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第10話 白に染まる悪意

投稿し始めて約二週間、二桁となる10話まで来ました!私の作品を読んでいただき本当に感謝しかないです(泣)


まだまだ第一章は続きますので、引き続き応援して頂けると嬉しいです!

「お婆ちゃん!その書室の場所ってどこか分かる??」


「え、えぇ。でも、ここ60年通って無いけどねぇ…、まだ壊されてなかったらあると思うよ」


まさに天啓、行くしかない!


「言ったろ?カノン、計算通りだって」


「一言も言ってないわよ」







こうして、俺たちはお婆ちゃんから書室までの道が書いた紙を貰い、すぐさまその場所へと向かった。


「いやぁ、まさかこんな奇跡が起きるなんて、もうあのばあちゃんが神ルミナリアでいいだろ」


「あのね…、まだそこにルミナスがいるかなんて分かってないのよ?新情報に浮かれるのはしょうがないけど」


「まぁね〜、ま、今日の捜索はこれが最後かな」


お婆ちゃんと出会ったカフェから歩いて1時間程歩いたと思われる。

空は橙色の夕焼けに染まり、もうすぐ夜になる時間だ。


「さて、と。着きましたか」


そこはルミナリアの中心から遠く離れた僻地で、中心の豪邸街の華やかさは消え、一般住宅が立ち並ぶ住宅街の中だ。


そして、着いた場所にあるのは、住宅街に似合わない地下へ進む石の階段。

先は暗闇で見えず、どれほど深くまで続いているのかが想像できる。


「そんじゃ行きますか」


俺たちは暗闇の地下へ足を踏み出す。

明かりはカノンの炎で照らして進んでいるが…


「あの、いつになったら蒼炎を自力で出せるようになります?カノンさん?」


「スミマセン」


反省してるのか分からないカノンに、呆れて息が漏れる俺。

それに、怖いからなのか、俺の後ろの服の裾を引っ張って後ろを歩いている。


「暗いの怖いんですか?かわいいところもあるんだな〜って?!いて゛て゛っ!!首しまるぅぅ…!」


俺が煽った結果、カノンの服を引く力がいっそう強まり、首に襟部分が引っかかって息ができなくなる。


「うるさいっ…、とっとと進みなさいよ、記憶デタラメ変人」


カノンの手が離れ、ようやく気道が開放される。


「い…いつもの悪口頂きました…」


そうして歩いて数分、下に続く階段は終わり、小さな立方体の空間に出た。

そして、目の前には綻びた木の扉が俺たちを待ち構える。


「明らかに人が住んでるとは思えないけど……ってハク?」


「ではさっさく、おじゃましまーす!!」


俺はカノンの制止を振り切り、躊躇なく扉をこじ開けた。


「ちょっと!?何してんのよ!相手は魔女なんだから、少しは警戒を──」


カノンの俺への注意は、扉の先の景色で止まった。


「誰もいないか」


目の前に広がるのは、人影の微塵もない無い、小じんまりとした書室だった。

四方を本棚に囲まられ、様々な本が収納されていた。部屋の中央には埃を被った木製の机に椅子。


「やっぱり、ダメね…。せっかくの手がかりも…」


「結局振り出しに戻るか、、ん…?」


俺は本棚にある本を手に取ると、ある違和感を覚える。


「…?、どうしたのハク?」


「埃がない、な」


「それが、どうしたの?」


この本には埃がかぶっていなく、保管状態が不思議なぐらい良い。

俺は他の書物も漁るが、どれもこれも埃のほの字もないほど綺麗な状態だった。


お婆ちゃんによれば、60年はここに来ていない。これほどの時間の間があって、これほど本の状態が良いのは不自然だ。


それこそ、誰かが管理している程に。


加えて、この書室は記憶ログの景色とひどく似ている。

これがただの偶然なのか…?


