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第7話 黄金の国

新たな権能『因果の予見(フラグ・リーディング)』を手に入れ、英雄アリアが過去に戦った敵の行動パターンを解析、そして予測することができるようになった。


これがものすごく便利な権能で、熊の魔獣との一戦以降、俺達は順調に魔物を蹴散らしてきた。


俺達の戦闘スタイルは、従来のものとは一風変わっている。

前提として、俺に戦闘力は皆無だ。

だから、俺の役割は言わば『司令塔』に近い。


まず『共鳴領域レゾナンス・フィールド』を行使して、カノンの魔力操作のお手伝い。


次に『因果の予見(フラグ・リーディング)』で敵の攻撃予測し、それをカノンに伝え、カノンがその予測を元に戦うという戦闘方法。


これだけでも、熊の魔獣のような初見殺し技を防いできた。


蛇の魔獣の毒霧攻撃。

花の魔物の胞子爆弾攻撃。

狼の魔獣の一体を囮にした組織的な伏撃などなど。


英雄アリアが過去に戦った敵との戦闘に限っては、俺達に圧倒的なアドバンテージがあった。


俺達は順調に魔物を倒していき、『聖域の外縁』と呼ばれる魔物が蔓延る森に入ってから5日経過した。


「なぁカノン、いつになったらこの森を抜けるんだ?」


「多分、予定通りならもうすぐよ」


「もしかして、こんな危険な森に囲まれてる国って事は、ルミナリアって国も危険なんじゃ。嫌なんですけど」


「それは大丈夫よ、あの国は『神の加護』の結界によって守られているから」


「『神の加護』?なにそれ」


「なんにも知らないのね…。あの国は聖教国って言われてるだけあって宗教国家なの。唯一神ルミナリアを祀り、ルミナリアの加護を受け生活している。その国を囲む結界もルミナリアの加護によるものらしいわよ」


「唯一神、か。神様って本当にいるとは思えないんだけど」


神は人間が作り出した、縋るための偶像にすぎない。そこに科学的根拠もクソもない、俺としては容認しようにもできない存在だった。


「へ〜けど私はいるって思うけど?アンタの特殊能力だって、神様から与えられたモノかもしれないわよ?」


「んーー、確かに、それは否定できないか」


しばしば俺の脳内に流れる『機械的な声』、その声の正体は一体何なのか。

俺の頭に響くあの無機質な声が、もし本当は神の慈悲なのだとしたら?

そうだとしても、なぜ神は俺にこの力を与えたのか。


いや、今考えても答えは返ってこない。

と、俺は無駄な思考を投げ捨て現状に目を向ける。


「でしょ?……あっ、ハク、見えてきたわよ」


「まじ?って、、すんごい金!?」


視界を塞いでいた鬱蒼たる枝葉が、カーテンを開くように左右へと割れた。

飛び込んできたのは、網膜を焼くほどの鮮烈な黄金だ。

降り注ぐ陽光を跳ね返す純白の外壁と、天を突くようにそびえる金色の尖塔。


そして、何より圧巻だったのは、都市の天冠を優しく、それでいて峻烈に包み込む大いなる光の膜、黄金の結界だ。


完璧に整備された都市、逆に不自然にも覚えるような綺麗な国だった。


オリジン王国を出発して、約13日。ほぼ予定通り2週間で到着した。

ようやく長く暗い森から抜け出したのだ。


『黄金の国』聖教国ルミナリア。


「……この結界が神の加護ってやつか」


「そう、この結界があるからこそ、ルミナリアは世界有数の大国になったって話よ」


「なるほどね。そしてこの中に『ルミナス』って人がいるってわけだ」


こうして、俺達は聖教国ルミナリアに入国するため、正門に向かったのだった。







「ふー、案外簡単に入れたな」


「そうね、ソレがあったとしても、入国審査がザルな気がするけど…」


俺達は簡単にルミナリアに入国することができた。


実際、聖教国ルミナリアに入るには身分証が必要となる。カノンはさておき、自分の事も分からない俺の身分証などある訳がない。


まぁ、本当なら入国なんてできないのだが、今回はトライアさんからの神器チートで通過することが出来た。


俺が手に持つ白の封筒、その中にはトライアさんが書いた俺達の紹介状だった。

ルミナリアへの旅行という名目で発行されたものである。


実はトライアさん、他国でもかなりの有名人らしく、あの嘘を見抜く能力を評価されて、色々な国で引っ張りだこなんだとか。


そして、人々からつけられた二つ名は


『地獄の尋問官』


トライアさんに尋問されたら最後、嘘をつく事も言い訳することも許されず、真実を吐き出すことしかできないんだとか。


まぁ、俺はその能力を利用したわけだけど。

本当のことしか話せないとなると、犯罪人からしたらたまったもんじゃないだろう。


というわけで、トライアさんの名声を行使し、身分証無しで入ることが出来たってわけ。


「それでハク、入れたのはいいけど、そのルミナスって人の手がかりは無いの?」


「それが無いんですよ」


「無いって…なんか作戦とか方法とかないの?」


「んまぁ、あるにはあるけど、原始的な方法だな」


「原始的?粗探しってこと?この国相当広いと思うけど·····おバカ?」


「なんで何も言ってないのに侮辱されないといけないんだよ!原始的な方法ってのはな──」


「…てのは?」


「『人に聞きまくる』!」


「それを粗探しって言うの!」


「まぁ否定はしない。けど、現状これしか方法がないじゃん?」


「はぁ…それもそうね。早く始めましょう」


こうして、俺達は記憶ログに流れた女性、『ルミナス』探しを開始した。









鉛色の石壁に、壁際を埋める木製の書棚。

石壁の継ぎ目からは、幾筋もの涙のような水の跡が滴り、床に濁った水鏡を作っている。


その部屋の中心にある椅子に佇むのは、一人の白髪の女性。綺麗な三つ編みのサイドダウンに、特徴的な長い耳。そして、純白の白髪とは対照的な黄金の双眸。

まるで、聖教国ルミナリアを写し出したかのような錯覚を覚える容姿。


「──!この気配、もしや…」


灰色の寂れた部屋に似合わない美麗の彼女が、驚いた表情で座っていた椅子から立ち上がる。


「……いや、違う。もう『希望』は潰えたのじゃ、あるはずが無い」


女性はさっきと違い、どこか諦めた眼差しで虚空を見上げる。


「そうじゃろ、アリア。貴様は、もう…いないのからな───」


虚空を見上げる黄金の瞳は、すでに希望という光を拒絶し、冷徹な灰色のおりに沈んでいた。

いよいよ、記憶の中の人物、ルミナス探しが始まります!


次回第8話『白金の魔女』です!

お楽しみに〜



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