2. 悪魔と言われるその所以
「っはぁ...」
恥ずかしくて死にそう。何がお兄さんだよ、かっこつけて適当喋って。ちょっと調子に乗りすぎた。
「まぁ...もうあの町に戻るのは無理かなぁ...」
NPCもプレイヤーもダウンさせちゃったから指名手配になってるだろうし...早速こんな不自由な生活させられるとは思わなかったよ。あの騎士もどき許すまじ。
「っとそうだそうだ」
無意識で使っちゃってたけどユニークだよユニーク!ボクだけの特別な武器!さっきから自然と背中に乗ってるこれがそれだと思う。
「ッおっも!」
結構な重量があり、それを前に掲げる。
刃の部分が岩石のようになっている所を除けば、シンプルで、なかなかボクの趣味に合ういい武器だ。
「詳細は...っと」
――――――
【主無き誓い】
分類:バインドユニーク 第一階梯
称号:【恐怖を抱き、抱かれるモノ】
スキル
【黒き眼差し】
:状態異常「恐怖」を付与し、自身と装備を含めた重量合計を重力に変換する
【主無き誓い】
:状態異常「恐怖」になっている、少しでも発動者に恐怖を感じている事の二つを条件に、MP×秒数間対象を操作できる
主を見捨て、仲間を見捨て、誇りを捨てたその剣は、何処へ堕ちるのだろうか
――――――
「なんか...悪役が使ってそうな武器だなぁ...」
ユニークは発動者を体現するような武器だって聞いたことがあるけど、ボクを具現化したらこれになるの?ひどくない?
まぁでも...強いことには変わりない。相手を操るって怖すぎだろ...、なんか変な称号ついてるし...。
「人と話すためにMMO始めたのに、早速話せないようなモノが出来ちゃったよ」
そう、ボクは基本的に人と関わるのが好きなタイプだ。人見知りだけど人が好き、なんとなくわかってもらえるかな?だからこそ攻略ってよりかは交流を大切にしようと思っていたんだけど、それも難しそうだ。
「まぁ...とりあえず、まずは基本のレベル上げからだね!」
強すぎませんか???まだ【主無き誓い】使ってないのに、【黒き眼差し】だけでほとんどの強さの敵が倒れるか、ある程度強くても動けなくなるから、そこに大剣叩き込むだけで勝てちゃうよ...。
――エリアボス【森の守り神】に遭遇しました
そんなアナウンスと共に本日15回目のフェンリル討伐を始める。
「Grrrrrr Gooaa....」
低い唸り声を出し、狙いを定めているフェンリルに容赦無く、
「【黒き眼差し】」
恐怖と、大剣とインベントリの分の重力を与える。
いつもならこのまま大剣で叩けば終わるのだが...今回は一筋縄では行かないようだ。
「Grrraaaaaaaaaaaaaaa!!!」
叫び声をあげながら、こちらに大きな爪で切りかかってくる。
――強制遭遇!【亡き同胞を悼む狼の王】と遭遇しました
嫌な予感がした、攻撃を受けるのではなく横に飛び退いた。
その判断は正しかったようで、
フェンリルを象徴する白く滑らかな毛は赤く荒々しく、皮膚は黒く岩のように、頭には逆さの王冠が付いている。
「一旦...不味いね?」
フェンリルがアヴェンジャーフェンリルに進化した後はもう一方的だった。【黒き眼差し】の火力を上げる為に入手したステータスポイントを
――――――
Name : Ruka
Race : Human
HP : 22/30
MP : 30/30
STR : 10
AGI : 5
DEX : 0
VIT : 0
INT : 0
LUK : 0
――――――
重量制限を上げる為にSTR、移動速度を上げる為にAGIにしか振っていなかったおかげか、インベントリのアイテムを全てドロップさせればギリギリ追いつかれずに済んでいる。
しかし、このままでは終わりが見えない。いくらスタミナの概念が無いとしても、集中力は長時間掛ければ切れる、その時がボクの最後だろう。
【主無き誓い】も使えたところで30秒しか操作できず、何をすればいいかもわからない。
「...ははっ...絶対絶命と言ったところだね」
そんな風に言葉を吐いた隙を突かれ、少し腕に爪が掠った。
その瞬間に、
――状態異常「恐怖」「圧迫」を受けました
体を潰されるような感覚と、黒くよどんだ感情が内からあふれ出てくるのが分かる。
「い、嫌だっ」
またアレが溢れ出てくるのが感じ取れる。怖い、怖い怖い怖い、誰か...助けてよっ!
吐く息が荒々しくなり、目の前にアヴェンジャーフェンリルの爪が迫った時、
――【恐怖を抱き、抱かれるモノ】条件達成
第三階梯【黒き眼差し】起動準備完了
――呼べ、その名を
時間が止まっている?いや遅くなっている。なのに声は出せる、でももう、これに掛けるしかッ!
「『黒を卸す』」
「『恐怖の体現者』」
「『その瞳は心理を覗く』っ!」
「【黒き眼差し】!!!」
――目に映ったのは、3mほどの爪で自らの喉を穿つ【亡き同胞を悼む狼の王】だった。




