変わってきているよ
変わってきているよ
大和は飛行機からおりて日本の地に足をつけると、いつも必ず一番最初にわたしに電話をかけてくる。事前に連絡をしない。わたしからすると突然、わたしに電話をする。学生のように自由な身でもない。当日突然電話をかけてきて会いたいだなんてそんなわがまま、社会人としてどうだろう?
「はい」
「琴葉?」
でも、スマホに浮かぶ大和の名前と、彼が嬉しそうにわたしの名前を呼ぶその声を聞くと、どうしても……
愛さずにはいられないのだ。この愛は自分をどこにも連れて行かないのだろうとわかっているくせに。
小学生の頃、わたしは比較的発育が早くて、大和よりも背が高かった。下に妹や弟がいるせいか落ち着いていて、反対に大和はやんちゃだった。大和は幼馴染の蒼太と一緒に何かしら、先生が怒るようなことをしては廊下に立たされているような子供で、でも、クラスの人気者だった。それにほとほと手を焼いた教師は、弟と妹の面倒でも見るように大和と蒼太の面倒を見ろとわたしに言いつけた。
懐かしい。あの頃。まだ大和の背がわたしよりも低かった頃。
お姉ちゃんなんだからと言われて、四角四面に生きている自分には、自由な大和が眩しかった。こういう感じ、自由に生きている人にわかるのだろうか。
自分はつまらない人間だ。いつも周りの目を気にして。
中学生になって、高校生になった頃、わたしたちはまだ同じ学校にいた。わたしは学年で上の方にいる優等生で、大和たちは下の方から数えたほうが速い劣等生。
「桜井さんみたいな人がさ、どうして五十嵐と関わるの?」
高校生の頃、時々こんな疑問を複数の人から寄せられた。その人たちは様々な表現とそれぞれにちょっとずつ違う熱意でもって、二人は違う世界の人間なんだと繰り返した。わたしを説得しなければならないと信じているようだった。でも、わたしは大和と繋がっていたかった。
わたしは大和みたいになりたかった。でも、わたしは変われない。変われないからせめて、彼のそばにいて彼を見つめていたかった。
今日中にしなければならない仕事を大急ぎで片付けて、明日でもいいものはそのままにして会社を出る。自分の奥の方から弾むような何かが湧き出てる。でも、その弾みは電車に乗って揺られながら夕陽を見ていると、少し変わってくる。スマホが揺れる。画面に短いメッセージが浮かぶ。
「今どこ?」
空港から向かってくる大和と駅名を送り合いながら、相変わらずワクワクはしているのだけれど、それだけではない心の底を見ないようにする。
高校生になると屈託のない性格の大和には時々、彼女ができるようになって、その子達はわたしなんかと比べてもっとわかりやすくかわいく見えた。わたしはそれを眺めているしかなく、また、自分の気持ちを伝える勇気がなかった。
遠くから眺めていると、彼女がいて恋をしているはずの大和は、でも、そこまで本気ではないように見えて、そして長続きしなかった。
そんなある日、蒼太に好きだと言われた。心の底から本当に驚いた。わたしのようなつまらない女を好きだと思う男の人がいることに。蒼太のことを好きだと思ったことはなかったけれど、でも、好きだと言ってくれたことに対しては応えなくてはならないような気がして随分悩んだ。
誰にも言ったことはなかったけれど、でも、わたしは大和のことが好きで、だけど、それはきっと一生叶わない。
それなら傷つく前に諦めてしまおうかと思ってた。あの頃。
