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第593話

『スワロー』で盆踊りと言えばアレしかない。そう首都特許(トッキョー)音頭だ。思い付いたクセにちゃんと踊れないので傘を使おうと思う。傘なんか持ってないだろうって? そこはフキを採らせてもらえれば……。無理ならエア傘だな。


後、知ってる踊りって、踊るアホウの私達(アワー)踊りかドジョウを掬うやつしか知らないぞ。騒乱(ソウラン)節は詳しくないし。一丁目でワオするのは……あれは不敬罪になりそうだ。



幸いフキは採らせて貰えた。精神世界でフキが採れるのかと思ってたけど、実は妖精界だった。


音頭の歌詞なんてちゃんと覚えていない。ノリと勢いでフキを上下しながら歌い踊った。首都特許(トッキョー)音頭の次は茎を折ったフキの葉を被り私達(アワー)踊りを披露。その次はフキの葉をザルに見立ててドジョウを掬った。フォークダンスと言えばジャンケンに負けたら後ろに付いて長蛇の列になるダンスぐらいは覚えていたけど、今ここでやるならソロで踊らないといけない。一人でやったら両手を前に掲げてピョンピョンするだけのキョンシーダンスだったわ!! 虚しい、そして恥ずかしい。そして踊り終わってから気付いた、先頭は腰に手を当てていればよかったという事にだよ。



ぜーはーぜーはー、疲れた。精神体でも暴れると息が上がるんだって初めて知ったよ。



「うむ、愉快愉快。久し振りに懐かしい踊りを見せてもらった」


「フランシス=ガージンさん、どの踊りでしょうか?」


「一番最初の踊りだ。懐かしい。上様は息才だろうか?」



上様ーー!! 上様って過去に首都特許(トッキョー)音頭を披露してたの!?



「特に最後の踊りが面白かった。あれはゾンビの踊りなのか?」



あ〜〜、知らない人が見たらゾンビダンスなんだ。キョンシーダンスじゃないんだ。まぁ、どっちにしろアンデッドだけどね。



「はい。本当はあの踊りは複数で踊るのです。踊りながら魔法の属性バトルを瞬間的に行い、負けたほうが配下に付くというルールで、長い列を作っていきます」


「ゾンビの踊りか。上様から聞いた(ボーン)踊りとはまた別のようだが」



上様、(ボーン)踊りって……。




取り敢えずフランシス=ガージンさんのご機嫌は取れた模様。



「ミーシャ=ニイトラックバーグ、トッキョーダンスを知っているとは、お主はもしかしなくても転生者だな」


「はい。間違いありません」



アンディーとカトリーヌの前で肯定したくないけど、誤魔化しきれない。二頭には後で説明するとして、今は地上に戻る為の最大限の努力をしないと。



「ますたー そなの?」


「ビックリだし」


「秘密にしていてゴメンね」


「まぁ、秘密にしたいだろうからな。お主がトッキョーダンスを踊らなければ我も気付かなかったぞ」



うっわー、やらかした!! そう言えば、オロール先生が流行りの歌や芝居の話には気を付けろって言ってたわ。こんな事ならダンスゲームの選曲にある打者飛球(バッターフライ)のステップでも踏めばよかった。



「ボク、まさかフランシス=ガージンさんが首都特許(トッキョー)音頭を知っているとは思いませんでした」


「それなりに長く生きている故にな。トッキョーと言えばあれは見せてはくれぬのか? ジュリアンヌ=トッキョーのバトルダンスだ」


「ジュリアンヌ=トッキョーのバトルダンスですか?」


「戦場で防塁の上に登り、扇をはためかせながら味方にバフを掛けつつ敵のヘイトを集めるという踊りだ。転生者は皆踊れると思っていたが、お主は知らぬか?」



あ……ディスコのお立ち台の事かよ。それも上様が披露したのか? そしてフランシス=ガージンさんに会った転生者は百パーセント披露してるのかよ。



「あ、上手く立ち回れるかは分かりませんが、それなりには踊れると思います」




まさか、異世界で二度目のディスコのお立ち台。さっき採ったフキの葉を扇形に畳んだ。ジュリ扇がないと掌ヒラヒラで表現しなきゃいけないからな。



「おお、ジュリアンヌ扇だな」



ジュリアンヌ扇ってだけ聞くと、貴族の令嬢が口元を隠す羽根扇を連想するな。肖像画で描かれてたりするゴージャスな扇ね。



「アンディー、カトリーヌ、ボクが踊っている時に、キュウとかプーとか合いの手を入れてくれる?」


「わかたの」


「任せるしー」




ワンレングス(髭)でボディコンシャス(樽体型)なツインテールドワーフ娘が土饅頭の上でフキの葉の扇を手に踊り狂う……。時々、従魔の合いの手。これは何かの罰ゲームなのだろうか。俺が前世の記憶持ち故、男なのにディスコのお立ち台で扇振り乱して踊っているという認識になっているせいではあるが。


あっ……、上様のせいでミケヲさんも殿方ディスコお立ち台を要求されたのか?



そして後ろに控える妖精軍団も喜んでいるというか、さっきと比べても士気が上がってない?



「素晴らしい。猫に踊ってもらった以来だ。これで暫く我が軍の能力も引き上げられるというものよ」



えっ……妖精に踊りを捧げるのって、上様の披露したディスコのお立ち台で妖精軍団にバフが掛かって、それに味を占めた妖精達が踊りを要求してるって事なの?


で、ミケヲさんは昆布と共に夏を刺激する踊りを捧げた……と。それでいくと俺はキョンシーダンスを捧げてしまった訳だけど。



「ところで、パーラー&パーラーの踊りはないのかね?」


「パーラー&パーラーの踊りですか?」


「店員の動きを取り入れた踊りだな。 「こちらでございます」の動きや配膳時の手の動きだと聞いたが」



それ、パラパラだよ。ミケヲさんの転生以降に転生者が確認されていないという事なら、日本で死んだ時期とこっちに転生してくる時期がずれてるって事なの? 俺とミケヲさんの死亡時期も二〜三ではないにしろ、十年単位で離れていないとは思うんだよね。まぁ、似非パラパラもゲーセン知識で踊ったぞ。


それはさておき、平謝りしながら色々踊ったお陰なのか、俺達二頭と一人は地上に返してもらえる事になった。

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