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三、夏の始まり
八月一日。
それが、僕に残された時間だった。
終業式からわずか一週間あまりで、引っ越しの準備を終わらせなければならない。
突然決められた予定に呆れたが、今さら驚きもしなかった。
両親は昔から勢いで物事を決める人たちだった。
旅行の予定ですら、深夜に叩き起こされてそのまま出発したことがある。
だから今回も、「またか」と思っただけだった。
慌ただしく荷物をまとめていたある日。
学習机の一番下の引き出しから、一冊のノートが見つかった。
飾り気のないB5サイズの方眼ノート。
見覚えはない。
なぜか誰かの忘れ物みたいだと思いながら表紙を開く。
一ページ目には、可愛らしい丸文字でこう書かれていた。
私を知らない大切な友人に捧ぐ
意味が分からなかった。
首を傾げながら次のページをめくる。
そこには日付と、その日に起きた出来事が細かく記されていた。
登場人物には性格や特徴まで注釈が添えられている。
几帳面な人間が書いたのは間違いない。
それなのに――。
日付だけが、ところどころ抜け落ちていた。
まるで僕の記憶みたいに。




