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『未完成の英雄』と『未詳の青年』  作者: むぎ茶
序章 二人の始まり
3/10

第3話『英雄の導』

信頼を証明するため、訓練場へと足を運んだ俺。

そこは、俺が目覚めた純白の大屋敷のすぐ外に併設されていた。


「さて、着いたぞ。さっそくお手並み拝見といこうか」


「えっと、具体的に何をすれば?」


「言ったはずだ。彼女を導く力があることを示せ、とな」


具体的とは……。この人、案外大雑把だな。それにしても「力」か。

俺は地面に座り込み、思案に耽る。


まずは、今起きている事象を整理しよう。


なぜここにいるのかも謎だが、現状で最も有用なのは、脳内に『記憶ログ』が流れ込んでくる現象だ。そのおかげで、トライアさんを『嘘発見器』として利用できた。


問題は、その『記憶』が流れる条件が不透明なことだ。

今までの情報から仮説を立てるなら、「特定の対象を視認した際、その対象に付随する情報を引き出せる」といったところか。


ポーションを見たときも、トライアさんと対面したときも発動した。

この仮説は、案外立証されているかもしれない。

しかも、どちらも極めて有益な情報だった。

ならば、カノンについても同じことを試せばいい。


思考時間:三秒。


俺は考えが固まりその場で立ち上がる。


「…よし、カノン。昨日出してた炎を見せてくれないか?」


「?、まぁそれくらい、いいけど…」


カノンは要求に戸惑いながらも、自身の掌に鮮やかな紅炎を灯す。

そのとき、彼女の橙色の左目が、紅に染まっていることに気づく。


(なんだその瞳の変化は?)


───!


そして案の定、脳内にノイズが走り、ある記憶が映し出された。


「──なるほどな…それ、本来の火力の半分程度じゃないのか?誰かに注意されたことない?」


「え、なんでそれを知って…」


図星だったらしく、カノンは目を丸くして言葉を詰まらせた。その露骨な反応に、俺は確信を深める。


「まぁ、さっきと原理は同じ。脳内にある『記憶ログ』が流れてきた。その記憶ログには、カノンに何かを教えている人物がいて、その人は青い炎を灯していた。この世界で物理法則が適応するか分かんないけど、実際、赤い炎よりも青い炎の方が温度は高い。500~1000度ぐらい違うんじゃないかな」


記憶喪失だが、物理や化学のことはよく覚えていた。

身元のことはまったくだけど。


「…その『記憶ログ』?で、私に教えているのは、多分お姉ちゃんだと思う。何回も言われてたし」


「なるほど」


予想外の情報のおかげで、新たな仮説が立てれそうだ。


さっきの記憶ログは昨日の女性で決まり。

つまり、病室での記憶ログも同じ人物の記憶だとすると──


「つまり、君は『英雄』アリアの記憶を閲覧するができる、というわけか」


俺の結論をトライアさんに先に言われ少し不服の俺。


「閲覧…とまで便利なものではなさそうですけどね、まぁ概ね同じです。それにしても、あの人ってアリアっていうのか…」


「君は本当に変なやつだな。英雄の名前も知らないとは、物知りなのか非常識野郎なのか分からんな」


「野郎って……酷いお方。まぁ概ね合ってますけど」


すると、話を聞いていたカノンが不思議そうに俺へ近づいてきて、俺の目を必要に凝視する。


「そんな見つめられると照れるんですけど」


「……やっぱ、アンタの左目、白色に変化してるじゃない。…ってことは、その記憶ログってやつは『特殊能力』なのね」


「なに?左目が白色?」


「はい」と、トライアさんが何処からともなく現れた手鏡を渡してきたので、俺は自身の左目を確認する。


「…マジで白色じゃん、白内障じゃないのこれ」


鏡の中の俺は、奇妙な姿をしていた。

左の瞳から色彩が抜け落ち、磨き上げられた白磁のようになっていた。


「それは『特殊能力』を使用する際に生じる『色変わり』だ。皆、『特殊能力』を行使すれば必ず左目の色が変化するになっている」


なるほど!だからさっき、カノンの左目が紅色に染まったわけだ。


それにしても、『特殊能力』ってのがあるのか。

ということは、おそらく、トライアさんの嘘発見器もその部類に入るのだろう。


…いや、まてよ。さっきのトライアさんの瞳は何も変化してなかった気が…。


───!


