第2話〜工芸の寒村【リミスロー】〜
マネキ様についていくこと1時間、山間に築かれた村に到着する
「着いたにゃ、ここがお主の新しい住処【リミスロー】にゃ」
「リミスロー···あの、こう言ってはなんですけど···」
「寒村じゃろ?」
と、村の入口に立っている人に言われた
「あ、すいません···」
「よいよい、ワシも寒村じゃなぁと思っとるし···お待ちしてました、マネキ様」
「うむ、苦しゅうにゃい、紹介するにゃこのリミスローの村長の」
「エト·トワイスじゃ」
髪は白銀のロングストレート、垂れ目に片目は眼帯、スラッとした身体、色白の肌にワンピースを着たエルフの女性が自己紹介してくれた
「あ、えっと、ハヤト·キノですよろしくお願いします」
「うむ、若い人材は大歓迎じゃ、この方がマネキ様の命の恩人と言う事ですね?」
「うむ、そうにゃ」
と、カクカクシカジカとマネキ様がここに至るまでの経緯を話してくれた
「ふむ、まずはお礼じゃな、我が世界の神の命を守ってくれてありがとう」
「いえ、その、当然の事をしたまでなんですけど···」
「その当然の事を出来ないモノも沢山居るんじゃもっと胸を張れい」
と言われちょっと自信が出た
「さて、エトよ神託で話した件は大丈夫かにゃ?」
「はい、ちょうど店舗兼住居の空家が空いてますのでそちらをハヤト君の住居にしようかと、前住人の木工芸職人の道具もそのままなので」
「あ、その前住人の方は?」
「ついこの間···1週間くらい前に天寿を全うされたよ、死ぬ直前まで木工芸品を作ってた生粋の職人だったんじゃが、ついぞ跡継ぎに恵まれなかった」
「そんな人の家に自分を···?」
「にゃに、死んだ後に跡継ぎが出来た、と喜んどるに違いにゃいにゃ」
「ああ、でもお墓参りはしておこうか、君の知る方法で良いからね」
「分かりました」
そうして村の共同墓地に赴き前住人だったカーペントさんのお墓に手を合わせた
「うん、カーペント爺もこれで浮かばれるよ、さ、カーペント爺の家に案内しよう」
そう言われて案内された店舗兼住居はこじんまりとした木造の2階建てだった
「1階部分が店舗兼工房、2階部分が住居だよ」
「工房を見ても?」
「うん、大丈夫じゃよ」
そうして入口から商品陳列棚を挟んで1階の奥の方に立ち入り
「あ···」
そこに置いてあった作りかけの木のお玉を見て、あぁ、ここで作業中に倒れたんだなと想像できた
「ああ、それは···量産品のお玉じゃ、ここで倒れてるのを常連さんの1人が見つけてワシの所まで運んできたんじゃが···手遅れでの、病気を患っていた訳でもなかったから苦しまずに逝けたのがせめてもの救いじゃて」
「···」
お玉を持ちながら黙祷を捧げ
「···2階も案内しようかの」
という声に引き戻されて作りかけのお玉を置いて2階に上がる
2階は物が少なく綺麗だった
「カーペント爺は基本的にずっと下の階で作業しながら過ごしとっての、こちらには寝に帰ってくるだけじゃった、その寝具ももう処分してしまったがの」
「あ、長椅子がある」
「その長椅子はカーペント爺が作った物じゃ、自分の作品を1つぐらいは残しておきたかったんじゃろう」
長椅子を検分すると、きめ細かな飾り彫りにしっかりとした脚と背もたれ、ささくれもなくとても丁寧な作りになってるのが分かった
「···とても、腕の良い職人さんだったんですねカーペントさん」
「見て分かるのか?」
「これでも趣味とは言え木工芸職人の一端です、見るだけでなんとなく分かりますよ」
まだ【なんとなく】なのが歯痒いけどね
「うん、目に生気が戻ってきておるにゃハヤト」
「え、あ···」
「ホッホッ、若人はそれぐらい目に光を灯しとかんとにゃ、よし、エト、手続きは済んでおるよにゃ?」
「はい、済んでますよ、半年間の家賃免除と食料配給、それにカーペント爺の店【木工芸店 ジマーマン】の正式な跡継ぎ認可」
「うむ、重畳重畳、ハヤトよ」
「は、はい!」
「この店の未来、ひいてはこの村の未来を頼むにゃ、にゃに、心配せんでもちょくちょく様子は見に来る」
こうして俺、木野隼人改めハヤト·キノの異世界生活は始まったのだった




