第595話
妖精界から地上を見下ろしながらキノコの位置を確認してみた。アクティブな『茸の輪』は白く輝いて見え、ただ輪状に生えているキノコは水色の輪だ。キノコ自体は若干青く見える、いや、食べられるキノコは青く、食べられないキノコは黄色い。そして毒キノコは緑色だ。
凄いな、このキノコマーカー。環状列石じゃないけど輪にして整えられた対象物には何かしら秘密の力が込められているんだな。
青い塊を発見。鑑定を飛ばすと【スライム茸】と出たのであそこにはナメコが生えている。
そして不謹慎な思考が発動。前世で人気を二分したキノコの形をしたチョコレート菓子はこのスキルでは青く見えるのか、無反応なのか……ってね。そしてスーパーのキノコ売り場は陳列棚がそっくり青いんだろうな。
「フランシス=ガージンさん、アクティブな『茸の輪』は白く輝いて見え、休眠状態のものは水色の輪に見えるって事で間違いないでしょうか?」
「ああ、そうだ。休眠状態のものもいつアクティブに変異するかその保証は無いので、不用意に輪の中に入らないに事に越したことはない」
「ありがとうございます。気を付けます。ところで妖精さん達にプレゼントを贈りたい時に、アクティブな『茸の輪』の中にプレゼントを投入したら妖精界に届くものですか?」
「届くには届くが、不審な貢ぎ物は妖しいとされ処分されたりする」
「やっぱり届け先を指定しないと無理ですよね」
「なに、ミーシャ=ニイトラックバーグが『茸の輪』の中に入り、ここに訪ねてくればよい」
「いや、ボクとしてはそこまで大々的にしたくなくて……」
だって、妖精界を訪問するとその度にお立ち台の上で踊らされるんでしょ? 俺、知ってる。
「うむ。何かミーシャ=ニイトラックバーグからの物だと知らせる目印があれば良いのだが」
「あっ、有ります!! スタンプ・サインが有りまーす」
俺のマークと言ったら黄金虫を模したスカラベ印があるじゃない。幸い【鉱夫飴】は常に『キーボックス』に入れてある。身に付けて持ち込んだ物は妖精界に顕現できるってさっき言ってたよね。
「これです。ボクの印、【黄金虫】です。そしてこれは【鉱夫飴】と言う飴です。お騒がせしたお詫びにお納めください」
良かったー。【鉱夫飴】の五・六個なら何時でも進呈出来る。そして、カーン=エーツさんじゃないけど宣伝にもなる。
「黄金虫、それはアレだな。【魔糞沿茸】の周りで酔っ払ってクルクル回っている虫だ」
【魔糞沿茸】!? マツタケの【腐臭亀茸】呼び名も酷かったけど、【魔糞沿茸】ってのもかなり酷い呼び名じゃない?
その【魔糞沿茸】というのは、魔糞、つまり魔力の残り滓 ( 残り滓=糞という表現) に沿って生える魔力を帯びた茸だった。マジックマッシュルームって呼ばれてるけど、前世のそれとは違うんだよね? 黄金虫がマジックマッシュルームの成分でラリってるんじゃないよね???
「そう言えば【魔糞沿茸】は【腐臭亀茸】の近縁種だったな」
まさかのマツタケの仲間発言!! たっ、食べられるキノコなのか!? もし食用可だとしたら魔力を含むキノコを食べても問題は無いのだろうか? 兎に角、見つけたら何色か確認しないと。あ……何のことはない、学園で魔導標本を閲覧すればいいんだよ。
「ご主人様、そろそろ戻んないとマズくない?」
「ますたー かえろ」
「そうだね。初めての妖精界に興奮しちゃってた。また今度遊びに来ようね」
つい長居してしまった。二頭に諭されなかったらまだ居たな。
「ようせいさん またなの」
「フランシス兄、あざーす」
「うむ、また会おうではないか」
「ありがとうございました」
「それではゲートを潜るがよい。入り口の『茸の輪』は不活化しておく故に」
「ばいばいなの」
前世でエレベーターに乗っている時にグッと地面に押される様な重力を感じた。そして目の前が明るくなった気がする。
ムキュウ ムキュウ!!
(「もどたの どわーふ ことば ちがうの!!」)
プープ プープー
(「生きてたしー。ご主人様、大丈夫?」)
「あ痛たた…身体が固まってる。多分、大丈夫」
プキィ
(「飴、貰いに行くしー」)
「あっ、カトリーヌ待って!!」
ムキュウ キュウ
(「ますたー あわてる ころぶの」)
「なんや、まだ飴ちゃん貰てん人おるん〜?」
「はーい!!」
「早よしぃな。無くなるで」
とうやら俺達が妖精界に行ってた時間は地上だとものの数分だったらしい。向こうだと小一時間ぐらい居た感覚だったけどなぁ。そして足元の『茸の輪』の光は消えて水色の輪になっていた。そして、何個か見えていたハズの光の輪は全て不活化して水色に変わっていた。きっとフランシス=ガージンさんが気を使って転移機能をオフにしてくれたんだろう。




