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異世界に召喚された俺たちですが、どうやら仲間を殺さないと帰れないようです   作者: 高野
【第1章】生き残るために

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【8話】激闘の末

坂口との殺し合いが始まった。


坂口は余裕たっぷりの笑みを浮かべながら、ゆっくりと俺との距離を詰めてくる。まるで、俺が逃げ場を失った獲物であるかのように。


「……どうする」


俺は剣を構えたまま、必死に頭を回転させていた。


問題は、坂口が持っている【九命の剣】だけではない。あいつがどんなスキルを持っているのか。それを見極めなければ、勝ち目はない。


「はぁっ!」


考えているだけでは何も始まらない。


俺は地面を蹴り、一気に坂口との距離を詰めた。そして、勢いよく剣を振り下ろす。


カキンッ!


「っ……!」


あっさりと弾かれた。


ならば、次は横から――!


カキンッ!


またしても弾かれる。


何度も剣を振るうが、結果は変わらない。俺の攻撃は、まるで通用しなかった。


「くそっ……!」


俺は一度距離を取り、呼吸を整えた。


一方の坂口は、疲れた様子すら見せていない。むしろ、こちらの攻撃を楽しんでいるようだった。


「あれ? こんなもん? 雑魚じゃん」


「……それはどうかな? 俺はまだ一回もスキルを使ってないぜ?」


強がってはみたものの、状況は最悪だった。


俺の持っている攻撃系スキルは、【水噴射】と【毒牙】。


毒牙は、剣で相手を攻撃して初めて効果を発揮する。つまり、そもそも攻撃を当てられなければ意味がない。


だが、水噴射なら話は別だ。


相手が俺の剣を弾いた瞬間、体勢が崩れるわずかな隙が生まれる。そこに水噴射を叩き込む。


狙うのは、心臓。


相手も人間である以上、急所を貫けば勝負を決められるはずだ。


ただし、一度失敗すれば、次は警戒される。


チャンスは一度きり。


「……やるしかない」


俺は剣を握り直した。


坂口がニヤニヤと笑っている。その余裕ぶった顔を見ていると、腹が立って仕方がない。


だが、今は怒りに任せて攻撃するわけにはいかない。


狙うべき瞬間を見極めろ。


そして――。


「うおおおおっ!」


俺は渾身の力を込めて、坂口に斬りかかった。


カキンッ!


狙いどおり、坂口が俺の剣を弾く。


今だ!


「坂口ぃぃ! 死ねぇぇぇ! 【水噴射】!!」


手のひらから勢いよく水が噴き出した。


狙いは完璧。


水流は一直線に坂口の胸元へと伸びていく。


これなら、いける!


そう確信した、その瞬間だった。


ギュンッ!


「……は?」


胸を貫くはずだった水流が、何かに弾かれた。そして、進行方向を変えた水が――。


ズブッ!


「がっ……!」


俺の太ももを貫いた。


「な、なんで……?」


何が起きた?


水が……跳ね返された?


俺は痛む太ももを押さえた。立ち上がろうとするが、足に力が入らない。


くそっ……動け!


だが、どれだけ力を込めても、体は言うことを聞かなかった。


「ヒャハハハハ! お前の負けだぁ!」


坂口が剣を握り、倒れた俺に近づいてくる。そして、楽しそうに声を弾ませた。


「いーち、にーい、さーん、よーん!」


一回、また一回。


坂口は俺を斬りつけるたびに、わざわざ回数を数えていた。九回斬られれば即死。その剣の能力を、俺に思い知らせるかのように。


「くそっ……!」


逃げなければ。


だが、立ち上がることすらできない。


水噴射も通用しない。毒牙を使おうにも、攻撃を当てることができなければ意味がない。


何もできないまま、俺は追い詰められていく。


「……もう、ダメなのか?」


せっかく、ここまで生き延びてきたのに。


元の世界に帰るために、必死に戦ってきたのに。


こんなところで……終わるのか?


そのときだった。


「誰だ! お前は!」


突然、坂口が声を荒らげた。


剣を振るう手を止め、入口の方へと視線を向ける。


俺も、かすむ視界でそちらを見た。


開かれた扉。


その向こうに、一人の人影が立っていた。


「……林?」


助けに来てくれたのか……?


そう思った瞬間、俺の意識は闇に沈んだ。


◇


「正弘! おい、正弘!」


誰かが俺を呼んでいる。


……うるさいな。


今は少し、休ませてくれ。


「正弘! 目を覚ませ!」


聞き覚えのある声だった。


俺は重たいまぶたを、ゆっくりと開いた。


目に入ったのは、木でできた天井。


「……ここは?」


見慣れない場所だ。


少しずつ意識がはっきりしてくる。どうやら、宿屋のベッドに寝かされているらしい。


そして、俺のそばには林がいた。


「林……?」


「おお! やっと目を覚ましたか!」


林は安心したように息を吐いた。


「俺……あの後、どうなったんだ?」


坂口と戦っていたところまでは覚えている。だが、その後の記憶がない。


俺が尋ねると、林はあの後に起きた出来事を話し始めた。


林もまた、坂口を探して城へ向かっていたらしい。そして城内を探索している途中、俺がいる部屋を見つけた。


扉を開けた瞬間、目に飛び込んできたのは――坂口に斬りつけられている俺の姿だったという。


林はすぐさま【身体能力上昇】を発動。俺を抱えて、そのまま城から脱出したそうだ。


「……そうだったのか」


俺は天井を見つめた。


林が来てくれなければ、俺は今頃、間違いなく死んでいただろう。


「助かったよ、林……」


「ああ。まあ、無事でよかったぜ」


林はそう言って笑った。


俺はゆっくりと上半身を起こし、自分の足に目を向けた。太ももにはガーゼが貼られている。水噴射で貫かれた傷を、手当てしてくれたらしい。


「……しばらくは動けそうにないな」


「無理するなよ。じゃあ、俺はちょっと用事があるから」


林はそう言い残し、宿を後にした。


部屋に一人残された俺は、深いため息をついた。


「はぁ……これから、どうするかな」


坂口には勝てない。


少なくとも、今のままでは絶対に無理だ。


水噴射は簡単に跳ね返され、剣での攻撃も通用しなかった。あいつのスキルが何なのかは、まだわからない。


だが、一つだけ確かなことがある。


今の俺には、坂口と戦うための力が足りない。


なら、やるべきことは決まっている。


もっとスキルを集める。


そして、自分の戦い方を見直す。


あいつに勝つために、今できることをやるしかない。


俺はベッドに横になり、静かに目を閉じた。


足が完治するまで、およそ一週間。


今は焦らず、体を休めよう。


次に坂口と会うときは――絶対に負けない。

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次回もよろしくお願いします!

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