駅の改札を抜けて待ち合わせ場所に行くと、いるはずの大和がいない。駅名を言い合っていた感じから行くと、絶対に大和の方が先に着いたはずなのに。しょうがなく駅地下のパン屋の脇に立って、地下道の店なみと過ぎ去ってゆく人たちを眺める。
あの人たちは幸せなんだろうか。こうやって眺めてみると、みんな前ばっかり見ていてそれ以外は何も見てないんだな。
「琴葉、おい、琴ちゃん」
揺さぶられて気がつく。
「ぼうっとして、何考えてたの?」
会えば嬉しい。会えば愛しい。地下道の片隅で、自分の生命が白く明るく燃えている気がする。
「どこいこっか」
わたしを待たせてる間に、どっかで買い物してたらしい。買い物袋を持ち替えてわたしの手を繋いで、前へと歩き出す。まるで毎日そうしているかのように自然にわたしと手を繋ぐ。
会えば嬉しい。会えば愛しい。そして、会えば苦しい。会えば地獄。地獄が続いていく、この先もずっと。
嬉しさと一緒に立ち上がってくる悲しみの量は、時が過ぎれば過ぎるほど増えてくるようだ。外国から帰ってきたからだろう。この街とは異質な香りのする大和と歩きながら、少しだけ泣きたかった。
道で歩いている時から大和はのべつまくなく喋り続け、やがて結局今まで何度も来たことのある居酒屋の片隅に並んで座る。
「だからさ、日本ってさ、出汁の匂いがするの、感じない?」
「いや、わかんない」
「琴葉も長く日本離れてみ?そしたら俺のいってることわかるって」
「あ、そう」
日本に帰ってきて飛行機から出て、その出汁の匂いがするまでは、大和はわたしのことを思い出さない。きっちり忘れてるのだと思う。
大和は高校を出た後に三流の大学に入ったのだが、途中でカメラにハマり、大学を途中で中退してカメラの専門学校に入り直した。そして、卒業してからはたまに彼のいうところの写真家としての仕事をしながら、他にもバイトを掛け持ちし、お金が貯まったらそれがすっからかんになるまでカメラを持って海外に行ってしまうのだ。もう何年もそんな生活をしてる。
今回は、地中海に浮かぶどこかの島を転々と回っては、写真を撮って帰ってきたという。いつ、どこへいって、そして、次はいつ帰ってくるのか。そんなこといちいち言わない。突然いなくなり、突然帰ってくる。そして、日本にいる間も、気が向いた時だけ連絡が来る。それが大和だ。
「それで、その猫ね、人間が来てもどけないの」
「車に轢かれたりしないの?」
「轢かれないよ。人間も車も猫を避けるの。猫はどけないの」
「うそ、ほんと?」
「な、日本じゃありえないだろ?」
彼は顔をくしゃくしゃにして笑い、よく言う言葉を口にする。
「あー、琴葉にも見せてやりたかったなぁ」
でも、それは彼の嘘なのだ。わかってる。わたしというつまらない現実を思い出させるものを彼がわざわざ海外に連れていくわけがない。わたしは引き続き、日本にはありえないような猫のいる地中海のとある島の話を延々と聞いた後で、席を立つ。
商店街をぶらぶらと歩きながら、大和が言う。
「あー、変わらないな、この街は」
「そんなことないよ。変わってきているのよ、この街も、少しずつ」
「どこが?」
「そうねぇ」
わたしが言葉を選んで語ろうと小首を傾げると、彼はわたしの話を遮った。
「なんかやだな」
「なにが?」
「俺は、ここを出ていろいろな見たこともないようなものをいろいろ見たいけど」
「うん」
「この街には変わってもらいたくないんだよな。変わらず俺を迎えてほしい」
うっすらと、これは街の話をしてるんじゃないんだろうなと思いつつ、前をまっすぐ見ながら聞いていた。
