#60 無尽蔵
(さて……大見得を切ったのはいいものの、ちょっと数が多過ぎるな……)
ミシャリーゼ達を先に行かせ、一人足止めを買って出たラミアの猛攻は凄まじいものであった。
どこから呼ばれているのかすらも分からない無数のガーディアンが容赦なく襲い掛かってくる中、それらの決して遅くない攻撃をなんなく搔い潜り、魔力を込めた剣の一撃を確実に当てていく。
例え死角に潜られようと、瞬後にはその方向の敵を鞭で締め上げる超反応。更には伸びた手のように掴んだそれを勢いのままに放り投げ、一度に複数のガーディアンをなぎ倒す膂力を見せつける。それでもまだまだ余裕を残している戦いぶりからは、彼女がククノチシアを守る者の中でも特に秀でた戦闘能力を有していることが十二分に窺える。
「何故これほどの数を……とでも言いたげな表情であるなぁ」
「別に、ただ鬱陶しいなぁとしか思ってないし……けど。ほんとに何体作ったの?」
一体一体の力は、ラミアにとってさほどのものではない。このまま単独で戦い続けたとしても、一晩程度であれば余裕で凌げてしまうほどに。
しかしながら、ストルグはどうやってこれほどまでのガーディアンを作り上げたのか……それも、自分達の知らぬ間に。彼女は、それだけが疑問だった。
今この瞬間から遡って数日から数ヶ月、里の中で彼が怪しげな様子を見せたことは一度も無い。仮にどこかへ出入りしていたとしても、里中を親衛隊が日夜警備のため動き回っているのだ。
ブラグロリネラの点検のために樹窟へと赴くことが度々あることはラミアも知っていたが、それも時間にすればかなり短い。定期チェックの時間だけで、ここまでの数のガーディアンを片手間に造り上げることはまず不可能であるはず。
「永久に続く、無限の暴力……! 貴様の身がいつ滅ぶかが楽しみだ……!」
「台詞からして三下、やってることも三下……誇り高きエルフを纏める存在の内一人が、こんなだったなんて残念。本性は曝け出しすぎてもよくないことが嫌というほど分かるわね」
慕い続けて来た者の実情を知る中で、どんどん崩れていくこれまでの信用と信頼。もはや今のラミアは、目の前の存在を仲間であり守るべき者としてではなく、ただの醜い何かとしか認識していなかった。
「で? 結局のところ何なのよ? さっきから同じ顔、同じ魔力量……肩部分に、同じ擦れ傷。この感じからして、本物は別にあるようだけれど?」
「ふっふっふ……流石の洞察力だ……!」
第三者視点では激闘を繰り広げながらも、一切息を荒げることなく敵を分析してみせたラミアの答えを聞き、ストルグの口角は吊り上がる。当てて欲しかったのだろうかと思いたくなるほどのリアクションに、ラミアも今度は溜め息が止まらなくなりそうになっている。
正面から来る右の大振りをいなし、同時に側方の敵を蹴り上げ、流れるように後方からやってきていたそれも、魔力を巡らせた握り拳で吹き飛ばす。溜まろうとしている鬱憤を即座に晴らすかのように、迫りくるサンドバッグめがけて暴れ続けるという非効率極まりない戦闘方法へ無意識的に移行するほど、ストルグが現れてから現在までの数分間のみで、彼女の中のストレスは途轍もないほどに至っていたのだ。
「――とあるお方から、『力』を授かったのだよ……! その力と、この洞窟中に存在しているルナクリスタルの力……掛け合わせた我らは盤石、故に無敵!! 中々どうして、気分も悪くないものよ!!」
「何が盤石無敵よ。私に勝ててすらないのに」
「残念ながら私は己の力量も、ガーディアンの性能も把握済みだ。例え勝利せずとも敗北はないことも計算の内……だからこそ、お前は敵足りえぬのだよ!!」
里有数の知恵者とは思えぬとんでもない理論ではあるが、確かに人より遥かにスタミナ量は勝っているラミアとてその体力は無限というわけではない。そんな中こうも延々と戦わされては、いずれ持久力も尽きる。
加えて、この無尽蔵に湧いて出てくるガーディアン。雨垂れ岩を穿つとはよく言ったもので、個々の実力は格下であっても、間違いなくラミアを削り続けている。奥へ行ってしまったミシャリーゼ達という不安材料を抱えたままずっと同じような戦いが続くのであれば、ほぼ間違いなく夜明けまでにこの場所を攻略するのは難しいだろう。
(さっさと全部片付けて皆と合流したいけど……そのためには、このガーディアンの秘密を暴くことが絶対条件……! さぁ、ここから更にどう攻める……?)
答えは、戦いの中で試行錯誤し見つける他に無い。一秒でも早い合流を目指すため、ラミアは光る窟道にて奮闘する。




