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「それでは、誓いのキスを」
チャペルのガラス張りの四方の窓から覗く海と空、波の音に囲まれる。夕闇にはまだ早く、一面の青。青は好きな色だ。ここで式をあげたかった。モルジブもよかったけど、グアムもいいな。新郎の悠介がそっと顔を寄せるのに合わせて瞼を閉じながら、麗奈はそんなことを考えていた。
式が終わって、チャペルからそのままビーチへ出る。ドレスのままで風を受ける。空の端から染まってゆく空。やっぱり海に近い結婚が好きだな。最高に綺麗な景色と、その中に立つわたしと、そして、それを綺麗だなと思って見ている人がいればそれでいいんだ。他には何もいらない。
「二人っきりで式を挙げる人って、そんないないですよね?」
背中の方で悠介が、式の撮影クルーと話している声が聞こえる。
「いや、海外婚ではむしろそれが普通ですよ。一緒にきたとしても親兄弟ぐらいとかね」
「あ、そうなんだ」
麗奈が振り向くと、タキシード姿の悠介がクルーからこちらへと視線を流して、それから目を細めた。砂浜をこちらへと近寄ってくる。タイが少し歪んでいたので麗奈が直した。
「やっぱりあのグレイの方が良かったのに。砂の白には合ったわ」
「自分がいくら1日だけとはいえ、あんな笑える衣装を着るのはごめんだね」
悠介は、明るめの青をベースにしたタキシード姿だった。
「強情ね」
悠介は笑った。悠介は笑うと目尻に少し皺がよる。口はいつも曲がっているのだが、笑顔は素直で、この笑顔が麗奈は嫌いではなかった。悠介の手が伸びて麗奈を捕まえる。
「綺麗だね」
「その後にどうせ海がっていうんでしょ?」
「よくわかったね」
「もう……」
「嘘嘘」
抱きしめられたままで悠介を見上げると、悠介がこちらを見ている。
「綺麗だね」
今度はちゃんと麗奈を見ていた。そう、これが必要なのだ。綺麗な自然と、綺麗なわたし。そして、わたしを綺麗だという男。
「じゃ、そろそろいいですかー」
撮影のクルーから声がかかる。その声に麗奈と悠介はカメラの方を向いた。写真自体にそこまでこだわりはなかった。今日という日を、写真ではなく自分の目に、体に、刻みつけたかったから。