この国を飛び立つその瞬間に、地上に残してきたもののことなど綺麗さっぱり忘れるくせに、再び戻って地上に足を下ろした途端に思い出し、変わらず待っていてくれることを願っている、というよりは、当然待っているものだと思ってる。
なぜだろう?近くにいるはずなのに、この人はわたしのことを何も知らない。待つ身の辛さを君はほんのこれっぽっちも知らないのだ。
「ね、もうそろそろ帰ろうよ」
大和がわたしの手を取り指を絡ませてくる。
この街だって変わってきているのよ。
ぼんやりとそんな言葉を頭の中で呟きながら、わたしはそっと彼の手から自分の手を振り解いた。
「え、なに?俺、なんかおこらした?」
大和がわたしを見る。
蒼太がわたしを好きだといって、わたしがその気持ちに応えるかどうかで悩んでいた頃、とある日に焦ったあなたがわたしを追いかけてきて、わたしをずっと好きだったといった時……
「琴葉?」
あの時の感動を今でも覚えてる。
「何、怒ってんの?」
「怒ってなんかないよ」
笑顔を作って見せた。
「ごめんね。ただ、今日は先客がいるのよ」
「先客って……」
「だから、今日は実家帰って。じゃあね」
「おい、琴葉」
わたしは大和を置き去りにして一人で家へと戻った。
一人の家に帰って化粧を落としてシャワーを浴びる。パジャマに着替えてソファーに座る。
ニャー
猫のアンジュがチリンと首輪の鈴を鳴らしながら甘えてきた。片手でアンジュを撫でながら、片手でタオルで濡れ髪を拭いているとスマホが揺れた。
「はい」
「琴葉?」
「久しぶり。蒼太」
「あの、さ……」
「なに?」
「さっき、急に大和が家に来てさ」
「うん」
「先客って誰って聞いてんだけど」
「なんだそりゃ」
髪が濡れたままで立ち上がり、冷蔵庫から冷えた缶酎ハイを取り出した。通話中の電話をスピーカーにして、キッチンのカウンターでプルトップを開ける。プシュウという心地よい音がする。
ニャー
アンジュがわたしを非難でもするように鳴いた。
「それで大和はどこにいんの?」
「いや、俺に琴葉に電話して聞いておけっていった後、出てっちゃったよ」
「なんだそりゃ」
「こっちが聞きたいよ」
「ごめん……」
乾いた笑い声が上がった。レモンと炭酸とアルコールを喉から流し込む。昔っからわたしたちは、どっちかに何か相手に言いたいことがあるとこうやって、関係のない蒼太を間に挟んで、不思議な伝言ゲームをしたものだ。ひと昔前までは、本人には言えない悪口を蒼太に思い切り言って、二人ともでも結局は大和を憎み切れるはずはなく、途中から笑いながら話してた。
わたしの笑い声はひと昔前はこんなに乾いてはいなかった。
「で、先客って誰なの?」
「アンジュ」
「え、なに?外人」
「ま、そんなようなものだ」
「どこで出会ったの?」
「ペットショップ」
「え?は?」
電話の向こうで、目を白黒させている蒼太を思い浮かべながらちょっと笑った。そして、思わずポロリと言いそうになった。わたし、蒼太を好きになれば良かった。でも、それを言わないだけの分別はまだあった。
「冗談言うのやめなよ。大和以外のやつを好きな琴葉なんて、なんか違うっていうか、信じられないよ。ほんとはそんな外人、いないんだろ?」
「……」
「どうした?琴葉。せっかく久しぶりに大和に会えたのに」
わたしから言い出してしまえば終わると思い出してから、一体何年たっただろう?本当は大和に直接話さなければならないことを、わたしは何回蒼太に話してきただろう?
