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異世界に召喚された俺たちですが、どうやら仲間を殺さないと帰れないようです   作者: 高野
【第1章】生き残るために

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【7話】神隠しの王国

武器屋を後にした俺は、この王国の中心部――城へと向かうことにした。


「それにしても、広いな……」


トータム王国は、想像していた以上の広さを誇っていた。


大通りには大勢の人々が行き交い、露店からは威勢のいい呼び込みが聞こえてくる。あちこちから人々の話し声や笑い声が響き、街全体が活気に満ちあふれていた。


だが、今の俺にはそんな景色を楽しんでいる余裕はない。


「この中から坂口を探し出さないといけないのか……」


一体、どこにいるんだ。


あいつが本当にこの王国にいるのかどうかすら、まだ確証はない。それでも、手がかりを探すためには動くしかなかった。


そして、しばらく歩いた末に、俺はようやく城の前へとたどり着いた。


「……ここか」


目の前にそびえ立つ、巨大な城。王国の中心にふさわしい、堂々とした建物だった。


俺は周囲を見回した。


……あれ?


見張りの兵士がいない。


門の周辺にも人影はなく、警備らしい警備がまったく見当たらなかった。


「不用心すぎないか……?」


少し不審に思ったものの、入れるなら好都合だ。俺はそのまま城の中へと足を踏み入れた。


城内は広く、いくつもの廊下が複雑に入り組んでいた。壁には豪華な装飾が施され、床も綺麗に磨かれている。どこを見ても、王族が暮らす場所にふさわしい立派な造りだった。


しかし――。


歩き続けるうちに、俺は少しずつ違和感を覚え始めた。


「……誰もいない?」


さっきから、一人も人とすれ違っていない。兵士どころか、使用人らしき人物の姿すら見当たらなかった。


まさか、この城には誰も住んでいないのか?


いや、それは考えにくい。


外の街はあれほど賑わっていたのだ。王国の中心である城だけが廃墟になっているなんて、普通ならあり得ないだろう。


それに、城内は驚くほど綺麗だった。埃もほとんどなく、家具や調度品もきちんと手入れされている。まるで、つい最近まで誰かが使っていたかのようだ。


「ここで……何かあったのか?」


嫌な予感がした。


俺は近くにあった扉に手をかけ、ゆっくりと開いた。


その先にあったのは、長い机と、ずらりと並んだ椅子。机の上には食器まで置かれていた。


「ここは……食堂か」


だが、やはり誰もいない。


食器が置かれているということは、ここで食事をする人間がいたはずだ。それなのに、今は誰一人として姿がない。


まるで、そこにいた人々が一瞬にして消えてしまったかのようだった。


「……神隠しにでも遭ったのか?」


自分で口にしておきながら、馬鹿げた考えだと思った。


だが、この世界に来てから、常識では考えられないことばかり起きている。何があってもおかしくない。


俺は警戒しながら、再び廊下を歩き始めた。


どれほど進んだだろうか。


やがて、目の前にひときわ巨大な扉が現れた。


「……ここは何だ?」


他の扉とは明らかに違う。重厚な造りで、表面には細かな装飾が施されていた。


俺は息を整え、両手で扉を押し開けた。


ギィィィ……。


鈍い音を立てて扉が開く。


その先には、広大な空間が広がっていた。中央には奥へと続く赤い絨毯。そして、その先には立派な玉座が置かれている。


「……王の間、か」


思わず息を呑んだ。


これほど豪華な場所を目にしたのは初めてだ。


だが、すぐに別のものが目に入った。


玉座の周囲。


そこには、明らかに不自然な跡が残されていた。


「……これは」


床に広がる、赤黒い染み。


一つではない。


玉座の周りには、血痕らしきものが二つ残されていた。


「……血?」


俺は眉をひそめた。


ここで、一体何があったんだ?


そもそも、この世界では魔物を倒しても血は流れない。それは、街で暮らしている住民たちも同じはずだ。


ならば、この血は何なのか。


考えたくもない答えが、頭に浮かんだ。


「……まさか」


クラスメイト。


この場所で、誰かが殺されたのか?


そして、もしそうなら――。


「坂口も……ここにいるのか?」


背筋に嫌なものが走った。


今の俺が、あいつと戦うのはまずい。【九命の剣】を持っている相手に、正面から挑んでも勝ち目はない。


ここは一度、退くべきだ。


俺はすぐさま振り返り、入ってきた扉へと駆け寄った。そして、扉を押し開けようとした。


ガンッ!


「……え?」


もう一度、力を込める。


ガンッ、ガンッ!


「開かない!?」


嘘だろ……。


さっきは普通に開いたはずだ。それなのに、今はどれだけ押しても、引いても、びくともしない。


まさか……閉じ込められたのか?


そのときだった。


「……あれ〜? どうしたの、正弘くん?」


背後から、聞き覚えのある声が響いた。


少し高く、どこか人を小馬鹿にしたような声。


忘れるはずもない。


俺はゆっくりと振り返った。


「……坂口!」


そこには、さっきまで誰も座っていなかったはずの玉座に、一人の男が腰掛けていた。


坂口憲二。


いつの間に現れたんだ……?


俺が玉座から目を離していた時間は、せいぜい十秒ほど。しかも、この部屋には俺が入ってきた扉以外に、出入り口らしきものは見当たらない。


どうやって、あの一瞬で玉座に座ったんだ?


「どうして……って顔してるねぇ」


坂口は俺の表情を見て、ニヤニヤと笑った。


「でも、教えないよーん」


「チッ……!」


相変わらず、人を苛立たせるのが得意なやつだ。


だが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。


坂口がここにいる。


しかも、逃げ道は塞がれている。


最悪の状況だった。


「さっそくだけどさぁ……」


坂口はゆっくりと立ち上がった。そして、手に持っていた剣をこちらへ向ける。


「殺していい?」


「……九命の剣。やっぱり、お前が買ったのか」


間違いない。


あの剣だ。


坂口は楽しそうに笑っている。まるで、俺がどう足掻いても勝てないと確信しているかのように。


くそっ……どうする?


勝ち目はない。


どうにかして、この場から逃げ出さなければ。


俺は必死に頭を回転させた。何か方法はないのか。何か、こいつを倒す手段は……。


そこで、ふと一人の顔が浮かんだ。


林。


あいつも坂口を狙っている。俺がここに来たことを知れば、後から追ってくる可能性はある。


だが、それがいつになるかはわからない。今すぐ助けに来てくれる保証なんて、どこにもないのだ。


……ならば。


「ここで、坂口に勝つしかない」


俺は剣を握りしめた。手のひらに汗がにじむ。それでも、剣を手放すわけにはいかなかった。


こんなところで死ぬわけにはいかない。


俺は坂口を睨みつけ、戦う覚悟を決めた。

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