「何十年も無人だったのなら、こんなに本の状態が良いわけがないんだよ。誰かが定期的に管理してないと理由がつかない」


「確かに、けどお婆ちゃん以外の人がここに来ているだけじゃないの?」


「まぁその可能性もあるか。管理者がいないとは限らないし」


肝心な『ルミナス』の姿がない以上、この部屋はハズレなのだろう。


「ルミナスがお出かけしてるだけとか無いかなぁ」


「封印されてるのに、呑気にお出かけしてたらルミナリアが驚くわよ」


「確かに!カノンって意外と賢いんだな」


「意外って何よっ!?」


こうして最後の手がかりも空振りで終わり、日も落ちてしまったため、俺たちはトライアさんに予約してもらっていた宿屋で泊まることに。


カノンと食事を済ませた後、俺とカノンはそれぞれの部屋に戻り、俺は一人、ベットの上で思案していた。


「空振りだったとはいえ、カスってはいる気はするんだよな…」


記憶ログの中の書室と、今日見た書室はほぼ同じ。因果関係が無いとは言いきれないだろう。


「もしかしたら、他に同じような書室があるのかもな」


今日のような書室がこの国に複数あるとしたら、今回のようなハズレもあるかもしれない。


「明日も手当り次第探すしかないかぁ〜、うん、非効率極まりない!」


ただこれ以外に策はない以上、これが最善手だしな。


こうして俺は思案を止め、明日に向けて眠りに落ちたのだった。







ルミナリアに来て二日目。


俺たちは二手に分かれてルミナス探しを再開する。


カノンは引き続き街で聞き取り調査。

俺はもう一度昨日の書室に向かい、ルミナスがいないか再確認。

そしてそれが終わり次第カノンと合流し、調査に移った。


しかし、結果は惨敗。

ルミナスが書室に現れることもなく、新たな情報も得られなかった。


途方に暮れる中、ルミナリアに来て三日目の朝を迎えた。


「やっぱ、早朝の散歩は最高だな〜」


今は大体朝の五時頃、影はまだ長く、閑静な住宅街はまだ眠りの中にある。

その中を俺は鼻歌を歌いながら歩いていた。


実は昨日も朝の散歩をしており、日課のようになっている。俺は朝起きるのが早く、カノンはまだすやすや眠っているので、こうして頭の整理がてら街をぶらついているんだよね。


「とりあえず、今日もあの書室の確認をするか」


俺は一昨日の地下書室に向けて歩みを進める。

望みは少ないが、万が一見逃している可能性もあるので、その確認だ。


「とはいっても、どこで区切りをつけるかだよなぁ」


ルミナス探しは、今日で三日目。

記憶ログに出てきたからという理由で探しているだけで、英雄アリアを殺した犯人の情報を得られるとは限らない。


今日も何も情報を得られなかった場合、進退について考えないといけないかもな。


そう結論付け、前の書室に向けて歩き進める。しかし、歩いて30分、ある違和感に襲われる。


「……もう、5時半だよな?」


独り言が、驚くほどはっきりと尖って聞こえた。

昨日は聞こえていたはずの鳥のさえずりも、散歩する人々の足音も、今は何ひとつ聞こえない。世界から「生活の音」がすべて抜き取られたような、鼓膜が痛くなるほどの沈黙。


元々閑静な住宅街だが、違う、何かおかしい。

俺の呼吸と心臓音しか聞こえない、異常すぎる静けさだ。


考えすぎか、嵐の前の静けさなのか。


嫌な予感がする───。


「不味いな、、トライアさんから治安は良いって聞いてたから、油断してたな…」


今、カノンという戦闘担当は不在。

ここに居るのは頭脳担当の俺だけ。


襲われたら非常に不味い状態だ。


「おい、誰かいるのか??何が目的だ」


俺の問いは静まり返った住宅街に響くだけで飛散する。


(ただ、『誰かに』見られている…)


何か、俺の見えない場所から覗き込まれているような、そんな気持ち悪い感覚。


俺は腰にかかる鞘から剣を抜く。


ちなみに、今までほぼ抜いたことは無い。なぜなら極力運動をしたくないからだ。

疲れるのは嫌だし。


この剣にビビって退いてくれるといいんだけどな〜。


そんな淡い期待が叶うはずなく、『見えない視線』がジンワリと、そして確実に俺の精神を削っていく。


誰だ…?

ルミナスを探す反逆者がいる噂を聞いた兵隊か? ただ単純に俺への悪意?


それとも───


最高で最悪のパターンが俺の脳裏に浮かぶ。


「!!、もしやルミナス──!」


「あら、やっぱり()()()を探しているのね」


「は───?」


正体不明の声が響いた直後、後頭部に焼けるような衝撃が走る。


崩れ落ちる視界の中で、石畳の上に汚れひとつない純白の裾が滑り込んできた。


(何、を、された…?)


剣を振るうことすら出来なかった。


俺は薄れゆく意識の中で、目の前に立つ誰かを確認する。


顔は角度的に視認できず、見えるのは全身を覆う純白のローブ、そして白布の隙間から見えるのは、陽光に照らされ輝く、ひどく無機質な白髪。


「ふふふ、使える駒だといいけど──」


(ルミナス、じゃ、ない?なら誰……)


答えを求める間もなく、俺の意識は底知れぬ暗闇へと沈んでいった。










ルミナス探しに苦戦を強いられるハクに、追い打ちをかけるように白い悪意に襲われた。

はたして、ハクの命運はどうなるのか───


次回第11話『運命を分かつ大博打』です!

お楽しみに〜

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