「……もう疲れちゃった」
わたしが泣きそうになると、電話の向こうで蒼太も泣きそうになっていることをわたしは知っている。そして、この電話を切った後に蒼太が真剣に怒って大和に言ってくれることも知ってる。今までだってこんなことは何回もあって、でも、わたしたちは変わらなかった。
もしも、人生が永遠に続くメリーゴーランドなら、わたしはそれでも大和を永遠に待ち続けたと思う。恋をするなら、人はバカになったほうがいい。人生がメリーゴーランドではないということを忘れて、回り続けることができるから。
「大和はでも、琴葉のことが好きだよ」
「知ってる」
「うん」
「でも、大和にとってわたしはたくさんある、なくてはならないもののうちの一つで、でも、わたしにとって大切なものは大和しかなくて……」
「うん」
「そういうのに疲れちゃったのよ。わたしの言ってること、わかる?」
ニャー
アンジュがわたしの膝にのってくる。蒼太が口を開く。
「大和には何度も、かないもしない夢を追いかけるのはやめろって言ってんだけど」
「大和に?」
「うん」
「それで?」
「お前みたいにネクタイしめて働くとか、ありえねえっていまだに言ってて」
「大和らしいね」
「なんか、話が合わないんだよね」
「それ、わかる」
ここで、蒼太は少し躊躇った。
「琴葉に捨てられたら、あいつ、ダメになる気がする」
その言葉をしばらく頭の中で響かせた。もう一口、缶のままでお酒を流し込んだ。それからポツリと言った。
「そうかな、わたしはそうは思わないな」
「なんで?」
「うーん……」
アンジュの滑らかな毛筋を片手で撫でながら、考えを整理する。
「正確にいうと、わたしと一緒にいても大和はダメなので、捨てられたらダメになるというのは間違いかと」
「琴葉、大和のことダメだと思ってるの?」
「あ、ごめん。ちょっと言い方きつかったか」
大和がダメかどうかについては、蒼太もわたしも微妙なところなのだ。わたしたちの天秤の片方には、大和に対しての愛情がのっていて、もう片方には大人としての一般常識がのっている。
「琴葉、本気で大和と別れる気なんだ」
「……」
わたしから言い出してしまえば終わると思い出してから、もう何年経っただろう?ふとまたさっき思い浮かべた疑問が頭に浮かんだ。
「あ、琴葉、ごめん。大和、戻ってきたみたい」
そして、蒼太からの電話は切れた。
そんなことがあってから、しばらく大和は日本にいて、お金が貯まったらまた外国へ行った。そして、再び日本に帰ってきた時、またわたしに電話をかけてきた。その時、わたしは出先で用事を終えた後、一人で遅いランチを食べていた。
「琴葉?」
「久しぶり」
「今、成田。ね、今晩暇?」
「あー、今晩は無理」
「じゃ、明日は?」
「明日も無理」
「……」
なんとなく、どっかで、さすがに大和も断られることを予想していたのかもしれない。二人で一緒に過ごしてきた時間の長さのせいか、電話を通してそういうのが声だけで伝わってくるのだ。
「俺とはもう会わないってこと?」
「あ、ていうか、物理的に無理なの」
「え?」
「わたし今、東京にいないのよ」
「え……」
「北海道にいるの」
「……」
空港の片隅でポツンと立ち尽くす大和の後ろ姿を思い浮かべて、実を言うと号泣しそうな気分だった。でも、もちろん、わたしは号泣はしなかった。客のまばらな美しい午後のカフェで、わたしは恋人と最後の電話をしていた。
「仕事でね、北海道行って、責任持ってやってみないかって話があって、思い切って受けてみることにした」
「なんで行く前に言ってくれなかったの?」
「なんで……、そう、なんでかな」
「蒼太には言ってたんだろ」
明るい光の差し込む店の天井でゆっくりと回るクーリングファンの羽を眺めながら、大和の声を聞く。わたしは大和のことを本当に好きだったけど、頭の中に言葉が浮かぶ。
「わたしは大和のことを本当に好きだったけど」
「うん」
「好きだったから、言えなかったことも多いっていうか」
最後だけは素直になりたい。いつもは言えなかったことを大和に言いたい。
