第592話
♪ 森のカジノでチンジャララ
テンパイ 手拍子 口三味線 ♪
♪ ウォ〜ウ オウ ワニだって踊るよ
ラ・ラ・ラ・ラ・ラ
ララララ ラン・ラン・ラン ♪
脳内に聞こえるのは前世で聞いた歌だろうか……。真下に俺が見えるんですけど、って幽体離脱!? それとも意識だけ飛んでる?
「ますたー だいじょぶ?」
「ご主人様、これヤバいっしょ」
「うん、ビックリしたね……って、ボク達普通に話せてる?」
「ぶたさん ぷ〜 ちがうの」
「仲良く寝てるっしょ」
もしかして地上の二頭と一人を鑑定出来る? ダメ元で試してみるか……。だとしたら鑑定と『無礼コール』の重ね掛けかな。
( 鑑定+『無礼コール』 )
ミーシャ:気絶状態、他・異常なし
アンディー:気絶状態、他・異常なし
カトリーヌ:気絶状態、他・異常なし
茸の輪:妖精のダンスホールの入り口。回転扉方式。
見事に揃って絶賛気絶中。そして俺がフェアリーリングを踏んだって事なのかよ。アンディーとカトリーヌは俺の転移に巻き込まれたのか。
仰向けに倒れてる訳ではなく地面に腰掛けてる状態なので、これ、良くも悪くも直ぐには気付かれないって事か。そして茶室と同じ理論が働くなら精神と肉体とでは時間の流れが違うんだろう。
「おや、猫の気配を感じたと思ったら違ったな。ほう、長髭族が迷い込んだか。ん? アリの気配もあるが……」
「隊長殿、いかがしますか」
「あたち ますたー まもるの」
「おやおや、これはカーバンクル」
気付いたら弓矢を構えた妖精軍団に取り囲まれていた。フェアリーリングを踏み抜いた為に侵略者認定されたとかだろうか?
「あの、不躾な質問になりますが、そちらの方々は妖精さんで間違いないしょうか? 知らずに領地に足を踏み入れていたら謝罪します」
土下座の文化があるか分からないので取り敢えず九十度のお辞儀をしておこう。そのまま心の中で三十数える。これで多分、二十秒くらいは頭を下げているハズだ。
「おや、これまた随分と腰の低い長髭族よ。如何にも我は妖精族の一人、フランシス=ガージン。後ろに控えるは我が部隊の兵達よ」
「初めまして。失礼を謝罪します。ボクはドワーフのミーシャ=ニイトラックバーグと言います。脇に居るのは従魔の【グライダー・カーバンクル】のアンディーと【手持ち豚】のカトリーヌです」
フランシス=ガージンの妖精部隊が弓を構えて俺に狙いを付けてるんですが。これ、詰んだ?
「あたち ますたー まもるの」
「アタシもやるっしょ」
アンディーが皮膜を広げて俺の前に仁王立ちし、カトリーヌは大口を開けて煙を吐き出し始めた。
「アンディー、カトリーヌ、待って!! 気持ちは分かるけど落ち着いて。いきなり妖精さんのお家に入り込んだボク達が悪いから。そして喧嘩は駄目だよ、ちゃんとお話ししないと」
「げに腰の低いドワーフよ。皆のもの弓を下ろせ」
「ですが隊長殿」
「なに、舞踏円環では我らの方が有利。いいから弓を下ろせ」
フランシス=ガージンさんが臨戦態勢を解いてくれた。とは言え俺達が不利な条件なのは変わらない。土下座で済むならいくらでもするけどね。
「この騒ぎを説明してもらおうか」
この騒ぎと言うのはキノコ狩りの事だな。ちゃんと説明して謝罪するところは謝罪しよう。
「実は……」
松茸騒ぎは俺が原因だしな。俺の事は嫌いになってもアンディーとカトリーヌの事は嫌いにならないでください!! 俺は無理でもせめて二頭だけは地上に返してくれれば有難い。
「ふむ、それで長髭共が数日前からウロチョロしていたと」
「はい」
「しかし、普通はトラップサークルには掛からぬものだがな。初心なものよ」
「ますたー いぢめる だめなの」
「ふふ…、なかなか主思いのカーバンクルよ。ミーシャ=ニイトラックバーグ、お主はなかなか興味を引く。話次第では地上に戻してやってもよいな」
「宜しくお願いします。ボクは駄目でも二頭は戻してあげてください」
再び九十度のお辞儀をする。頭を下げて帰れるならナンボでも下げます。
「ますたーと いっちょ あたち かえらない」
「アタシも残るし」
アンディーとカトリーヌの気持ちが嬉しい。でも一緒に残らなくていいからな。
「しかし、なぜ長髭族なのに猫の気配がしたのやら」
「それは多分、ボクが猫の人の三毛皇閣下と縁があるからだと思います」
「三毛皇、あの陽気な猫人族か」
「はい」
「それにしてはアリの臭いもするし、雪見酒長耳族の臭いもするな。そして獣臭い」
アリはガーネットをくれたアリさんの事かな? 雪見酒長耳族は古代エルフの事だろうか。じゃあ普通のエルフは何と呼ばれているんだ?
「ますたー なかま たくさん なの」
「で、あろうな。げに面白い長髭族よ」
「あの……ボクは何をすれば許して頂けるのでしょうか? 許されないのなら甘んじて罰を受けます」
殿中、松のキノコ。内匠頭ポジションかよ。尤もここにキラ様は居ないけどな。
「そうだな、妖精に奉納するのは古来より夏を刺激する踊りと決まっている。許されたくば踊ってもらおうか」
え〜〜〜、妖精たちの夏を刺激する踊りって言われても、今ここに昆布は持ってきていないぞ。しかし昆布を巻き付けて踊るのも二番煎じだし、赤羅様に模倣では許してもらえない気もする。さてどうするものか……。
「どうした、『スワロー』の踊りでも構わぬぞ。それとも長髭族には我らを喜ばせる踊りはないとでも?」
ヤバいぞ、踊り、知ってる踊り、パッと思いつくのはフォークダンスだけど、ここにパートナーはいない。後は……盆踊り!? 盆踊りはいける???




