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ボクの掲げるアルカディア  作者: lutera
【人が生んだ悪魔】
1/5

1. なりたかった自分

不定期更新ですが、できるだけ短いスパンで書けるように頑張ります。

ご応援の程よろしくお願いします。

 僕には夢があった。


 自分を大切にしてくれる人を見つけて、

 その人を自分も大切にして、

 沢山の人に囲まれて、

 嘘偽りない幸せを噛み締める。


 僕がなりたくて、なれなかった自分。


 なろうとしなかった自分。


 これは、そんな自分を変えるため、ボクがとある世界で生きていく物語である。




 今じゃVRやホログラムが一般的となったとある世界の未来。様々な環境問題がAIによってある程度解決された美しい地球で、一人の高校生は暗い部屋を片付けながら、VR機器の準備をしていた。


 四か月前にリリースされ、ネットはそれの攻略やランキングなどでほぼ埋め尽くされるほど人気なVRMMO「Another」。


 有料のゲームとだけあって、バイトもしていないボクはやりたいという気持ちはあったが、諦めていた。しかし、とある条件付きで父親に買ってもらった。


 今日は、そのアナザーを初めてプレイする日。ボクは楽しみで仕方がなかった。


 電源を入れると機械に青い筋がなぞるように浮かび上がる。


 ボクはゴーグルを頭につけて、ベッドの上で


「start」


 そう小さく呟いた。




「っ!!!…まっぶしっ!」


 いきなり光が目に入ってきて少し驚いた。目が慣れて周りを見渡せるようになると、目の前には自分らしき人物がいた。


 美麗になったリアルの自分。このゲームは最初のアバターテンプレートとして理想の自分を算出するらしいので、多分これはボクの「もしもこうだったら」が叶った姿なんだろう。


 リアルと体形が違うアバターを使うとすこし違和感が出るようだが、ボクはこのアバターを気に入ってしまった。画面に出てくる警告を無視して早速スタートしてみる。


 視界が少しずつ暗くなり、自然と目を閉じる。


 目を開けば、人が行きかい賑わう、そんな街に立っていた。


 やっばい吐きそう...大人数は苦手なんだよな...。とりあえず、表通りから離れよう。

 そう考え行動したときだった。


 耳の横に鋭い風が通り、目の前に西洋風の騎士が現れる。


「やぁMonster、初心者装備を付けて最初の街に居れば、逃げられるとでも思ったのかい?」


「...え?」


「大人しく連行されてくれると助かるなぁ...、うちのギルドも含め、大勢の人が君には色々と世話になったからね」


「...え...っと...ボクは魔物じゃ」


「何ふざけたこと言ってるんだい?君はMonster、異邦人(Player)、現地民(NPC)、誰彼構わず殺し、脅し、配下にする、手配ランク8の大犯罪者だろう?NPCの目は誤魔化せても、ボクの目は誤魔化せないよ」


「いや...あの...人違っ」


 そういってメニューを操作し、プレイヤーネームを表示させようとするが、腕に激痛が走り、行動を妨害される。


「そうやって油断させて、装備を変えようとしたって無駄だよ。私はもう、間違えない」


 そういって首に剣を当ててくる。


 誰と勘違いしているか知らないが、流石にそんな早く死に、拘束されるとこのゲームを楽しめない...。

 他の人に助けを求めるため、周りを見渡す。しかし帰ってくるのは酷い嫌悪と殺意の視線。


 嫌悪と殺意と軽蔑が、混ざりに混ざり合った、

 黒く汚れたヒトの目。


 頭の中で昔の光景がフラッシュバックする。


「ひっ...」


 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!もう...なんで...ボクが...また...こんな目に...。


「...そっか、」


「ん?何か言ったか?」


「ボクが、」


「ボクが全部悪い」


「だから、さ」


「ボクは、」


「悪いヒトになるね?」


「何言って...」


 このゲームでは、プレイヤーにはスキルが習得できない。あくまで別世界の人間という立ち位置だからだ。しかし、スキルが付与されたものを使うことはできる。そうやって少しずつ希少な装備を集めて強くなる。そういうゲームだ。


 だからと言って、プレイヤー自身に個性がないわけではない。プレイヤーがとある条件を満たしたとき、その個性は発現する。


【バインドユニーク】


 その世界にたった一つしか存在せず、持ち主を変えることも不可能。そして、


 プレイヤーと共に成長する武器。


「【黒き眼差し(フィアー)】」


「は?」


 その瞬間、誰もが立つことすら不可能に、どんどん自分にナニカが入っていく感覚が芽生える。痛くもない、どこか怪我したわけでもない、なのに苦しい。自分達を怖がっていた存在が、自分達が恐れる存在になっていく。


 一人、一人とまた伏せていく。最後に立っていたのは、歪んだ顔を浮かべた騎士らしき人間だけ。


「知らない...そんなもの...お前のユニークは...死者蘇生じゃ」


「ねね、お兄さん、ボク、お兄さんが知ってる人じゃないよ?」


「そんなはずは、」


「勝手に見た目が似てるからって決めつけて、笑顔で腕を切って、お兄さんが言ってた人よりよっぽど悪いヒトだね」


「ッ...」


「じゃあね、もう出来れば関わりたくないかな」




 称号【恐怖を抱き、抱かれるモ(フィアー)ノ】を獲得しました

 ワールドタイトルが【人が生んだ悪魔】に変更されました

 ワールドメッセージ

『タイトルホルダーが生まれました』

『皆様の御健闘を祈ります』

病み落ちって...いいよね

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