(まただ)


再びノイズが脳内に帰来する。


「と、いうわけで、その赤い炎を青い炎にしてみますか」


「簡単に言わないで、何年経ってもこの癖は直らないの。そんな軽々しく…」


「大丈夫、記憶ログが流れた、英雄のね。まぁもう一回炎出してみて」


今流れた記憶ログには、英雄アリアの蒼炎が映し出されていた。

ここで、俺はその蒼炎を取り巻く謎の『黒い粒子』が漂っていることに気づいた。


「質問だけど、その炎って何を元に燃焼してる?酸素か?」


「酸素もあるけど、魔力がほとんどよ」


なるほどな、この黒い粒子は魔力ってやつなのか。

俺は記憶ログの映像とカノンの映像を映し合わせるように思考を進める。


──『同期リンク』完了


機械音が脳を叩いた瞬間、世界の見え方が変わった。

紅炎の周りに浮かぶ黒の粒子:魔力が可視化された。


「すっごっ!こんなこともできるのか!」


今俺が脳内で処理していることはプログラミングに近いものだろう。

さてさて、後はこの二つの炎の違いを見つければ、カノンの悪癖の原因が探れるイージーゲーム。


観察して分かったことは、蒼炎周辺に浮かぶ魔力はまばらであり、それに比べ、カノンの紅炎には数十倍もの魔力の粒子が漂っていた。


「……解析完了っと。結論、カノンは炎に魔力が十分に送れてなくて、空気中に魔力が逃げてしまってるんだ。いわゆる不完全燃焼かな。とりあえず、魔力をより炎に集め圧縮することに集中してみてくれ」


「そんなこと急に言われたって、それが出来てたら苦労してないの!」


結果、カノンの炎は一メートルほどまで上昇。

大きくなるだけで、魔力が逃げていることは変わってなかった。


「熱っ…、まぁまぁそんな気張らず、肩の力でも抜いて──」


そう言って、俺はカノンの右肩に手を添えた、そのときだった。


──『英雄のみちびき』の権能『共鳴領域レゾナンス・フィールド』の条件クリア。

──伝導パス完了


「「えっ」」


さきほどの機械音がまた脳内に響く。


そして、カノンの様子がどうもおかしい。

何かを一心に見つめるような状態で体が硬直していた。


「おーい、何かあったか?」


「…うん、見える、見えるの。自分の魔力が、お姉ちゃんの記憶が」


「まじ?この記憶ログって共有シェアできるんだ」


おそらく、今俺が見ている映像をカノンも見ているのだろう。


「いけそうか?…そうそう、その調子で魔力を中心に圧縮するんだ」


「こ、こう?」


カノンの掌の炎は、より小さく、しかし、より高温に変化していく。


「いいぞ!そのまま圧をかけまくれば…」


一番温度の高い外炎から、内炎、そして炎心へ、だんだんと蒼の炎へと変化していく。


「できたっ!」


掌の上で灯っていたのは、拳サイズの小さな蒼炎。

ただし、その大きさとは裏腹に、火力は赤い炎の二倍にも及ぶだろう。


「ナイス、カノン」


俺はカノンに右拳を突き出す。


「……ありがと」


俺の拳にカノンの拳が当たる。

少し照れくさそうな様子のカノンに思わず笑みがこぼれる。


「ははっ、照れてやんの」


「う、うるさい!この記憶デタラメ黒髪変人!」


「何その悪口?!」


「君たちの仲が良くなって何よりだ」


言い争いをする俺たちにトレイアさんが水を差す。


「仲がいいように見えます?」


「あぁとっても。…それで、カノン。最後に問いてもいいか?」


「…なんでしょうか」


トレイアさんの黄金の瞳が、これまでにない冷徹な光を宿した。

さっきまでの和やかさは消え、そこにあるのは「尋問官」としての冷厳な顔だ。


トレイアさんの威圧にカノンの表情も強張る。


「あなたは、彼を信用するのか?」


「…」


「彼が、英雄の死の傍らにいたことは秘匿している。彼の情報を知るのは私とカノンだけだ。あなたが信用しない場合、私の裁量で彼の処遇を決める」


まずい、非常にまずい。

カノンに信じてもらえなかった場合、もしかして俺、粛正される可能性あるってこと?!


「……私は──」


長い沈黙の後、彼女は重い口を開いた。


「私は、彼を信じてみたいです」


賭けに勝った瞬間だった。


「彼が怪しいのは変わりませんが、姉を殺すような人には見えなかったです」


「ふむ、なら後の判断はカノンに一任する。よかったな、変人」


「ん…?凄い複雑ですけど、良かったです!」


こうして、俺はカノンの信用を勝ち取り、粛正ルートを回避することができた。


そして──


「『英雄の導』、ね」


俺の謎多き特殊能力の一端が、垣間見えた瞬間でもあった。


主人公は新たな能力『英雄の導』を巧みに扱い、自身の信頼を獲得するのに成功した。その後、彼らはこれからの方針を考えることになる。


次回は『決意と記憶』です、お楽しみに〜

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