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短編集22〜26年  作者: 汪海妹
結婚はゴール、ではない?
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プロローグ

男はその時、所用があって百貨店の地下の売り場にいた。人を訪ねる前に手土産をと思って売り場をそぞろ歩きしていたのだ。そんな時、ふと少し離れた洋菓子のブースで店員にあれこれ尋ねている女が目に入った。


初めは、どうしてその女に目がいったのか自分でわからなかった。しばらくしてわかった。声、聞いたことのある声。


人々の賑やかに行き交う雑踏の間で、少し角度をつけながらそっと近寄り、その女を見る。


黒くてまっすぐだった髪が全く違う。色や長さが異なり、また巻かれていた。服装も美月なら選ばないような派手な柄の服だった。それで、見間違いかと思った。しかし、また声がした。この声、この話し方……。


もう一度顔を見る。似ている。顔、背丈、体つき。美月に似ている。


そこに不意に背の高い男が現れた。男の方を見て笑う女。会計を済ませると、菓子の入った袋を男が持って、二人は手を繋いで歩き出した。


そのまま見送ることができなくて、後ろをついてゆく。百貨店の中の人と人の間を追うのだが、幸い男の背が高いので見失うことがなかった。


「ちょっとこれ、いいかい?」


とある角で男は足を止めた。売り場に飾ってあった男性用の帽子を、引っ掴んだ。


「足りる?」


適当に二、三枚の紙幣を投げるように置いて、そのまま被ると店員が慌てた。


「お客様、値札が」

「すまんね」


パチンとハサミの音が鳴ると同時に、そのまま歩き出す。


「お客様、お釣り」

「取っといてくれ」


あたりを見渡す。見失った。ため息が出て、肩の力が抜けた。と思ったら、視界の端にちらりと女の派手な服の紋様。そちらを見ると男と女が上の階へとエスカレーターで向かっているのが見えた。


午後にある約束のことをすっかり忘れて、その後を追った。

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