

 聞こえましたよね。

 聞こえたに違いまりません。


 声の方に目を向けると…………いました!

 いましたよ人が!

 フレイマン様と、見知らぬ制服の男性。

 見知らぬ?

 いや、知っています。隣国の軍部の制服。

 何ということでしょう。フレイマン様の情事の現場を見届けようと追跡していたら、他国との密談の現場を発見してしまいました。

 彼は、国を裏切り、隣国と繋がっていたのです!────と、え?


「モンシェール(あなた)」

「カロミーオ(愛しい人よ)」

「会いたかった」

「私もさ」


 え?え?え?本当(マジ)?裏切り行為かと思ったら、情事なの?え?え?え?本当?本当?えっ?私、現物見るの初めてなんだけど。あっわっ、凄!


[モラルに反し過ぎる光景の為、ナタリアの心の声でお伝えします]


 うわ。あんなに濃厚なキスって…………息できないよね。うわぁ。

 あっ、キスのまま上着のボタンを外してる。絶対に私なら気付かないまま、スッポンポンだわ。

 逞しい胸板。鍛え上げた騎士同士って…………。

 あっ、男の人もあそこって感じるんだ。

 耐える騎士の顔、良いわぁ。

 え!え!えぇ!ベルト外して………………。

 無理。無理よ。

 あんな大きな樹が揺れてる。

 無理。無理。激しい。無理…………。

 フレイマン様って……攻めなんだ。

 え?攻めと受けが交代?

 交代するの?

 あぁ、駄目。

 駄目。無理。駄目。無理。駄目無理駄目無理駄目無理駄目無理駄目無理ダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリ…………あっ、また交代…………ダメムリ…………ダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリダメムリ。


 無理よ。

 私にこんなの文章にできない…………。


 私が呆けている間に行為は終わり、二人は軽いキスで別れた。

 背を向けて帰っていくフレイマン様と、樹にもたれながら見送る隣国の騎士。

 胸に手を当てながら、力なく膝から落ちるようにしゃがみ込み、既に姿を消したフレイマン様の姿を見つめ続ける。

 私は、その姿に乙女を見た。

 していた行為は、どう見ても乙女なんかに見えないけど、フレイマン様を見送る瞳は乙女だ。


 私は、薔薇の中に乙女を見た。

 

【昊ノ燈】と申します。


読んでいただき、ありがとうございます。

もし、この小説を応援したいと思っていただけたなら、ブクマを宜しくお願い致します。


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 良いも悪いも作者のモチベーションとなります。


 楽しんでいただけたら幸いです。


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