「お前が俺にちゃんと言ってくれたら俺だってもっとちゃんと聞いた」
「でも、きっと大和は変わらない」
「そんなんわかんないだろ?」
「でも、今までだって変わらなかったじゃない」
わたしにしては珍しく、怒りで声が震えた。大和が本当にわたしのことを好きだってことは知ってた。でも、それだけでは足りない。
「北海道のどこにいるの?」
「……」
「琴葉に会いに行く」
旅好きの彼らしいフットワークだなとポツンと思った。
「大和」
「ん?」
「頑張るとこはそういうとこじゃないのよ」
「どういうこと?」
「今のままのあなたで何度わたしに会いにきても、なんの意味もない」
「……」
「わたしがどれだけ、会えないあなたを待ってきたと思う?簡単に会いたいだなんて言わないで」
もう一度、怒りで声が震えた。
そして、電話を切った。
しばらくそのままカフェにいて、それから、気を取り直して席を立ち会社へ戻る。足が地面を踏んでいないような変な心地だった。
気もそぞろにその日の午後の仕事を済ませ、家に戻る。
それから、一人、考えた。もしも、今日みたいにいつも直接喧嘩しあえていたら、今も、二人、一緒にいられたんだろうかと。
でも、わたしの結論はこうだったんです。わたしたちは確かにお互いが本気で好きだったけど、でも、うまくいく二人ではなかったんじゃないかなと。そういうのってあると思うんですよ。うまく言えないんだけど、なんとなくそう思う。
わたしは大和みたいになりたいなと思って、でも、なれなくて、だから、大和を待って、大和を支える、みたいな、そういうのを全部、終わりにしました。
自分が変われないって思い込んでいて、それで、人を愛することに寄っかかっていたようなところがあったと思うんです。今思うとそれって、真剣に生きているって言える?
だから、大和を待つのをやめて、誰かを待つのをやめて、東京を離れたんです。しばらく恋愛はいいなと思ってて、ただ、次に恋したい相手は決まってる。
わたしは次は自分で自分に恋したい。
ニャー
ソファーに座ってそんなことを考えると、アンジュがわたしに体をすり寄せてくる。アンジュだけは今もわたしのそばにいる。
翌日、東京の蒼太から電話がかかってきた。席を離れてオフィスの階の非常階段の踊り場に出た。
「別にいちいち報告してくれなくていいのに」
「いや、気になってるんじゃないかと思って」
「女は男よりいざとなるとサバサバしてるのよ」
「ああ、声聞いてると伝わってくるわ。それ」
遠くを飛行機が飛んでゆく音がする。機影を求めて空を見渡した。蒼太がのんびりとした声を出す。
「大和にはちょっとかわいそうだけど」
「うん」
「俺は、琴葉が何度も泣いてた様子を見てきたから」
「うん」
「これで良かったような気がしてる」
「というか、最後には結局こうなるしかなかったんじゃないかな。遅かれ早かれ」
青い空に白い飛行機雲が描かれる様子を見上げながら言った。
「落ち着いたらさ、またみんなで会おうよ」
「うん」
「あ、でも、琴葉は大丈夫でも、大和が無理かも」
「ええ?」
「ありゃ、立ち直るのに相当かかるぞ」
「そっか」
「いよいよダメになるかも」
この時、昨日の最後の電話の時に湧き上がった、郷愁のような大和への感情は湧き上がらなかった。それを少し寂しく思いながら蒼太に言う。
「大丈夫よ。大和は」
「そうか?」
「ダメでも、歯を食いしばって頑張れって伝えといて。ネクタイ締めようが、締めなかろうがなんでもいいけどさ」
「わかった」
あんなに好きだったのに、恋心というのは不思議だ。刹那に燃え上がり、そして通り過ぎてしまうのだから。でも、彼の幸せは願ってる。それは本当だ。
さようなら、わたしの初恋。
「あ、蒼太」
「なに?」
それは、今までありがとうなのか、いつもありがとうなのか、でも……。何かを言いかけて黙ったわたしに蒼太が問いかける。
「なに?琴葉」
「あ、いやなんでもない」
それを言わない分別だけは、わたしは持ち合わせていた。
了
2025.11.16
汪海妹




