銃器対策部隊
名古屋駅を駆け回り蹂躙していた工作員たち。後方で連絡を受けた崔と王は満足げに笑みを浮かべた。
「貴官に共感を覚える日が来るとは思わなかったよ。」
そう言って笑う王に、崔も笑顔を返した。本当のところでは全く同じ方向を向いているわけではないのだが、王はまだそれに気づいていない。
『警官どもがちまちまと撃ってきます!』
無線が入った。100倍で返せ、と答えた。崔は遠くからの銃声に、消し去ろうとしていた過去を思い出した。
工作員グループに対し抗戦し避難誘導を行っていた吉川と安井は、敵から得た小銃の威力に身を任せ前進していた。検問を突破され、事態が始まってから1時間が経過しようとしていた。
「前方、死角がある。」
血まみれのショウウィンドウの向こう、柱の奥に鋭角な曲道があった。
「反対側の角から入ります。」
警戒を怠らず前進する2人。柱の向こうが見えようかというとき、黒い銃口が突き出て火を噴いた。即座に後退しつつ応戦する吉川。その背後にいた安井は、吉川の視野の外側にいる敵影に気付いた。
「伏せろ!」
そう叫んで吉川の前に飛び出した安井は、下腹部に強い衝撃と熱を感じた。吉川を巻き込み吹き飛ばされた。倒れこんだ隙間から吉川が応戦すると、ひるんだのか敵は引き下がった。
「安井さん!安井さん!」
吉川の呼び声が聞こえた。段々と意識が遠のいた。
自分を庇い銃弾を受けた安井を担ぐ吉川は、何とか地下街の出口へ辿り着き、階段を登り切った。出入口の陰に飛び込み安井を寝かせた。回復体位をとらせ傷口を手で抑え、辺りを見渡すと、自分たちのいる歩道の向こう、植栽の奥に敵の姿が見えた。敵もこちらに気付き、銃口を向けた。もう終わりだ、と悟った。その瞬間、青と白の角ばった車両が間に飛び込んできた。
「撃て!」
車上に伏せていた真っ黒な男がガンポートから短機関銃を放ち、向かってきていた工作員を吹き飛ばした。望月の提案で急行してきた銃器対策部隊だった。
「大丈夫か!」
小走りで近づいてきた男は、バラクラバ越しでもはっきりとわかる程表情を歪めた。目線の先には敵の小銃を肩に掛ける吉川の姿があった。
「回復体位か、完璧だ。警備車を回して後送する。他に負傷した警官はどこにいる?」
小銃から目線を外した隊員が問いかけてきた。吉川は銃器対策部隊の存在によって緊張の糸が切れたのか、涙を流しながらその場に倒れこんだ。




